- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
内水
影響の要因
気候変動により、大雨事象の発生頻度や降水量が増える。中でも、内水氾濫につながりやすい短時間に集中する降雨事象の発生頻度や降雨強度が増える。
現在の状況と将来予測
近年、1時間降水量50mm以上といった激しい降水の頻度が増加している。加えて都市化による流出の増加や地下街等の設置などの土地利用の高度化も進んでおり、都市部の内水氾濫のリスクは増大している。
将来、RCP8.5に対応するシナリオを前提とし、日本全国における内水災害被害額の期待値を推算した研究では、2080~2099年において被害額期待値1,932億円/年となり、現在気候の約2倍に増加すると予測されている(右図参照)。
適応策
下水道の計画規模を大きく上回る集中豪雨が頻発していることを踏まえ、計画降雨に対するハード整備(下水道整備、他の公共施設における貯留浸透等)を着実に推進するとともに、ソフト対策を実施し、逃げる・守る・動かす・回復を早めるといったそれぞれのフェーズの対策を強化し、被害を最小化する。
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■内水ハザードマップの整備
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■タイムライン
(防災行動計画)策定 -
■垂直避難
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■下水道の排水能力の増強
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■既存施設の効果的活用
リアルタイムコントロール、
幹線管渠のネットワーク化 -
■道路・公園と連携した貯留浸透施設
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■土地の嵩上げ・ピロティ―建築による耐水化
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■地区計画等による誘導
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■災害発生時の対応(BCPの策定等)
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■災害時の廃棄物処理体制
の確立やその支援D.Waste-Netに基づく災害時の適正かつ円滑・迅速な廃棄物処理
内水ハザードマップの公表により、内水による浸水及び避難に関する情報等を住民に提供。自助・共助意識、防災意識の向上を促進(想定を超える浸水被害の多発を受け想定最大規模降雨に対する内水浸水の想定が進む)。
大規模水害時の被害想定を作成し、国、地方公共団体、公益事業者等の関係機関が連携した避難、救助・救急、緊急輸送等ができるよう、タイムラインを策定。住民自身が防災行動を時系列的に整理する「マイ・タイムライン」の取組も進められている。
内水氾濫は短時間で状況が大きく変化する場合があり、頑丈な建物の高い場所(2階以上)へ移動(垂直避難)。
下水道施設の増補管等により排水能力を増強。施設自体の耐水化や下水道機能の迅速な回復の為のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)も整備。
ICT 等を活用し下水道の施設の状況をきめ細かく把握。また、監視カメラ等を活用し、内水に関する情報を把握。
河川及び下水道の施設の一体的な運用の推進を図るため、河川及び下水道の既存施設を接続する連結管や兼用の貯留施設等の整備を推進(国土交通省2018)。
都市域の道路や公園や学校等との事業連携による雨水の貯留浸透の促進や保水機能の高い緑農地等の確保。
浸水するおそれのある低地部の住宅等では、住宅地盤の嵩上げや、床上まで浸水しないように家屋のピロティ化(高床式)、止水版の設置等をする事で人的被害や経済的被害の回避・軽減を図る。
内水被害発生地等において、地区計画で浸水被害を受けにくい建築物の建築等(居室は一定の高さ以上に設ける等)を誘導。
企業等の被害軽減や早期の業務再開を図るため、災害時の初期対応を含むBCPの整備、およびそれに基づいた適切な行動。
災害時における一般廃棄物処理事業の継続的遂行に関する観点を含めた災害廃棄物処理計画等の策定を推進する。また、災害廃棄物等を適正かつ円滑・迅速に処理できる廃棄物処理システムを構築するため、地方公共団体レベル、地域ブロックレベル、全国レベルで取組を進める。(以上閣議決定2021より引用)加えて、実際に災害が発生した際には、政府による初動・応急対応及および復旧方向対応の支援を実施。
施設の能力を大幅に上回る外力により大規模な氾濫等が発生した場合を想定し、国、地方公共団体、公益事業者等が連携して対応するため、多機関連携型の水害対応タイムラインを作成・運用(国土交通省2018)。
「雨に強いまちづくり」、「雨水が流出しないまちづくり」を進めるために、関係機関、住民と協議会を設置し、情報共有を行い連携を図ることが必要(国土交通省2006)。
下水道等による雨水排水を主体としつつ貯留対策も合わせ雨水を効率的に排除するハード整備(国土交通省2006)。
ハード整備を着実に推進するとともに、ソフト対策、自助を組み合わせた総合的な対策を実施。ハード施設の長期的な整備水準(計画降雨)は、地区ごとにB/C(費用便益比)を勘案して決定。(以上国土交通省2006より引用)
都市計画等に活用可能な複数外力による多層的な内水浸水リスク評価結果を関係者と共有し、まちづくりとの連携を更に進める必要がある。浸水リスク情報の提供や好事例の共有促進等により、止水板設置等の自助・共助の取組を更に促進させる。(以上国土交通省2020aより引用)
防災関係機関等が、応急活動、復旧・復興活動等を継続できるよう、市役所等の庁舎や消防署、警察署、病院等の重要施設の浸水防止対策の実施やバックアップ機能の確保、業務継続計画の策定等を促進するための方策を検討(国土交通省2018)。
適応策の進め方
【現時点の考え方】
下水道等による雨水排水を主体としつつ貯留対策も合わせ雨水を効率的に排除するハード整備(国土交通省2006)により対策を行ってきた。
【気候変動を考慮した考え方】
気候変動に伴う降雨量の増加や短時間豪雨の頻発等の懸念、下水道の施設計画を超過する降雨による内水被害の発生等を踏まえ、効率的・効果的なハード整備など早期の安全度の向上策、ソフト施策の更なる推進・強化を一体的に推進するとともに、流域治水の考え方を踏まえ様々な主体が連携して施策に主体的かつ積極的に取り組むことが必要である。また、併せて河川氾濫等の災害時における一定の機能確保等のために下水道施設の耐水化を進める必要がある。(以上国土交通省 2020aより引用)
【気候変動を考慮した準備・計画】
気候変動の影響を見据えた「事前防災」を計画的に進めるために、下水道による都市浸水対策の中長期的な計画である「雨水管理総合計画」の策定・見直しを通じて、気候変動を踏まえた計画に見直す(国土交通省 2020a)事が必要である 。