COP29 気候変動適応特集!
適応関連の交渉結果 -2
資金目標に関する決定の適応・損失と損害(ロスダメ)への示唆
今次COPの中核的な決定であるBaku Climate Unity Pactには、新しい資金目標に関する決定、適応に関する世界全体の目標(GGA)に関する決定、及び、緩和作業計画に関する決定が含まれます。今回の記事では、そのうち、資金目標に関する決定において適応・損失と損害(ロスダメ)に関する新たな合意等が行なわれたか、また、その他の適応・ロスダメ支援についての動向をお伝えします。
新たな資金目標に関する合意は、「バクー資金目標(Baku Finance Goal)」と呼称されます。主な決定は、途上国への気候資金支援を2035年までに従来の目標の3倍である年間3,000億ドルにするというものです。さらに、官民の拠出を含めた総額として、2035年までに1.3兆ドルの投資をすることも呼びかけられました。
この資金目標は、都合3年間の準備を踏まえて交渉されたものです。3年間の間には、3回の閣僚級ハイレベル対話や、11回の技術的専門家対話及びそれに付随する3回のアドホック作業計画などが開催され、幅広い論点が議論されてきました。そうした議論の中で出ていたひとつのアイディアが、気候資金の全体目標の中でテーマごとのサブゴールを置くというものでした。すなわち、気候資金全体のうち〇〇%を適応に振り向ける、などの文言を含めるということです。特に、適応やロスダメに対してまとまった支援を得たい途上国の各グループが、こうした主張を行ってきた傾向にありました。
交渉の結果、最終的な決定にはこうしたサブゴールが含まれることはありませんでした。これに関連する文言は、緩和と適応をバランスよく支援すべきという、従来の考え方から変化のないものに留まっています。
といっても、適応・ロスダメについての言及が決定にまったく含まれないわけではありません。例えば、適応とロスダメに対する支援において無償の公的支援がとりわけ重要であることや、GGA及びUAEフレームワークに含まれる諸目標に対応するために適応資金を大幅に拡大する必要があることなどが指摘されています。具体的な目標として、適応基金等を含む条約下の資金メカニズムを通じた資金フローを、2030年までに2022年比で3倍にすることも盛り込まれました。さらに、主に緩和に関する国が決定する貢献(NDC)及び適応に関する国別適応計画(NAP)の実施に向けた資金拡大を目指した、「1.3兆ドルに向けたバクー・ベレンロードマップ」も立ち上げられ、来年のCOPまでに報告が取りまとめられることとなっています。
このように、バクー資金目標の決定文そのものにおいて適応・ロスダメ支援に関し大きな動きがあったわけではないものの、UAEフレームワークの諸目標のための適応資金の拡大の必要性についての認識を受けた今後の交渉の展開や、「1.3兆ドルに向けたバクー・ベレンロードマップ」の動向などを中心に、適応資金(支援)については今後も引き続き交渉の展開を注視すべきところと思われます。

最後に、ロスダメについては、昨年のCOPにおいて決定されていたいわゆる資金措置(世界銀行・IMF等から市民社会まで、条約内外のロスダメ支援のポテンシャルを持つ機関に対し、調整と補完関係を与える措置)に係るハイレベル対話の動向も見逃せません。本対話は、今次COPのリーダーズサミットに付随して立ち上げられ、実質的な対話は、2025年のIMF・世界銀行春季会合に付随して実施されるということで調整が進められています。ロスダメへの包括的な対応のためには、条約下の気候資金に留まらない幅広い資金源の動員が不可欠です。こうしたハイレベル対話が、国際開発金融機関や援助機関など多様な組織を動員する契機となるかどうかが注目されます。