「地方公共団体及び地域気候変動適応センターの新任者向け質問会」の開催概要及びアンケート集計結果報告

Ⅰ.質問会概要について

開催日 令和4年5月20日(金)13:30~15:35
開催方法 オンライン開催(Zoomミーティング)
主催 国立環境研究所 気候変動適応センター

地方公共団体等では年度単位でご担当者の異動が多いことに鑑み、地方公共団体や地域気候変動適応センターの新任者向けに質問会を開催しました。気候変動および適応に関する基礎知識を習得できるよう、事前にご紹介した新任者向け動画・資料について、ご視聴、ご一読いただき、事前もしくは当日に質問を受け付け、疑問にお答えするという内容でした。また、当日は「気候変動および適応に関する基礎知識」のポイントや補足(政府の気候変動適応計画、IPCC報告書の最新の状況など)のご説明も行いました。

全国の地方公共団体、地域気候変動適応センター等から約80名の皆様にご参加いただき、普及啓発や部局間連携等、さまざまなテーマの事前質問及び当日質問にお答えしながら質問会が進みました。また、事後アンケートには約50名の方から回答をいただきました。
以下、プログラムの概要およびアンケート集計結果の一部をご報告します。

市区町村からの参加者が多い会となりました。

参加者所属

II.プログラムについて

事前質問及び当日質問への回答に先立ち、国立環境研究所気候変動適応センター(NIES CCCA)の副センター長吉川より、「気候変動及び適応の基礎知識のポイント、補足」というタイトルで、昨年の新任者研修資料の振り返りや更新された情報等の補足説明を行いました。

続いてNIES CCCAの地域別自治体担当者の紹介があり、質疑応答へと進みました。事前にお寄せいただいた質問をテーマごとにまとめ、NIES CCCAメンバーが回答し、さらに当日質問を求める形で質問会は進みました。都道府県や市区町村の役割分担が質問のテーマとなった際には、地方環境事務所の専門官から補足の話題提供をいただきました。また多くの自治体にとって、普及啓発はどのように取り組むべきか手探り状態にあるようで、複数の自治体から質問を受けました。

質疑応答の内容は「自治体質問会Q&A一覧」をご覧ください。
(質問会後のアンケートにてご記入いただいた質問については、後日回答いたします。)

参加者集合写真

III.アンケート結果について

9割超の方から概ねご満足いただきました。

事前に紹介した資料を含め、質問会全体の満足度は? 回答者所属

■ご参加の目的や足りなかった点は?

  • 新任者として概略的なことを把握したく参加した。事前に動画視聴にて基礎的なことを学習した上での説明・質問となっていたので分かりやすかった。
  • 性質上わかりにくいので、もう少しわかりやすい内容が最初であるといいと思った。
  • 事業者や住民を巻き込んだ取り組み(成功例・失敗例)などを具体的に聞きたかった。
  • 内容については非常に細部まで丁寧にご説明いただけ助かったが、新任者には難しいと感じる内容も多かった。
  • 事前の質問に回答する時間が多くとられ、質問会の場で質問をしにくい雰囲気があったことが残念だった。
  • 適応に関する新たな取り組み内容(今年度からスタート、など)をもっと知りたい。

■今後、新任者向けの催しで期待する開催内容は?

  • オンラインではどうしても人脈を築けない。何かしら、実開催でやっていただきたい。
  • 気候変動計画の事例報告や、既存の適応策でない独自に生み出した適応策の報告があるような会があると大変興味深い。
  • 基礎の講座や質問会を継続して開催してもらえるとありがたい。
  • 気候変動適応に関しての認知度が低いということで、「緩和」と「適応」の2本をもっと、押し出してPR・告知していくことが良い。
  • 海外における「適応」に関する施策事例の紹介。
  • 各地方公共団体で、過去や現在に気候変動適応に関して展開している事業の一覧(期間、規模、対象者などある程度の詳細がわかるもの)などがあると、新任者の参考になる。
  • 市民に対する気候変動の普及啓発活動についての開催を希望。

アンケート自由記入欄から一部を抜粋しました。今後の研修内容やA-PLATの掲載内容充実など、様々なご要望・ご提案をいただきました。今後の活動の参考にさせていただきます。ご協力ありがとうございました。

自治体質問会Q&A一覧

適応策の推進は、国、都道府県、市区町村のどのレベルでも実施すべきものと考えますが、役割分担について、お考えあるいはアドバイスがあればお聞かせください。道路や河川など、管理者がはっきりしているものであれば、誰が主体的に対応すべきものが分かりやすいですが、熱中症に関する注意喚起・普及啓発のようなものは、同一県内であれば、地域性の差異も少なく、似たり寄ったりの内容になるかと思います。大事なことを、様々な主体が、様々な場面で訴えかけるのは重要であるのですが、見方によっては、二重に手間をかけているようにもなるので、同じことをやるにしても中身で差別化ができるとよいのではないかと考えております。
(これから地域適応計画を作る予定ですが、)まず何から情報収集したらいいでしょうか。
ゼロ・カーボン達成に向けた諸々の調査や業務が忙しく、適応計画策定には手が回りません。組織内に専門知識を有する人材が乏しいため、対応が難しいです。
行政の計画は、一般的に数値目標があり、達成度を定期的に測ることになりますが、地域適応計画では数値目標が設定しづらい或いは、従前の施策の目標値を横引きというケースも多いのではないかと思います。目標値の設定にあたり、参考となる事例がありましたら、ご教示ください。
適応の業務は関係者が多く、調整にかなりの労力を要します。
この点について、よい方法がないか助言をいただきたいのですが。
本県では、適応策関連事業は今年度から具体的に動き出すといった状況です。県民の方々に気候変動を「自分事」として捉えてもらうための機会として、セミナーやワークショップを実施する予定ですが、緩和策に比べると普及啓発が難しいと感じています。  例えば、コメ農家からすると降雪量の減少は、作付けや稲の生育に大きく関わることですが、反面、一般の方には、降雪量が減少することで除雪をする頻度が減るなどメリットと感じるため、「適応」自体に興味を持ちづらいという印象があります。まずは、気候変動や適応策に興味を持ってもらうために、効果的なポイントなどありましたらご教示ください。
グローバルリスクについて、”気候変動への緩和適応の失敗”が上位にあることは非常にインパクトがあり、この情報は県民に対して”適応”の普及啓発を進める上で、効果的な情報であると考えるため、詳しくご紹介いただきたいのですが。
A-PLATや国立環境研究所気候変動適応センターについて、逐一確認することなく、ラジオ等の広報ツールで県民に紹介しても問題ないでしょうか。
経年的な気温上昇は、気候変動による影響とヒートアイランド(HI)による影響の両方が考えられますが、一般的にはどちらの影響が大きいのでしょうか。
将来の都市部の気温上昇の予測に際し、ヒートアイランド化による影響も考えるべきでしょうか。その場合、ヒートアイランド化による影響はどのようにして予測すればよいでしょうか。例えば、本市を含め都市域では近年、大規模な建築物(ビル、マンション、商業施設、物流施設等)が多数建設されている状況ですが、これらの建築物からの排熱は、周辺地域の気温上昇に影響を及ぼすレベルにあるのでしょうか。
鉄鋼、石油化学、火力発電所など大規模な工場・事業場が多数立地している場合、これらの排熱が周辺地域に及ぼす気温に多少なりとも影響を及ぼしているように思えます。実際のところはどうなのでしょうか。
緩和と適応の両輪を進めていくために、特に緩和策の普及活動をされている団体(地球温暖化防止活動推進センターなど)とLCCACが連携している事例があれば教えてほしいのですが。
住民にとって気候変動は極めて遠いテーマであり、自分事になりにくい。身近にする方法はありますか。
(2022年8月17日掲載)