Staff interview #12
平野 佑奈(HIRANO Yuna)
加藤 大輝(KATO Hiroki)
野田 顕(NODA Akira)写真左から

気候変動影響観測研究室でリサーチアシスタントとして研究者のサポートをしている、東邦大学大学院理学研究科環境科学専攻の博士後期課程在籍中の3名の方にお話しを伺います。

気候変動適応センター(CCCA)で働くきっかけを教えてください。また、勤務してどれくらいですか?

野田:僕たち3人は、指導教員の西廣先生が、国立環境研究所に赴任するときに声をかけてもらいました。僕は2019年の4月から週に2日プラス月に10日間勤務しています。博士課程なので授業も無く研究だけなので。

平野:私も、2019年の4月から週に2回勤務しています。

加藤:僕はCCCAに来るようになったのは、今年の10月からです。

【参考】西廣先生(気候変動影響観測研究室 室長)のインタビュー記事

CCCAではどのような仕事をしているか教えてください。

野田:大きく分けて二つあります。一つ目が草原の植生データの整備と気候変動の管理に関する解析、二つ目が草原による減災のための機能評価に関する情報収集と解析です。今、CCCAで進めている業務としては、草原による減災についての研究で、国環研内で、樹林と草原と芝を張った地面に雨が浸み込む速さを計測しています。

平野:私は、温度変化に敏感な、湧き水の周辺にいる生き物の調査をしていて、それが気候変動からどう影響を受けるのかと、生物相の保全策の検討をしています。

加藤:千葉県の印旛沼流域で、耕作放棄地がEco-DRR(生態系を活用した防災・減災)の機能をどの程度持っているか評価する研究の補助をしています。

環境について学ぼうと思ったきっかけは何ですか?

平野:環境問題が面白そうだなという気持ちで大学に入って、野外調査の授業がすごく楽しくて印象に残っていたこともあり、西廣先生の研究室を選びました。卒業研究を進めていくにつれて、もうちょっと続けていきたいなぁと思って、博士課程まで進んだ感じです。

野田:環境については、オゾン層の破壊とか小学生の頃から漠然と関心があったので家に近くて環境系の学科がある東邦大学に進学しました。生き物に興味があり、西廣先生に出会って草原の研究を提案されて楽しそうと思ったのがきっかけです。

加藤:大学で、里山応援隊という田んぼで稲作をしたり、学園祭で餅つきをしたりする学生サークルに入りました。自分たちの活動場所でもある「谷津」の田んぼは数が減っているらしいとか、あまり価値が認識されていないといったことを西廣先生の授業などで知り、「誰も考えないなら僕がやらなきゃ!!」と使命感を持ちました。いざ研究を始めてみると改めて大事なことだなと実感しています。

大学院で研究されているテーマは何ですか?

野田:博士論文の内容としては、大体4つあります。一つが、千葉県の下総台地に存在する草原がいつからあるのか。二つ目は、草原にある在来種と外来種、その種数に影響する要因は何なのかを明らかにすること。三つ目が、過去14年間のデータを元に、今後地域的な絶滅が予測される植物の特徴と環境条件の関係を明らかにすること。最後が、種多様性の乏しい草原から豊かな草原への再生手法の提案です。加藤君補足して(笑)

加藤:もっと大きいテーマから話しますね。下総台地って、昔は江戸幕府の将軍が来て、鷹狩りしていたくらいに大きな草原があったんです。でも、都市開発とかでどんどん小さく、少なくなってしまった。今では猫の額ほど小さくなって、それなのにまだまだ数が減っていて本当に危ない状態にある。野田さんはそこの草原研究をしているんですよね!(笑)どんな植物が減っているのか?そこに関係する要因は外来種なんじゃないか?とか。質が悪くなった草原を良くするにはどうすればよいかとか。

平野:私は、湧き水に注目した研究をしています。湧き水は、1年間でほぼ温度変化がない非常に特殊な水環境で、そういうところにいる生き物は、気候変動や温度変化に敏感でより絶滅しやすいんじゃないかと思って、注目しています。湧き水周辺にしかいない生き物がどういう環境を好んで生息しているのか、湧き水の場所間で遺伝構造にどういった違いがあるのか、遺伝的多様性に影響する要因は何かということを明らかにしています。今は、サワガニとオニヤンマの幼虫、ホトケドジョウを対象にしています。

加藤:僕は、「谷津」が持っている機能に注目して研究をしています。谷津は、印旛沼流域に600とかすごく沢山あって、昔はこの場所が稲作の中心で豊富な湧き水を使って稲作をしていたんですけれど、現代では印旛沼に近いところでの大型農業機械を使った稲作が主流になっています。そのため、「谷津」の湿地はあまり利用されなくなくなっていますが、僕はとても重要な場所だと思っています。たとえば雨が降ったときに「谷津」やその周りで浸透することで、流出する水の量が減り、水害が起きにくくなる。また印旛沼には、水質が悪いという問題もありますが、「谷津」の湿地を通る間に富栄養な湧水が水質浄化されたりと、「谷津」が印旛沼に対して貢献しているんじゃないか、こういったことに注目して谷津が持つ機能の研究をしています。

仕事のやりがいと大変さを教えてください。

野田:ただ、楽しいからやっていて、分からないことがあるから面白い。原動力はそれです。大変なことは、常に勉強不足を感じることですね。解析の仕方だったり、データの扱い方だったり、結果の解釈の仕方、そこを考えるのが大変です。

平野:自分で調べたことが世に出て、他の人もまたそれを使って新しい研究が発展すればいいなというのがモチベーションです。私も、勉強不足を感じて、そこを頑張らなきゃと思っているところです。もうちょっとこの分野を勉強していたら、この解釈が違っていたのかなとか、もっといい調査の計画が練れたかなとか、いい表現で論文を書けたかな等々後々思うことが結構あります。

加藤:小さい頃、谷津で遊んでいたおじいちゃん達が、生き物を守るために草刈りを続けたり水路の泥上げをしたりしていて、そういう人達に、「谷津があることで印旛沼に対してこれくらい機能がありそう、という研究をしています」と話すと、「やっぱりここは大事なところだからね」と言ってくれます。そういう風に、地域で本当に根本から支える活動をしている人が喜んでくれるのは嬉しいですね。大変なことを真面目に話せば多分お二人と同じようなことだと思うんですけれど、おちゃらけたことを言うと、花粉症がひどくて、調査に行った後がすごく辛いです。それと、ブランコも駄目なくらい乗り物に弱いので、車で調査に行ったときに僕一人ふらふらしていることがたまにあります。

将来はどのような仕事・分野を希望していますか?

野田:僕は、大学の教員として研究者の育成をしたり、研究者として研究所で働いたり、あとは研究者を支援する、研究者が研究に集中できる環境を整備したりとか、研究したいのに出来ない人を援助したりする仕事にも興味があります。

平野:私も、今やっている業務や研究に非常にやりがいを感じているので、このまま研究の道に進んで、続けられればと思っています。

加藤:必ずしも研究だけが必要なのではなく、地域の人の活動する力って大事だなとすごく感じています。なので、そういう人達を支えていけるような、活動しやすくなるような、そんな職業を探して就きたいなと思っています。

出身地と趣味を教えてください。

野田:生まれは神奈川県の藤沢市で、4歳からは千葉県の佐倉市です。趣味は、風景や生き物、建物の写真を撮ることと、ゲーム、キャンプで、最近はポッドキャストで世界の歴史についてラジオを聴いています。

平野:千葉県の松戸市出身で、趣味は探し中です。三日坊主でなかなか見つかりません(笑)。猫を去年から飼っていて、今3匹います。猫は見ているだけで癒されるので、そのために研究を頑張ろうってなります。

加藤:僕も松戸市出身です。野球を観るのが好きで、年間の試合のうち半分は頑張って観ています。それと、今年、西廣先生が田んぼを始められたので、そこに僕が里山応援隊で使っていた苗を植えさせてもらったり、趣味や興味の延長にあるのが研究でそこにはあまり境がないような状態です。

3人とも同じ研究室の先輩後輩という間柄で、お互いの発言にフォローが入るなど、和やかで楽しい雰囲気の中お話を伺えました。どうもありがとうございました!
取材日:2020年12月14日

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