Staff interview #17
パディエダット ゴパレン サリタ(PADIYEDATH GOPALAN Saritha)

気候変動適応センター(気候変動影響評価研究室)/特別研究員
2019年10月よりCCCAに参加。2019年首都大学東京大学院(現在の東京都立大学)でPh.D. 修了後、国立環境研究所に入所。インドの南部ケララ出身。趣味は読書、運動。

はじめに、インドでの学生時代の様子を教えてください。

インドの最南端にあるケララ(Kerala)で生まれ、自然が美しい場所で育ちました。私の故郷はモンスーンの影響を受ける地域で、子供のころから洪水などのマイナスな影響をみて育ちました。特に農業への影響がひどく、年齢を重ねるにつれ、そういった災害のリスクマネジメントをしたいという考えから、大学は農業工学を専攻しました。そこから修士で水資源、水文学の分野へ進み今の研究に繋がっています。修士の後は2014年から2年間、地域の銀行に就職しました。銀行といってもマネジメントやカウンター業務ではなく、私の専門を活かし農家の方々を支えるため都市開発員(Rural development officer)という肩書で仕事をしていました。Ph.D.に進みたいという想いがあったので、いろいろ調べて首都大学東京大学院(現:東京都立大学の大学院)に進学することになりました。

専門分野を選ぶ際に、何かきっかけはあったのでしょう?

故郷はモンスーンの影響をひどく受ける地域でした。せっかく耕したものも年に2回のモンスーンでダメになってしまう・・・そんな場所でした。私の祖父母がバナナ農園を経営していて、そこにもいつも大きな損失がありました。単純に彼らを助けたいと思ったのです。この地域特有の気候変動の問題からは逃げられないので、それを支える農業工学を学びたいと大学に進学しました。とても個人的な感情からこの分野に興味を持ち、今もその想いが私のモチベーションになっています!

日本を進学先に選んだことに、何か動機はありましたか?

特に場所にはこだわりはありませんでした。より良いポジションや、素晴らしい教授の元で研究をしたいと考え世界中調べました。首都大学東京を選んだのは、私の研究分野で世界的に有名な河村明先生がいらっしゃる点、私の親友でもあり同じく研究者の夫も首都大学東京で研究をしていた点に影響を受けています。複数の動機が重なり、日本への進学を選びました。

CCCAでは具体的にどのような研究をされていますか?

今はタイのチャオプラヤ川流域について研究しています。チャオプラヤ川における気候変動の影響評価と適応戦略に従事しています。ご存知のとおり、チャオプラヤ川はタイの中心地で経済の中心地でもあるバンコクにも流れ込んで、農業はもちろんタイの人々の生活に大きな影響を与える川です。人々の生活とも密接していますが、気候変動の影響もあり、毎年大きな洪水に悩まされています。10年ほど前には、とても大きな洪水があり相当な被害がありましたよね・・・。洪水の影響を減らすために分水路を用いることや、データを集めて研究し未来への影響も予測して対策を考えています。私たちの研究結果はハード面とソフト面の両方の対策により、将来のこれ以上の悪影響を抑えるということにも、重きをおいています。

状況が許せばフィールドワークで現地に行くことや、故郷で研究結果を活かしたいなどの願望はありますか?

繰り返しになりますが、私は場所にはこだわりがないのです。私はインド人で日本にいながらタイの研究をしているのです!(笑)もちろん今の成果を故郷にも活かせればと思いますが、フィールドは世界を対象に広くやっていけたらと考えています。データを用いた研究なので、現地へ向かうことはマストではありませんが、機会があり状況が許せば行ってみたいですね。チャオプラヤ川というと、市街地の汚染問題が一般の方にはなじみが深いと思いますが、もし現場に赴き踏みいった研究をするとなると、そういった汚染のフィールドと私のフィールドを掛け合わせた調査ができたらおもしろそうですね。どちらも人々の生活にとても影響があることですから。

研究者としてのキャリアやここCCCAでの目標はありますか?

自分の専門分野で研究者を続けていたいです。場所もちろんこだわりがなく、どこでも!(笑)大学で教鞭を取ることもやりたいですね。教えることには情熱をもっています!
実は、ラッキーなことに2021年度の後半に母校で教える機会も控えています。そちらも楽しみです。

日本での研究者としての暮らしやCCCAでの研究はどうですか?何か困難はありますか?

今ここで研究ができていることに価値を感じています。特に困難はなくいい環境で研究ができています!あ、コロナ禍で在宅勤務が中心なのは疲れてしまいますけどね・・・。同僚たちが恋しいです。分散勤務をしていますが、それがなかったら人と話す機会が少ないです。今日もこうやって画面越しですが、人の顔を見て話せることには元気がでます。

最後に趣味やお家での過ごし方を教えてください。

時間があれば、本を読むことや文章を書くことが好きです。短いお話や詩を書きますね。バトミントンや卓球も好きです。平日は仕事に集中し、お休みは家の事に追われています(笑)

コロナ禍でインドにはなかなか帰れていないそうですが、サリタさんの故郷ケララは気候がよく、10月訪問がオススメと教えてくれました。12年に一度咲く” Neelakurinji”の花は素敵です。ご自身の研究に熱心で、フィールドにはとらわれず突き進むサリタさん。楽しい時間をありがとうございました。
取材日:2021年4月16日

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