Staff interview #18
岡田 将誌(OKADA Masashi)

気候変動適応センター(CCCA)気候変動影響評価研究室 主任研究員
2017年より国立環境研究所。今年4月からCCCAメンバーとなり、農業の気候変動影響評価研究から適応戦略に至るまで幅広い研究に携わっていきます。散歩と料理が大好き。昼休みには自転車で自宅へ帰り、料理を楽しんでいます。徳島県徳島市出身。

環境問題に興味をもったエピソードを教えてください。

幼い頃から身近に自然に触れられる環境で育ちました。地元の徳島は海にも山にも川にも恵まれ、天気がめまぐるしく変わり、豊かな自然がいろいろな表情をみせてくれるところです。そんな豊かな自然は当たり前だと思っていたのですが、中学生の頃、吉野川の第十堰可動堰化計画の推進に伴う水や生態系環境の悪化の懸念を目の当たりにしたとき、環境問題を身近なものとして意識するようになりました。その頃から、環境に関する道を目指したいと思うようになりました。

徳島県から関東圏へ進学する際、筑波大学を選択した理由は何でしたか?

興味をもっていた水文学や気候学に強い筑波大学を選びました。筑波大学は環境学や地球科学全般を広く深く学べるのでそこにも惹かれました。
もちろん専攻を重視しましたが、大都市への憧れもありました!中学高校の地理の教科書で紹介されていた日本最大の研究学園都市に行けば、最先端の研究に近づけるチャンスに巡り会えるかもとも期待していました!

今の分野に専門を決めるきっかけはありましたか?

所属していた学部では3年生から4年生に上がる際に研究室選びをします。ちょうどその頃、IPCCの第4次評価報告書が発刊されたタイミングということもあり、気候変動問題に興味をもっていました。運良く研究室選択の1年ほど前に、気候変動影響評価研究を専門とする研究室が新設され、そこで深く学べそうと感じその研究室の門をたたきました。その研究室の教授や先輩、その先輩の紹介で研究補助員として働かせていただいた研究所の方々が農業の気候変動影響評価研究の日本の第一線にいらっしゃる方々でした。最先端の研究に携わっている方々に指導いただける環境に恵まれたことは非常に幸運なことでした。その刺激もありだいぶ研究に夢中になっていました。今となってはもう少し研究以外のキャンパスライフを楽しんでいてもよかったかなとも思います・・・(笑)

大学院を修了してすぐに、国立環境研究所に入所されたのでしょうか?

いいえ、卒業してからは農業環境技術研究所(現農業・食品産業技術総合研究機構・農業環境研究部門)にいました。引き続き、農業における気候変動影響評価研究を進めていました。2017年にご縁があって国立環境研究所に来ましたが、気候変動や適応研究を推進する日本の総本山であり、それぞれの分野で日本や世界の気候変動適応研究をリードしている方々が在籍されているので、農業分野で積み上げてきた経験を活かして、さらにスケールの大きな研究にも取り組むことができると思い選びました。大学から現在まで、幸運なことに、タイミングよくやりたいことを続けられています。

今の研究について教えていただけますか?ご自身の研究やCCCAでの目標は何ですか?

世界を対象にして、気候変動によって作物生産がどのように変化していくかの将来の見通しを予測する研究に取り組んでいます。その研究ツールとして、気候や社会経済変化についてのシナリオを与えて作物生産の影響予測や適応策の検討を行なうためのモデル開発・高度化も進めています。それに並行して、適応戦略に関する研究も進めています。具体的には、適応計画立案とその社会実装を支援する目的で、複数分野にまたがる気候変動影響の諸課題について、環境・社会・経済を含む総合的な観点から適応策・適応計画を評価するシステムを構築していきたいと考えています。それ以外に、一般公開や広報の活動等を通して最新の研究情報を広く一般にも共有していきたいとも考えています。研究に集中し成果を出すことが1番の目標ですが、研究所に集まっている面白い情報をどのようにお伝えして知っていただけると良いか、受け手からどう情報をうまくキャッチアップしていくのか、意識して取り組んでいきたいです。

外に広げるということにも目を向けていらっしゃるのですね。「適応」という言葉は、まだ一般の方には馴染みがない面もありますが、どうしたらもっとよく伝わると思いますか?

エコライフフェアや一般公開など一般の方に向けてのイベントで、「適応」についてお伝えする機会はあるのですが、言葉の説明は少し難しいですね・・・。なので、まずは身近な例を使いながらわかりやすく説明することを心がけています。例えば、熱中症の話をして、暑さで倒れたりしないように空調を調整する、まめに水分を取るということも「適応」だと説明するとほとんどの方が合点いただけている印象です。そこから具体的なことや専門的なことに広げていくのがわかりやすいのではないでしょうか。「適応」というと気候変動によるマイナスの影響から私たちの生活を守ることに目がいきがちですが、気候変動に積極的に向き合うことによって新しい豊かな生活を創造していくという視点も大事です。

身近な例だとわかりやすいですね。ありがとうございます。最後に趣味やお家での過ごし方を教えてください。

散歩やハイキングが好きです。コロナ禍なのであまり外には出かけられていないのですが、近場で季節の花や自然をみて楽しんでいます。運動だとテニスとスノボをしています。スノボは大学仲間に鍛えられて最近は上級者コースにもチャレンジしています。料理も好きで、進路を決める際に食の道へ進もうかと考えたこともありました!子供のときから料理が好きで、研究者じゃなかったら料理人になっていたかもしれないですね。自炊派なので、ステイホーム中も料理を楽しんでいます。スーパーで食材をみたり、道の駅にある産直で地域の物産品をみたりすることも好きです。変わった食材や旬の物を探すことは楽しいですよね!陳列されている品物をみて気候変動の影響を感じることもあります。売られている野菜や果物の状態や値段をながめながら天候不順かな?産地で何かあったのかな?といつも想像しています。

ご自身の研究を第一にで、それをどう広げていくかまでも見据えている岡田さん。想いや行動が一貫している素敵なエピソードをたくさんお話いただきありがとうございました。
取材日:2021年4月23日

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