Staff interview #19
吉川 圭子(YOSHIKAWA Keiko)

気候変動適応センター 副センター長
東京理科大学理工学部土木工学科卒。1995年4月厚生省産業廃棄物対策室入省2001年に環境省に移管)、
その後は環境省で廃棄物・リサイクル対策部、関東地方環境事務所、水・大気環境局、地球環境局などで環境技官として勤務、2020年8月より現職。千葉県出身。2児の母。

はじめに、気候変動適応センター(CCCA)に来られる前の環境省でのキャリアについて教えてください。どのようなお仕事をされていましたか?

もともと入省したのは厚生省で、産業廃棄物対策室におりました。廃棄物や水道関連の仕事に携わっていましたね。2001年に私がいた部門が、環境省に移管することになり、そちらの所属になりました。環境省にいた20年間は異動で点々としていましたが、半分は廃棄物関連、残りは地球環境や水・大気関連で、暑さ指数の測定をやっている部署にもいました。「熱中症アラート」という言葉で皆さんに馴染みがあると思います。他にも、浄化槽普及の仕事にも携わっていました。
国環研に出向する前は、地球環境局 脱炭素イノベーション研究調査室の室長を担っていました。名前が長いのですが…具体的な仕事内容は、温室効果ガスを測定する人工衛星(GOSAT)の開発運用や、その初号機が上がってもう10年以上経つのですが、廃棄の課題について模索していました。そうそう、異動して1週間も経たないうちに海外でのIPCC会議に参加したこともありました!慌ただしくしくも充実した日々でした。

学生の頃からこの分野に興味があったのでしょうか?

私は土木工学科の出身なのですが、その学科を志したのは、やはり環境問題に興味があったのが一つの背景です。不法投棄や原発・終末論などの話題が盛んになってきたころで、そういう問題の解決に関わりたいと思ったときに、土木工学が社会問題や都市開発の課題に携われると知り、選択しました。そういう専攻分野ですので主な就職先としては公共セクターが多く、就職氷河期で色々厳しかったこともあって、公務員を目指した、という感じです。あとは、個人的にSF小説が好きなのですが・・・それも影響しています。父がSF小説にはまっていたこともあり、『日本沈没』『大氷結』といったパニック物のSF小説が書棚に置いてある家庭でした。そういった物語の中で、世の中に大変なことが起こった時に地味に必ず登場する人物なのですよね、公務員って。基本的に端役で黒子ですが…(笑)。もしもの時に、黒子として役に立てるといいなと思い志したという面もあります。

この仕事のいいところは、子供たちに胸を張って言えることですね。「みんなが今後も幸せに暮らせる社会をつくる仕事をしている」と。今の仕事に楽しさと誇りを持っています。食材を消費期限切れで無駄にしたり、電気の消し忘れがあったりすると、子供たちから”言ってることとやってることが違うよね?”なんて厳しい指摘を受けることもあります。最近の子供たちはSDGsなんて言葉も学校で習ってよく知っていて、工夫された教材を持ち帰ってくることもあり、逆に勉強させられます。

SF小説の面白いエピソードありがとうございます!CCCAにいらっしゃって1年弱ですね。今は具体的にどんなお仕事をされていますか?

CCCA全体の業務が円滑に進むよう働きやすい環境づくりや関係者との調整を行うこと、ですね。肱岡副センター長と一緒に、私は特にマネジメント的な調整業務を中心に行っています。地域支援のほか、事業者への情報発信、個人の方々への調べ学習のコンテンツ提供など、現在7つほど横断的なチームが動いています。それぞれのチームが最高のパフォーマンスができるように、下支えしているといったところです。

今は在宅勤務ですが、オンライン会議などを駆使し打ち合わせやそれぞれのチーム会議に参加しています。環境省との仲立ちの役割もしていますね。環境省から難易度が高い要望がきたり、逆にこちらからの要望もあったりするので、上手く間に立って、調整できるように努めています。環境省だけではなく、気候変動は全ての社会課題が関わってくるので、多様な機関と携わる場所でもあります。農業や産業経済活動分野、防災という観点だと国土交通省など、他の省庁の動きもよく把握しておく必要があります。加えて、他の研究所や大学、海外機関との連携もあります。

CCCAでの今後の目標はありますか?

そうですね、これからは「適応」という言葉の認知度を上げていきたいですね。昨年、内閣府の世論調査があったのですが「気候変動適応を知っていますか?」という質問の認知度が11.9%だったんです。ここを何とか数%でも上げていけるといいなと考えています。認知度を上げていくためにはどうしたらいいのか、しっかりと取り組んでいきたいです。
CCCA内のオンライン懇親会で「適応って結局何?」という話題になって、誰かが「生き残り策!」と言って思わず得心したのですが、「不確実な世の中を生き抜くための方策」が気候変動適応だと思っています。
日本は災害も多いですし、身近な課題に備えるためにも大切な言葉だと考えます。CCCAに集まる科学的知見を情報整理して使える形にし、一般の方々にアクセスしてもらえるよう、しっかりと取り組んでいきたいです。

最後に趣味や休日の過ごし方を教えてください。

小説を読むのが好きです。最近は本格的なSF小説を読む時間はあまり取れなくて、ネット上の小説をちょこちょこ読んでいます。「好きな作品は?」と聞かれれば『さよならジュピター』とか『日本沈没』とか、やはり原点に戻りますね。
これは趣味といった枠ではないのですが、プライベートで子供たちに理科教育をする活動(日本技術士会科学技術振興支援委員会千葉県支部)にも参加しています。「都市鉱山」といって、携帯に使われているレアメタルなど、埋もれている希少資源の再利用について、模型やクイズ形式で伝えるという教育支援もしています!

SF小説から公務員を目指したお話や、アクティブなプライベートの活動までたくさんのエピソードありがとうございました。子育てしながら働くお父さんお母さんに、オンライン活用含む周りの環境づくりへの(広い意味での)適応も大事ですよとポジティブなアドバイスもいただきました。「不確実な世の中を生き抜くための方策」としても「適応」という言葉が広がっていくよう、応援しています。
取材日:2021年5月19日

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