Staff interview #24
渡邊 武志(WATANABE Takeshi)

気候変動適応センター(CCCA) 気候変動適応戦略研究室 特別研究員
北海道大学大学院環境科学院にて博士課程修了、東海大学と電力中央研究所にて再生可能エネルギーを対象とした研究プロジェクトに従事したのち、2020年からCCCA所属。島根県出身。

はじめに、研究者になったきかっけを教えてください。

私は幼い頃からずっと研究者を目指してきたわけではなく、転職して研究者になった珍しいタイプだと思います(笑)。出身は島根県で、大学は名古屋だったのですが、大学では工学系(材料工学関係)を勉強していたので今とは違った分野でした。大学卒業後、就職をしましたが、これも全く違う分野でした。当時の勤務先が北海道だったので、特に大きなきっかけや想いがあったわけではないのですが(笑)、ご縁があったところで、そのまま北海道大学大学院に進学しました。

学生当時、気候変動への関心はありましたか?

大学院の講義の中で環境問題の話がされていて、その中で再生可能エネルギーの話に触れ、そこから興味を持っていった感じですね。私が大学院に進学した頃、世間の気候変動への関心が高まっている時でしたので、自然と自分の興味にもなりました。当時は「温暖化」や「持続可能性」というキーワードで語られていたのを思い出します。
大学院で気象学・気候学を勉強してきて以来、総じて再生可能エネルギーにずっと関わっています。エネルギーシステムを作る工学分野ではなく、気象や気候の面からこの分野の研究をしています。このような研究分野は「エネルギー気象学」と呼ばれ、比較的新しく発展してきた分野です。東海大学時代は衛星観測が得意な研究室だったので、衛星観測を利用して地上で得られる太陽光エネルギーを推定するプロジェクトに参加していました。電力中央研究所では、風力発電の発電量を予測する研究プロジェクトを中心に研究を行いました。

適応センターでの仕事や研究について聞かせてください。

私は、再生可能エネルギー(主に、太陽光エネルギーや風力)とエネルギー需要に関係する気象現象を対象に研究を行っています。観測された気象データや衛星観測データを用いて太陽光や風力エネルギーの特徴を調べています。どの地域のどの時期に多くエネルギーを得られるか分かると、太陽光パネルや風力発電機を導入する場所を選ぶ判断ができるようになります。気象予測データを用いた再生可能エネルギーの予測研究も行っています。気象は時々刻々変化するので、事前に予測してどの程度のエネルギーが利用できるかを知ることは、再生可能エネルギーを利用する際の大切な情報です。更には、温暖化による将来の気候変化が再生可能エネルギーに与える影響についても研究を行っています。
以前やっていたことと比べて、今はもう少し研究対象が広くなった感じですね。再生可能エネルギーの利用は昔から行われていますが、昨今は世界中で再生可能エネルギーを主力電源として普及していこうという流れが拡大しているので、研究への注目度が増しています。課題は絶えず、スピードも速いので、研究をすることには絶えない分野です。個人的には、この分野では日本はアメリカやヨーロッパに先を行かれている感じがします。先行する研究者達と競争できるようにスピード感をもって研究を進めていかなければならないと思っています。

あと、これも個人的に感じていることですが、10代・20代の若い方々は、より再生可能エネルギーに興味をもっているのを感じます。若い人たちがもっと研究をしたいとなったときに、日本はバックグラウンドが整っていない気がします。日本でも、研究がより良く進められる体制や環境が整い、再生可能エネルギー研究により多くの人が参加できるといいですね。

渡邊さんの研究スタイルを教えてください。コロナ禍での研究はいかがですか?

コンピューターを使って、データ解析やシミュレーションをする研究が基本ですので、在宅でも研究を続けられています。太陽光や風力は、季節や時期での供給量が変わるので、天気予報のシミュレーションに関する研究もしています。天気予報というと明日、明後日のことが一般的で、これらの期間の天気予報に関する研究もしますが、国環研に移ってからは気候変動を踏まえて20年、30年、50年先の予測に関する研究も始めました。私は、日本での再生可能エネルギーの利用がもっと広がって欲しいので、日本を対象に研究をしています。気になったときに研究ができてしまうオンオフの切り替えが難しい環境ですが(笑)、私は在宅研究でも充実してできています!

今後の課題や目標はありますか?

そうですね「黙々と目の前のことを実施する」ですかね。(笑)
国環研には去年から勤務しているので、自分の役割を一生懸命やっていこうと思います。純粋にこの分野と向き合い、ここでできることをしていき、再生可能エネルギーへの発展に少しでも貢献していけたらいいですね。

太陽光や風力、バイオマスなど私たちの身近にも感じられるようになってきた再生可能エネルギー。持続可能な社会実現のためにも大切な分野で、益々発展するこの分野を研究したいと熱意を語ってくれました。
自身のやるべきことに真摯に向き合い、全うしている渡邊さん。もし時間や状況が許せば、ぶらり一人旅に行ってみたいそうです。応援してます!
取材日:2021年7月16日

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