Staff interview #30
プン ヴェラリンフイ(PHUNG Vera Ling Hui)

気候変動適応センター(CCCA)気候変動適応戦略研究室 特別研究員。
マレーシアサラワク州出身。京都大学にて修士および博士号取得、2020年7月国立環境研究所入所。趣味はバトミントン、最近ボルダリングも始めました。

研究者を目指した理由を教えてください。

研究者になるという選択肢は一般的にはメジャーな選択肢ではないのですが、私はとても興味がありました。自分のアイディアを形にするために調査研究を重ね、成果がでたら世界中の人に発信することができます。また、同僚たちも世界中から集まってきていますし、カンファレンスではいろんな考え方を知ることができます。同じ課題であっても別の視点から研究をしている人もいますしね。とってもおもしろい仕事です!

どんな研究をされてきたのですか?日本への進学は何かきっかけがあったのですか?

環境衛生、特に疫学を専門としています。大学で専攻を選ぶときに、「大気汚染」は将来もっと大きな課題になると考えていました。健康問題でもあるので私たちの生活にダイレクトに繋がってきます。学士で学んだ分野をそのまま修士でも研究しました。マレーシアのUKM(Universiti Kebangsaan Malaysia)で学び、その後日本の京都大学に進学しました。海外(日本)で研究しようと思ったのは、京都大学で、人間の安全保障教育プログラムというのを見つけたからです。これは面白いテーマだと思い、また、自分にとって総合的に視野を広げることのできる良いチャンスだと思ったからです。マレーシアにいると、研究もつい、自国のことにとらわれがちだと思うのですが、国外に出ることで違った視点からものごとを見たり、違いを感じたりできると思い、目の前にあったチャンスに飛びつきました!京都はとてもいい環境でした。観光客はびっくりするほど多かったですけどね(笑)

研究所には2020年に入所されたようですが、CCCAではどのような研究をしていますか?

「気候変動適応」に関することは、研究所に来てから取り掛かった課題ではありますが、概ねこれまで続けていた研究を踏襲しています。私は疫学研究の観点から、Smoke haze(煙霧)の研究をしていたのですが、「気候変動」の影響も関与していると思われます。例えば、一部の国や地域では煙霧に対する規制や施策が整備されておらず、人々の健康が危険にさらされています。私の研究課題は、特にエルニーニョ現象による異常気象下でのマレーシアでの煙霧発生が、人々に及ぼす健康被害について調べることです。また、乾燥している地域と湿気がある地域では、対策方法も違ってくるので、気候や気象を予測してこの問題を研究しています。対象は日本といくつかのアジア諸国です。他の国に広げることも可能ですが、今は東南アジア諸国を中心に研究しています。
研究所の仲間はそれぞれ異なった分野の研究を行っていますが、チームワークを感じています!コロナ禍なので、同僚にはあまり会えませんが、皆さんとても協力的です。直接話す機会があまり無いのが残念です。これからもっと研究所の人と交流していきたいです。

Smoke haze(煙霧)についてもう少し詳しく教えてください。

マレーシアの煙霧は、主に乾燥した天候が続いたときに発生します。これは経済的目的(例えば、農業、土地の開墾など)のための計画的な焼却、または森林や泥炭地での火災によって引き起こされます。マレーシアの煙霧の状況は、地域の問題であるだけでなく、東南アジア地域の国境を越えた問題でもあります。乾燥した天候が長引くことの多いときは、火災は壊滅的で制御が困難になり、この地域の複数の国で大規模な煙霧の発生を引き起こす原因になっています。
この煙霧は、深刻な健康被害をもたらす恐れがあります。人の健康に害を及ぼす可能性のある複数の危険な化学物質の混合物が含まれているからです。疫学研究分野では、煙が、呼吸器、心血管、癌、出産に及ぼす影響についての調査研究も実施されています。マレーシアだけではなく、今後、他の地域(国)でも煙霧の被害が発生することは予想されます。地域(国)によって、状況は異なると思いますが、気候変動や異教気象下で煙霧が発生し、その被害が地域の人々に影響を与える可能性が危惧されます。

マレーシアのご家族や友人は、「気候変動適応」に興味をもっていますか?

統計や根拠があるわけではなのですが、個人的にはマレーシアでも「気候変動」には関心が高まっていると感じます。政府も気候変動のリスクについて不安を感じているように思います。

今後の課題や目標はありますか?

将来も海外で研究をしていたいです。マレーシアに帰ってしまったらマレーシアに落ち着いてしまいそうで(笑)もう少し海外で、新しいことにチャレンジしたいと思っています。研究所ではやりたい研究、これまでの研究さらに広げてチャレンジもできて、素敵な機会に恵まれているので、これからも続けていきたいです。

故郷のサラワクは自然が好きな人にお勧めで、大自然と古い文化が織りなすとても素敵な景色を観ることができるそうです。自身も自然豊かな公園でゆっくりするのが好きだとのこと。いろいろ新しいことにチャレンジするのもお好きだそうで、今後の研究が楽しみですね。応援しています!
取材日:2021年10月18日

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