■近年、気候変動により岩手県のりんごが被害を受けているという『凍霜害』とはどのようなもので、なぜ発生したのか詳しく教えてください。
2021年3月の記録的な高温により、県内のりんごの生育は平年と比べて10日以上も早まりました。これによってりんごの生育段階が、例年より早い4月早々に、葉が広がってくる展葉期(てんようき)に達したのです。この時期のりんごは低温に弱いため、4月11日・15日の朝の降霜によって被害を受けて、10億円を超える大きな被害となりました。県北部で栽培されているおうとうや、県南部の日本なしについても同様の被害が見られています。
■凍霜害防止のために、どのような対策を行っていますか?
散水氷結法を使っています。園地には約50基のスプリンクラーを設置しており、気温が2度以下になると水が出る仕様です。これは氷と水が同じ空間にあることで、エネルギー交換が行われ、気温が0度以下にならないという性質を利用しています。スプリンクラーを使った散水氷結法のほか、送風機を使う防霜ファン、そして畑のなかで火を燃やして温めるという燃焼法もありますが、燃焼法は面積が広くなるほど灯油の消費量も多く、事前に消防への許可が必要なこともあり、少し大変です。
現在はそれらの方法のほか、凍霜害が発生する前後に特殊な資材等を散布して、植物体の耐冷性を上げる、もしくは植物体そのものをコーティングして寒さに強くするといった、葉面散布資材の効果の検証を進めています。
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