COP27 気候変動適応特集! COP27 気候変動適応特集!

COP27閉幕、適応に関する進展は?

COP27が閉幕しました。会期中に気候変動への適応に関してどのような発表があったのか、一部ニュースをご紹介します。

  • 日本主導のイニシアティブとして、「日本政府の気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)支援パッケージ」を環境省が公表。国際社会と協力しつつ、ロス&ダメージに対する支援を包括的に提供していくため、事前防災から災害支援・災害リスク保険までの技術的支援を包括的に提供する内容。本パッケージの一環として、新たに追加的に、アジア太平洋地域における官民連携による早期警戒システム導入促進イニシアティブを立ち上げ。(外部リンク
    また、途上国における気候変動にレジリエントな都市づくりを目指す、「すばる(SUBARU)イニシアティブ」を経済産業省が公表。国連ハビタット福岡本部とともに、途上国における気候変動にレジリエントな都市づくりを目指す。(外部リンク
  • 国連食糧農業機関(FAO)は他の国連機関と協力し、農業関連の新たなイニシアティブFood and Agriculture for Sustainable Transformation (FAST) 立ち上げへ。(外部リンク
    日本(農林水産省)からも「みどりの食料システム戦略」の実施を通じて得られた経験や知見を活用して、各国の持続可能な食料・農業システムへの移行に積極的に貢献していく旨を表明。(外部リンク
  • COP26での適応資金を2025年までに倍増させるという約束を踏まえ、2022年には、Adaptation Fundに資金拠出が各国から発表され、2億3千万ドル以上の資金が集まった。(外部リンク
  • UNFCCCとパリ協定に基づく技術メカニズムの2つの機関であるTechnology Executive Committee (TEC) と Climate Technology Centre and Network (CTCN)、気候変動に取り組むために緊急に必要とされる技術展開を加速させるため、共同作業プログラムを立ち上げる。(外部リンク
  • エジプト、ドイツ、IUCN(国際自然保護連合)が、生物多様性の旗振り役となるイニシアティブENACT - Enhancing Nature-based Solutions for Climate Transformation立ち上げへ。Nature-based Solutionsを活用して、10億人の脆弱な人々の保護と回復力を強化することを目指す。(外部リンク
  • 世界気象機関(WMO)とエジプトが、水関連の課題と解決策に取り組む包括的な協力を支持するイニシアティブ、AWARe(Action on Water Adaptation or Resilience)を発足。(外部リンク
  • 米国は、エジプトと共同で発表したAdaptation in Africa initiativeを支援するために1億5千万ドルを超える資金を提供することを発表。この資金でアフリカ諸国の適応を支援するためのCairo Center for Learning and Excellence on Adaptation and Resilienceの立ち上げなど、様々な適応アクションへの支援が予定されている。(外部リンク
  • EUとAfrican Unionは、EU-Africa Global Gateway Investment Packageの一環として、気候変動への適応と回復力に関する新しいイニシアティブTeam Europe Initiativeを発表。このイニシアティブによって、10億ユーロを超える既存および新規の気候変動適応プログラムをまとめ、EUとAU間の適応に関する連携の改善と政策対話を強化する。このイニシアティブにEUからの損失と損害に対する6,000万ユーロも含まれる。(外部リンク

COPと適応の歩み

COPとは、Conference of Parties(締約国会議)の略で、気候変動問題の文脈でCOPといえば国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国会議のことを指します。1997年第3回目の会議(COP3)で採択された京都議定書では2020年までの目標が定められ、2015年第21回の会議(COP21)では、2020年以降の取り組みを決めるパリ協定が採択され、ほぼ毎年その実現のために取り組みの進捗確認や必要に応じた見直しが行われています。2022年のCOP27は11月6日から11月18日まで、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催される予定です。
適応に関しては、パリ協定7条において、「適応に関する世界全体の目標」(Global Goal on Adaptation、通称GGA)が、世界で目指すべき適応の目標として定められました。 昨年イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26では、このGGAについてさらに議論していく必要性が確認され、COP27に向けて「GGAに関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」が発足し、2ヵ年計画でGGAの議論を前に進めていくことが決まりました。

パリ協定7条1項

締約国は、第2条に定める気温に関する目標の文脈において、持続可能な開発に貢献し、及び適応に関する適当な対応を確保するため、この協定により、気候変動への適応に関する能力の向上並びに気候変動に対する強靱性の強化及びぜい弱性の減少という適応に関する世界全体の目標を定める

⇒ より詳しくは:「ココが知りたい地球温暖化 気候変動適応編:Q8. 適応に関する世界全体のとりきめはあるのでしょうか?」へGo!

COP27とアフリカの適応

今回COP27が開催されるエジプトのあるアフリカ大陸は、気候変動に最も脆弱な地域の一つです。アフリカは、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量が他国に比べて少ないにも関わらず、気候変動が原因で深刻な損失や損害を被っています。例えば、IPCCの第2次作業部会の最新報告書によると、サハラ以南の労働人口の55~62%は農業従事者であり、農業は気候変動の影響を最も受けやすい部門の一つであるにも関わらず、十分な技術や資金が行き渡っていません。そのため、気温上昇、干ばつ、自然災害により、多くの地域では農作物の質と量の低下を引き起こし、貧困、栄養失調、経済成長の低下などとも連鎖しています。今年のCOP27では、そうした危機に瀕するアフリカ諸国の人々の暮らしを守るため、ホスト国であるエジプトは、「食の安全保障」をアフリカの適応の重要課題の一つと捉えており、そのための資金調達や研究開発を進めるための情報の充実などの進展が期待されています。

COP27のスケジュール

A-PLATのTwitterのハッシュタグ #COP27と適応 から現地レポも追えます!

COP27は、11月7日〜8日の世界首脳会議からスタートし、世界各地から集まった各ステークホルダーたちによる展示やシンポジウムなどのイベントが開催されます。11月9日からは、気候変動対策に重要なテーマが毎日設定されています。各イベントデーのテーマから、今気候変動を緩和し、適応していくために必要な項目を確認しましょう。

気候変動適応センターからはアジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)が参加予定です。11月7日から12日まで、会場内(展示ブース番号30)にて展示を開催しています。(国立環境研究所の衛星観測センター、社会システム領域、RESTEC、IGESと共同開催)
さらに11日(金)にはJAPANパビリオンにてセミナー(対面・オンライン)に登壇予定です。(セミナー詳細はこちら

その他にもJapanパビリオンでは、11月10日(日本時間17時~18時半、現地時間10時~11時半) に「適応ビジネス」に関するセミナーが開催され、日本の民間事業者の気候変動適応への貢献についての紹介やディスカッションが行われます。(詳細はこちら)

各イベントデーの右端の+を押すと、詳細が見られます。

金融(ファイナンス)は、気候変動対策を実施し、野心を拡大するために不可欠で、パリ協定交渉の中心をなしてきました。適応に関する資金は、緩和策に比べて割り当てが少なく、すでに気候変動の影響が出始めている資金に乏しい国には危急の課題です。前回のCOP26では、2025年までに、適応のための国際資金を倍増させるという合意がなされました。ファイナンス・デーは、革新的な混合金融、金融手段、ツール、政策など、気候金融エコシステムのいくつかの側面が取り上げられます。また、今回のCOP27でも資金調達のための新たなイニシアチブが発表される予定です。

2022年は、IPCCの第6次評価報告書の第2次作業部会(気候変動の影響・適応・脆弱性)、第3次作業部会(気候変動の緩和)から重要な報告書が出され、気候変動への取り組みに必要な科学的な知見が更新された年でもあります。その他にも、第3回国連海洋会議を含む海洋会議や、ストックホルム+50のアジェンダにも活かされているUNCCD(砂漠化対処条約)とUNCBD(生物多様性条約)に関連する新たな知見は、気候変動対策を進める上での重要な手がかりとなっています。この日は、パネルディスカッションやイベントでそうした新たな報告書の成果や提言を発表し、気候変動コミュニティや実務家、様々なステークホルダーと議論することで、気候変動対策と科学の関わりをさらに深める機会が提供される予定です。

気候変動の進行とともに、その影響の激甚化が深刻となっています。世界がこの激甚化する複合的な気候変動影響に対処し、適応していくためには、多様なアクターによる協調が不可欠です。とりわけ、民間事業者は、適応に必要な資金動員に及ぼす大きい影響や、適応に必要な要素技術を持っていることなどから、適応に欠かせないアクターです。本イベントでは、民間事業者の適応に係る先端的な知見を有する専門家や先進的な適応ソリューション(技術・サービス・経験)を有する日本の民間事業者の実務者を招き、適応に関する世界目標(GGA)の達成に向けて民間事業者が果たす役割、世界で気候レジリエントな経済社会の実現に貢献する適応ソリューションによる貢献等について議論します。
ぜひご覧ください⇒https://www.iges.or.jp/jp/events/20221110

1.5C°の約束を守るために、世界中で脱炭素に向けての取り組みが進められています。日本でも、自治体や企業が二酸化炭素排出量を削減し、徐々に脱炭素化に向かうことを目指した計画や政策、行動を打ち出しています。二酸化炭素を削減し、低炭素社会を実現ために、どのような解決策があるのか探るため、様々なアプローチ法や技術が紹介される予定です。

JAPANパビリオンにて、国立環境研究所(NIES)が、環境省(MOEJ)、地球環境戦略研究機関(IGES)、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)と共同でセミナーを開催します。東ティモールやバングラディッシュの政策策定者もお招きして、アジア太平洋地域における国家適応計画の策定・実行のためのグッドプラクティスや課題などが共有される予定です。当日気候変動適応センターからはAP-PLATも登壇します。当日COP27の会場にて現地参加、オンライン参加どちらも可能です。ご参加お待ちしています。(セミナー詳細

セミナー詳細
Formulation and Implementation of National Adaptation Plans (NAPs) in the Asia Pacific - Establishing a System to Promote Adaptation Towards the Achievement of the Global Goal on Adaptation (GGA)

日時:11 November 2022, 10:30-12:30(エジプト時間)17:30-19:30(日本時間)
実施言語:英語

オンライン参加希望の方はこちらから登録できます。

気候変動の影響はすでに避けることができないため、引き起こされる影響の回避・軽減を図る気候変動への「適応」がますます重要となっています。最新のIPCC第2作業部会報告書では、適応策を推し進める中で、強度を増す異常気象を前に不適応を起こしているケースも報告されており、考えなければならない課題が数多くあることがわかりました。
気候変動の影響に最も脆弱な部門の一つである農業では、気温上昇・大雨・干ばつなどから農作物の質や生産量が低下し、今世界は深刻な食糧不足に直面しています。私たちの食と健康を守るため、今回のCOPでも持続的な食料安全保障、新たな農業生産技術、農家の気候変動に対する回復力の向上などの対応策にスポットライトが当てられます。
また、この適応と農業の日では、農業に加えて、沿岸地域の生活と保護、損失と損害、災害リスク軽減など、適応に関するあらゆる問題を議論する機会も提供されます。

国連が定めた3月8日の「国際女性デー」。2022年は“Gender equality today for a sustainable tomorrow”をテーマとして、気候変動への適応、緩和、対応を担う世界中の女性や女子の役割や課題を理解する重要性について呼びかけられました。気候変動はあらゆる人々に影響を与えますが、受ける被害の大きさは平等ではなく、女性や女子たちは気候変動により脆弱だということがこれまでの研究でわかっています。その視点を欠いたまま気候変動対策を進めても、こうしたギャップは埋まることがなく、もしかすると今より格差が開いてしまうかもしれません。気候変動対策の意思決定のプロセスにジェンダーの視点を組み入れるために、この日は気候変動の影響やアクションに関する女性の経験が共有され、彼女たちの役割に焦点が当てられる予定です。

「水の日」では、持続可能な水資源管理に関するあらゆる問題が議論されます。世界は今深刻な水不足に直面しています。今年の夏、フランスのロワール川は8月中旬に水位低下の記録を更新し、ドナウ川、ライン川、長江、コロラド川などで水位が大幅に低下している衝撃的な川の様子をニュースで知った人もいるかもしれません。アフリカ東端のソマリア、エチオピアなどの「アフリカの角」と呼ばれる地域で度重なる干ばつは悲惨さを極め、家畜や作物を失った人々は、貧困や重度の栄養不良に悩まされ、自分たちの住む土地から離れることを余儀なくされています。飲料水から産業に至るまで、私たちの生命線である水資源をめぐり、世界各地では水資源を確保するための「水紛争」にまで発展しています。その一方で、極端な豪雨に見舞われ水害で甚大な被害を受ける自然災害も増えてきています。海面上昇によって受け継がれて来た土地が消失してしまう国も増えていくでしょう。

気候変動対策の推進には、すべてのステークホルダーが関わり、これに貢献していくことが必要です。UNFCCCが採用した用語であるAction for Climate Empowerment (気候エンパワーメントのための行動、通称ACE)は、教育、トレーニング、国民の意識向上、国民参加、情報公開、国際協力という6つの重点分野を通じて、社会のすべての構成員が気候変動対策に従事できるようになることを目指しています。市民社会は気候変動と戦うための世界的な努力に欠かすことのできないパートナーであり、この日は様々な形の気候行動および政策対応における市民社会の役割と貢献が紹介される予定です。

エネルギーの問題は、気候変動対策では緩和の話と結び付けられることが多いですが、人間社会の動力源であるエネルギーは、気候変動に適応していくためにも必要です。例えば、水資源を確保するために海水を浄化して飲料水として利用できる装置には、膨大な電力が必要になります。今年の夏は世界各地で熱波が人々を襲いましたが、これからますます暑くなる夏を凌ぐためには、冷房がますます欠かせないものになっていくかもしれません。地球に負荷をかけてきたけれども、もはや我々の社会システムを維持していくために欠かせないエネルギーを我々はこれからどう調達して配分したら良いでしょう。再生可能エネルギー、スマートグリッド、エネルギー効率、エネルギー貯蔵など、気候変動対策のための将来のエネルギーの選択肢を模索します。

気候変動は、種の絶滅や生息・生育域の移動、減少、消滅などを引き起こします。例えば、気温上昇や融雪時期の早期化により、高山帯では植生の衰退や分布の変化がすでに報告されています。その他にも、急速に進む温暖化の熱ストレスに多くの種が対応しきれずに、生物多様性が損なわれつつあることが研究で徐々に明らかになってきました。生物多様性を保持し、自然を活かしながら気候変動対策を進めることができる、自然を基調としたソリューション(Nature-based Solutions)についても、今回のCOP27で議題に挙げられる予定です。COP27閉幕後の12月には、カナダで開催される生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)にて、愛知目標に続く新たな生物多様性枠組の採択が予定されており、2023年度には自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures 、通称TNFD)の導入が予定される見通しで、生物多様性に関する取り組みが今後さらに加速されていくことが期待されています。

ソリューションズ・デーは、政府代表、企業、イノベーターが一堂に会し、それぞれの経験やアイデアを共有することで、意識の向上、経験やベストプラクティスの共有、将来の提携や協力関係の構築を目指します。気候変動問題の解決策は分野ごとに多岐に渡りますが、この日は特に、国家予算のグリーン化や持続可能な都市開発などに焦点が当てられ、都市の気候変動への取り組みを加速させるためのCOP27議長国のイニシアチブ「SURGe」の公式発表も予定されています。また、既存の企業や中小規模の革新的な企業と、政府や金融機関の代表者が集まって対話をすることで、気候変動との戦いに創造性と革新性をもたらすことも期待されています。

(最終更新日:2022年12月27日)

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