COP29 気候変動適応特集!
NGOから見たCOP29 – Climate Youth Japan 中嶋彩香さん
A-PLATでは、COP特集記事の締めくくりとして、COPに参加した様々なステークホルダーの皆様からの印象をお伺いしています。今回は、気候変動分野で積極的な活動をしている大学生・大学院生を中心としたグループである、Climate Youth Japan(CYJ)からお話を伺います。CYJは、諸外国のユース団体とも連携・意見交換しながら、気候変動対策について日々取り組んでいます。毎年のCOPにも数名の学生を派遣しており、今回は、COP2週目に参加して適応について追っていた、東京大学教養学部前期課程理科二類2年(農学部内定)の中嶋彩香さんからお話を伺いました。
COPに参加しての印象はどのようなものでしたか。
私がCOPに参加するのは今年が初めてでした。第一印象としては、COPの国際交渉は、政治的な面が非常に強いということです。ハイレベルな交渉が続いていて、一般の人がアクセスしようとしても、なかなか難しいように感じました。
一方で、各国や組織がそれぞれの取組を紹介しているパビリオンや、企業も多く出展しているグリーン・ゾーンの方からは、気候変動に対して何らか具体的な取組を進めようとしている印象を強く受けました。私は農学を専攻しているので、農業系や森林系の展示などをいろいろ見てまわり、様々な取組について学ぶことができました。
パビリオンを見比べていてひとつ気付いたのは、日本の展示は、自国の技術を積極的に打ち出すという面が強いということです。例えば他の国だと、特色ある食べ物などを提供しているところもあるなど、文化交流的な面が強いことが多いのかなと思いました。最初は技術面のみを強く推す日本の展示は他国から好意的に見てもらえるのだろうか、と思っていましたが、他国のユースからこの展示を高く評価してもらうこともあり、興味深く思いました。
交渉については、1週間滞在しましたが、実際に見られた時間はトータルで丸1日にも満たなかったと思います。その主な要因として、交渉がクローズドなものが多く、オブザーバーとしては参加できない場合が多かったことが挙げられます。それでも印象に残ったのは、地球環境ファシリティ(GEF)に関する交渉でした。言葉の一つひとつを丁寧に選びながら交渉を進めている様子がとても印象的でした。この交渉は非常に政治的な場であり、お互いの立場がバランスよく反映されるよう、慎重に言葉を選んでいることを実感しました。

適応交渉の進展と結果について、どのように感じましたか。
率直に言えば、今年の交渉では適応に関する議題はあまり進展がないのかなと思いました。確かに、新たにバクー適応ロードマップはできましたが、あまり大きい合意はなかったという印象です。他にもUAEベレン作業計画の成果としてどの程度の数の指標のリストを作成するのか、実施手段(MoI)に係る指標についてなど、一定の動きはあったと思いますが、全体としてこれからという感じでした。
なかなか議論が進みにくい要因として、適応はその進捗評価が難しいということがあるように思います。洪水がとても増えている地域から、逆に渇水が起きている地域まで、地域ごとに気候変動の影響は大きく異なっています。こうした影響への対策について、各国が同じ指標で進捗評価するというのはかなり難しいのではないかと思います。
ただ、そうした難しさがあるとしても、適応の交渉が進みにくいことには少し違和感があります。緩和交渉については、アメリカなど温室効果ガス排出量が多い国が排出削減に取り組まないという消極的な姿勢を取ると、それだけで交渉全体が遅れてしまうという、ある種「裏切り者に弱い」とも言える性質があると思います。一方適応は、どの国においても、何かしら取組を行えば成果は出るものだと思います。気候変動の激化により先進国も適応の取組を加速される必要があると予測される中で、適応の交渉が進まないというのは意外だと率直に感じました。
ジャパンパビリオンでのイベントで一緒に登壇したパキスタンの方は、自国が洪水から深刻な被害を受けていることを話してくれました。この問題はパキスタンの人々の命に直結することであり、激化する自然災害に何の適応対策も取らないのは彼らの人権に関わる問題であるという怒りの感情を彼女から感じました。
今年は資金の交渉が大きな注目を集めており、適応もこれに関連していたと思います。ただし、案にあがっていた適応についてのサブゴール(注:全体の資金目標のうち一定割合を適応に振り分けるというような目標のこと)などは盛り込まれなかったので、私としては、今後も緩和に多くの気候資金が流れ、適応のための資金が大幅に不足するという現状は変わらないのではないかと思っています。
一方、公的資金なしに適応に継続的に取り組んでいくのは難しいという課題があると思います。適応を継続的に行っていくのであれば、公的資金に100%依存せず民間企業も入ってビジネスとして回っていくのが望ましいと私は考えます。ただ民間企業が適応に関連するビジネスに参与する際のファーストリスクを減らし、民間関与のきっかけを増加させるためという意味でも公的資金は重要です。

今後適応(交渉)にどのようなことが求められると思いますか。
一番私が懸念しているのは、ある種ボランティアのように日本等からの融資のみで適応を進めていると、ゆくゆくは先進国側も自分たちの適応に資金が必要となり、諸外国に資金を回せなくなっていき、持続可能性が失われ得るということです。企業が発展途上国とより積極的に手を組んでいき、国と国との関係ではないところで適応の取組が促される仕組みを作っていく必要があると思います。
社会においてなにかしらの痛みが生じているところはビジネスチャンスであり、それを解決すれば利益がでるというのがビジネスであると思っています。とはいえ、日本企業が、例えばいきなりアフリカに農業機材などを持っていって事業をするのは、土壌や気候のデータもなくて難しいかもしれません。だからこそ、一番取り組んだほうが良いのは、先進国や民間企業がいま困っている人を助けにいく際の、ファーストリスクをなくすような取組だと思います。適応は人の命に直結しているので、スピード感が大事です。この点、国家間の取組ではどうしても時間がかかってしまうため、ビジネスサイドを巻き込んでいくのは良い取り組みだと考えます。
先進国の責任から、途上国にもっと支援を振り向けるべきというのは簡単だと思います。しかし、そうした意見を表明することはそのまま自分たちの責任にも結びついてくるのだということもまた考える必要があると思います。この「意見を表明する責任」というのはCYJメンバーと議論していてもよく話題に上がる内容です。もちろん私も他のメンバーも、日本のような先進国には途上国の適応を支援する責任があると理解していますし、支援はするべきだと考えています。ただ、これから日本社会を支える側にまわる世代として、多くの課題を抱える日本社会の未来を考えると、果たしてどこまで支援できるのか、あるいは支援したいという気持ちを持ち続けられるのか不安になります。こうした不安に自分の中でどう折り合いをつけるのかというのが、現状の適応交渉に対するしっかりとした意見をもち、ユースとしてそれを表明していく上での難しさだと感じています。

写真提供:中嶋彩香