Staff interview #28
服部 拓也(HATTORI Takuya)
釜江 萌美(KAMAE Megumi)写真左から

今回はA-PLATの制作やデータ収集、サーバー管理などを行う高度技能専門員(テクニカルスタッフ)2名にお話を伺いました。

環境に興味を持ったきっかけを教えてください。

服部:小学校のとき、学校でビオトープづくりを行ったんです。学校の地下に通っていた地下水を汲み上げて池をつくったのですが、汲み上げるときの電気も再生可能エネルギーを使い、環境に配慮していました。この体験を通して水や生き物に興味を持つ同級生は多かったと思うのですが、私は自然の力で発電してくれる再エネに興味を持ちました。こんなにいいものなのに、なぜ世の中に広がっていないのか?ということがとても不思議でした。
大学時代は、”環境サークル”に所属して市民への環境啓蒙活動を行ったり、お祭りで出たゴミの分別指導をしたりしていました。市役所のESD(Education Sustainable Development=持続可能な開発のための教育)の委員にユース代表として参加しました。その後は、元から関心が強かった気候変動の活動にも参加するようになり、気候変動に関する法律やルールが作られていく様子を知るために国際会議に参加したり、環境NPOの理事に就任したりと、さまざまな経験を経て環境に関する専門知識を深めていきました。

釜江:学生の頃から環境に関してはある程度関心がありましたが、大学の地球史の授業で、過去に寒冷・温暖な時代があると知ったことが、環境、特に気候変動(地球温暖化)について興味を持ったきっかけのひとつだったように思います。学部では地層を調査して過去の気候・環境を復元する研究、大学院では、気候モデルでシミュレーションした結果を用いて過去の気候を再現する研究に携わって、さらに関心が高まりました。

CCCAに入るまでの経歴についてお伺いできますか?

服部:大学を卒業して、IT企業に就職しました。学生時代の活動から「もっとITを活用して環境問題を周知させて行きたい」と思っていて、例えば在庫管理や調達に使用するシステムに環境の要素(輸送に伴うGHG排出やFSC等の認証がついたものを優先的にサジェストするなど)を入れたいと考えていました。意識啓発さえ行えば、それだけで世の中の環境問題が解決するわけではないと思ったからです。会社ではERPといって、例えば人事や財務などの企業資源を一括管理・活用するためのシステムを扱っていて、私はグループウェアの開発をしていました。
ある程度ITのスキルが身についたと実感できたころ、環境とITが融合するポジションがないだろうかと探していて、CCCAに辿り着いたという流れです。

釜江:大学院を修了後、民間の気象会社に入社しました。そこでは個人向けアプリのユーザーに対して、天気予報や桜の開花予想、紅葉の見ごろ予測を発信するなど、主にコンテンツ運営を担当していたんです。その後、気候変動の最新研究に触れられるところで働けたらいいなと思って探していたときに、気候変動適応センターの存在、気候変動「適応」という分野があることを知り、つくばに引っ越してきました。学生の時の知識やこれまでの仕事の経験を活かせるのではないかと思ったのも動機のひとつです。再就職した会社でIT分野の仕事を1年ほど経験してからCCCAに移ってきました。

CCCAでのお仕事の内容について教えてください。

服部:A-PLATのなかでも特に動的ページ作成、サーバー管理を行っています。その他、気候変動適応について学べるスマホアプリ『みんなの適応 A-PLAT+』開発の全体調整と、暑さ指数配信機能の実装も担当しました。地域気候変動適応センターへ情報発信する『A-PLAT Lab』や、世界各地の機関が提供するツールを検索できる『Data & Tools』を作成しました。

釜江:A-PLATのWebGISで表示している気象観測データや気候予測、影響予測データの収集や管理に関わっています。またそのデータの管理と、自治体や事業者等からデータ提供依頼やデータに関する問い合わせがあれば対応しています

仕事をするうえで大切にしていることはありますか?

服部:システム開発全般に言えることですが、拡張性を持たせることでしょうか。A-PLATはコンテンツの量が多く、記事を探すときの条件や着眼点がユーザーによって異なります。気候変動の影響を受ける分野という観点で検索する人もいれば、どこの地域で何が起きているか知りたいという観点で検索する人もいる。その検索条件を増やそうとなった際、設計を一から変更しなければならないシステムではだめです。最初から変更が加わる前提で設計することを意識しています。

釜江:私は自治体や事業者から問い合わせが来たときにやりとりをすることもあるので、できるだけわかりやすく伝えようと心掛けています。最近WebGISで見られる将来データが追加され、数も多くなってきたのでデータの情報を表で整理して、少しでも分かりやすい形で提供できるように心がけています。

この仕事の楽しさや、やりがいはどんなところにありますか?

服部:もともと気候変動についての知識はありましたが、私の学生時代は人々の関心が緩和中心だったのが、いまは適応に移ってきています。緩和だけで解決させるのは難しいという風潮のなか、新たに適応の情報をインプットする作業は個人的に新鮮でとても楽しいです。
やりがいとしては、まず国の取り組みに携われているところですね。自分が作ったシステムが無事に動いて、アクセス数も順調に伸びていると、やってよかったなという気持ちになります。

釜江:お渡ししたデータが自治体の適応計画や、その他参考情報として実際に使われると、お役に立てたと感じられてやりがいにつながりますね。また、興味のある環境分野について最新の研究データが見られるのは個人的な楽しみでもあります。

環境に対して興味関心の高いおふたりだからこそ、気候変動について実感されていることや、今後世界的にどうなっていくのか、あるいは人々の動きも含めてこうなっていったらいいな、という希望的観測などがありましたら教えてください。

服部:明らかに大雨が増え、それに伴って河川の氾濫も増えました。これから脱炭素は進んでいくでしょうし、そうあってほしいなとは思います。ただ、急速に社会が変化すると、従来の産業で働いている人々の職はどうなるのかという問題もあります。早急に進めて、世の中を劇的に変化させるのは困難だと思います。気候変動による深刻な被害はこれ以上増えてほしくはありませんが、いまある情報を最大限に活用しつつ、許容可能なスピードを模索しながら変わっていってほしいですね。
たとえば将来、店頭で売られているもののほとんどがサスティナブルな製品で、環境を意識している人であってもなくても、結果的に持続可能な世の中を作っている…というようなそんな世界になるといいなと思います。

釜江:気候変動についての知識を持っている人が意外と多いなという印象はあります。専門用語についても理解している人が多く、ニュースでも最近よく取り上げられているのを見ますので、皆さんの興味関心も高まっているのではないでしょうか。
ただ、気候変動「適応」というと、まだ認知度が高いとは言えない気がします。気候変動の適応について認知が高まるとともに、将来予測データを含めて適応に関わる様々なデータがより活用できる形になって、適応が進む社会になればよいなと思います。もちろんそのためには、データが多くの人にとって使いやすく提供されることが必要で…そのために、もっとデータを使いやすくする表示方法やページ作り等ができればと思っています。

おふたりとも自分自身の課題を認識し、解決するために努力し続けている姿が魅力的でした。服部さんは国環研のサッカー部で運動、釜江さんは休日登山や愛猫とのんびり過ごすことで、それぞれオフの時間を楽しんでいらっしゃるのも素敵です。これからも見やすいサイトづくりをよろしくお願いします。ありがとうございました!
取材日:2021年9月16日

ページトップへ