土壌藻類を活用した表面侵食防止工法(BSC(注1)工法)
日本工営株式会社
業種:学術研究、専門・技術サービス業
更新日 | 2023年12月25日 |
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掲載日 | 2023年5月31日 |
適応分野 | 自然災害・沿岸域 / 自然生態系 |
会社概要
日本工営株式会社は1946年創業のコンサルティング&エンジニアリング企業である。当社はサステナビリティ基本方針として「気候変動対応、資源循環社会への移行、生物多様性の必要性を重視し、自然環境と生活環境の調和した、より豊かな社会環境の創造に努める」ことを表明している。
気候変動による影響
南西島嶼(とうしょ)域では、まとまった強い雨が降ると開発現場や農地などから土壌が流出し、沿岸海域のサンゴ礁生態系を破壊し水産業や観光産業に悪影響を及ぼす。これを「赤土問題」という。気候変動の影響として、降雨強度の増加などに伴い様々な地域で土壌侵食による斜面崩壊・濁水発生のリスクが増加し、同様な問題が広がると予想される。
適応に関する取り組み
当社は、国立研究開発法人土木研究所と連携して、土壌藻類を活用した技術「BSC工法」を開発した(注2)。本技術の目的と方法は下記の通りである。
- 目的:崩壊斜面・造成法面(のりめん)(注3)の浸食防止と自然植生の形成
- 方法:土壌藻類を資材化し、崩壊地や法面等の地表面へ散布(図1、図2)
- 技術的背景:沖縄で実施していた赤土対策の研究から、土壌藻類が発達している場所は土砂流出量が少ないこと、BSCを形成した畑では流出土砂量が1/10~1/20程度に低減されることを実証
- 利点:従来の自然な緑化方法より安価、環境保全規制区域への適用可能性、法面整形なしでの施工が可能
さらに、「BSC工法」は、世界中に存在する土壌藻類を利用するため、在来種への環境影響が少ないことがメリットである。また土壌藻類はクローン増殖するため、遺伝子かく乱の心配がないことも特徴であることから、国内外のさまざまな地域で適用可能である。なお、国外ではネパール、マレーシア等でこの工法の普及活動が行われている。
効果/期待される効果等
植生は一般的に、裸地から、土壌表面が藻類やコケ等で覆われた状態(BSC)へと遷移するが、その遷移は自然状態においては時間がかかる。土壌藻類を散布するこの工法では、散布箇所に、2週間から1か月という短期間でBSCが形成される(図3)。 BSCは表面侵食防止効果を有しており、これを早期形成させることによって、自然現象を活用した侵食対策や濁水防止、植生復旧・導入につながる。
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