都市型洪水やヒートアイランド現象を抑制するリサイクル舗装材

株式会社エコシステム

業種:製造業

掲載日 2023年6月28日
適応分野 自然災害・沿岸域/国民生活・都市生活

会社概要

株式会社エコシステムは、環境負荷を抑えた舗装材・壁材を主力製品とする企業である(注1)。1997年に起きたナホトカ号重油流出事故で、汚染された海砂を舗装材として再利用する工法を開発したことをきっかけに、廃棄物をリサイクルした資材開発を進めてきた。現在は国内だけでなく、ボリビアやベトナムで事業化に向けた調査を進めている。

気候変動による影響

気候変動により、大雨や強い熱帯低気圧が発生する割合は今後ますます増加すると考えられる。都市部では地面が舗装されているため雨水は地面に浸透・吸収されず排水溝から排出されるところが多い。そのため、一時的な豪雨によって降水量が都市の排水能力を超えると、都市型洪水が発生する。 また、気候変動による気温上昇によって、舗装面が多い都市部ではヒートアイランド現象が起こりやすくなり、熱中症の発生リスクが増加すると予想される。

適応に関する取り組み

当社は、瓦廃材を粉砕し、舗装材や複合コンクリート製品として再利用した製品群「K-グランド」を開発した。素材である瓦は多孔質のため、「K-グランド」に透水性(図1)や保水性を持たせることができる。

  • 水を通す、吸収する素材
  • 「K-グランド」製品は複数種類あるが、そのうち、「K-グランド(C)」、「K-グランド(Co)」、「K-グランド(R)」について下記に示す。

    K-グランド(C)
    • 特殊コンクリート製品
    • 保水効果(10cm厚、15~18リットル/m2)があり、ヒートアイランド防止につながる(図2)
    • 透水性(400ccの流量時間4.16秒)があり、都市型洪水防止につながる
    • 照り返しが少なく滑りにくい
    K-グランド(Co)
    • コンクリート舗装材
    • 保水効果(10cm厚、15~20リットル/m2)があり、ヒートアイランド防止につながる
    • 景観性に優れる。夜間は光を乱反射して輝き、歩行者の安全性を高める
    K-グランド(R)
    • 樹脂舗装材
    • 透水性(400ccの流量時間4.16秒)があり、都市型洪水防止につながる
    • 水溜りができない、滑りにくい、歩行感がソフト
    • 景観性に優れる。夜間は光を乱反射して輝き、歩行者の安全性を高める
  • 「K-グランド」を全国に広めるための取組み
  • 瓦を粉砕して作るコンクリートはいわゆる特殊コンクリート(注2)であり、通常のコンクリート工場での製造が難しい。また舗装工事には通常、生コンクリートプラント(注3)が必要になるが、生コンクリートプラントは高価なため、「K-グランド」は限られた地域でのみ利用可能であった。そこで当社は、安価で移動が可能な車載式舗装材製造プラント「モバコン(図3)」を開発し、場所を問わずに「K-グランド」を製造、施工することができるようにしている。

効果/期待される効果等

さまざまな場所に、アスファルトやコンクリートの代わりに、水を吸収し暑くなりにくいこの舗装材を適用することで、今後ますます深刻化が懸念される都市型洪水や熱中症のリスクを軽減することができる。

また、「K-グランド」の普及は、リサイクル困難物である瓦を資源として有効活用することにもつながる。

当社は、日本国内でこれら廃棄物のリサイクルノウハウ、地産地消リサイクルネットワークを有しており、今後は国内外へ向けて、このノウハウや地産地消製品を展開していく。

「K-グランド」の透水試験(「K-グランド(C)」と透水性瓦樹脂舗装:「K-グランド(R)」)
図1 「K-グランド」の透水試験(「K-グランド(C)」と透水性瓦樹脂舗装:「K-グランド(R)」)
「K-グランド」のサーモグラフィ画像
図2 「K-グランド」のサーモグラフィ画像
車載式コンクリートプラント「モバコン」
図3 車載式コンクリートプラント「モバコン」

脚注
(注1) 2018年に、SDGsビジネスコンテスト最優秀賞、SDGsビジネスアワードグローバルイノベーター賞、いしかわエコデザイン賞大賞を受賞している。
(注2) 骨材として砂利、砕石、軽量骨材以外を用いたコンクリートや、ポリマーセメントコンクリート、レジンコンクリートなどのセメント以外を用いたコンクリートの総称
(注3) コンクリートの原材料であるセメント、水、砂、砂利、混和材料などを所定の配合で計量し、これを練り混ぜてコンクリートを製造する設備

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