AIとIoTによる自動化で作物にも環境にも最適な潅水・施肥を実現

株式会社ルートレック・ネットワークス

業種:情報通信業

掲載日 2023年6月21日
適応分野 農業・林業・水産業/水環境・水資源

会社概要

株式会社ルートレック・ネットワークスは、2005年の創業以来培ってきたM2M/IoT技術を基に、2010年 総務省 広域連携事業の「ICTを利活用した食の安心安全構築事業」を契機に、明治大学黒川農場との共同研究により、スマート農業事業に参入。2015年にAI潅水施肥システム「ゼロアグリ」を正式リリース、2018年には、第4回日本ベンチャー大賞(農業ベンチャー賞 農林水産大臣賞)を受賞、同年 経済産業省よりJ-Startup企業、内閣府官邸 先進的技術プロジェクト「Innovation Japan」にも選出されている。

気候変動による影響

気候変動による干ばつは、今後さらに頻度と強度を増して発生すると予想されるため、安定的な水供給に影響を及ぼすことが危惧される。食料需給問題への解決策として、農産物の生産性の向上を図るためには、大量の水と肥料が必要である。また、化学肥料による地下水汚染やCO2排出も課題となっており、農林水産省は、みどりの食料システム戦略により、2030年に化学肥料の使用量を20%削減するとしている。

今後、持続可能な農業を営むためには、無駄のない適切な量の水と肥料で、高い生産性を保つことが求められる。

適応に関する取り組み

当社は、明治大学と共同で水やり(潅水)と施肥を自動で行えるAI潅水施肥制御システム「ゼロアグリ」を開発した。この装置は、パイプハウスの施設園芸に導入可能である。「ゼロアグリ」は下記の機能を有する(図1)。

  • 土中のセンサーで取得した土壌水分量の情報をクラウドに送信(注、図2)
  • 蓄積されたセンサーデータと日射予報をもとに、農作物が1日に要求する蒸散量をAIが推測し、最適な液肥供給量・濃度を算出
  • 点滴チューブを通じて最適な量の潅水・施肥を実施
  • 生産者が土壌の状態や潅水・施肥の実施量、CO2排出推定量、システムの稼働状況をスマホなどで確認可能(図3)
  • 自動制御のための目標値設定に、生産者自身の経験則に基づく設定値を反映することも可能

従来の潅水は、一度に大量の水を手動バルブで供給するため、作物に大きなストレスがかかるものであった。「ゼロアグリ」を活用することによって下記2点のメリットを得ることが可能である。

  • 土壌水分量を安定して管理できるため、作物に与えるストレスが少なくて済み、収量と品質の向上につながる
  • 手動では難しい高精度な管理が可能で、使用する水・肥料の量を最小限に抑制することができる。

なお、2013年に提供を開始したこの「ゼロアグリ」は、全国で累計360台以上が導入されている。

効果/期待される効果等

「ゼロアグリ」は、蓄積されたデータを元にAIが潅水や施肥の量を管理するため、経験が少なくても品質の高い作物を安定的に育てることができる。さらに自動化と遠隔管理の実現によって、夏季の熱中症リスクの軽減や労働時間の短縮等、生産者の負担軽減ができる。このような負担軽減と生産性向上が、農業の担い手不足の解決に繋がる可能性もある。また、環境面においては、節水だけではなく、施肥の精密制御により、化学肥料の削減を行い、硝酸性窒素による地下水汚染を防ぎ、更に土壌からのCO2発生を抑制して、カーボンニュートラルに貢献する。

「ゼロアグリ」のシステム
図1 「ゼロアグリ」のシステム
土壌センサーで測定した土壌水分量
図2 土壌センサーで測定した土壌水分量
(スマホやパソコンからグラフを見ることができる)
チューブで行われる潅水(左)とスマートフォンでの確認・操作(右)
図3 チューブで行われる潅水(左)とスマートフォンでの確認・操作(右)

脚注
(注)土壌水分は育成収量に大きな影響を及ぼす最も重要な要因とされている。作物は生育期に水分不足になると成長が抑制され、収量が低下する。一方で、適切な潅水には長年の経験やそれに基づく勘が求められるという側面がある。

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