雨水貯留浸透技術 「レインスケープ®」

株式会社竹中工務店

業種:建設業

掲載日 2023年9月21日
適応分野 自然災害・沿岸域 / 水環境・水資源

会社概要

株式会社竹中工務店は、1899年創立の企業で建築・建設工事、不動産のマネジメントなどの様々な事業を展開している。

気候変動による影響

近年、都市部では、ゲリラ豪雨や台風による水害(内水氾濫)が頻発し、合流式下水道の雨天時越流による水質汚濁が問題になっている。これらの現象は、都市化による雨水浸透面積の減少に気候変動の影響が加わり、今後ますます深刻化すると考えられる。これに対し国や自治体では、雨水の地下浸透を推奨し、下水道などへの流出抑制などの対策を推進している。

適応に関する取り組み

「レインスケープ®」は、自然の多機能性を活かしながら都市の水害問題を解決するグリーンインフラ技術である。豪雨時に地上と地中の貯水部が“雨水貯留・浸透空間”としてピークカットの機能を果たすだけでなく、平常時にも地上部が多機能な植栽空間として機能し、魅力ある景観の創出や生物多様性の向上も可能である。本技術の特長は以下の通り。

1. 豪雨時における下水道や河川に流れる雨水量を抑制する

2019年10月の台風21号に伴う千葉県豪雨では、平年10月の1ケ月分に相当する雨(降水量219 mm)がわずか半日で降った。千葉県印西市にある竹中技術研究所での約2,500 m²の集水域には12時間で548 m³もの雨が降ったが、レインスケープ®により下水道への流出を約43%抑制することに成功した(図1、図2)。

2.水質を改善する・地下へ浸透させる・貯める

レインスケープ®は、豪雨時だけでなく、平時の健全な水循環系の維持・回復に寄与する。まず、雨水に含まれる懸濁物質や有機物、窒素、リンなどを除去して、水質を改善し、その一部を貯水槽や修景池に貯めて植栽への散水などに利用し、残りは地下に浸透させる。地下部のしくみは以下の通りである(図3)。

  • 屋根や敷地から集めた雨水がレインスケープ®へ流入(集水の過程による汚れも含めて流入)
  • レインスケープ®内で水質が改善(懸濁物質、有機物、窒素、リン等の除去)
  • 一部の雨水を回収し、貯留槽や修景池などで貯留
  • 植栽への散水などに活用
  • 貯留しない雨水は、地下へ浸透

3. 景観や生物多様性を守る

地域らしさや気候風土を地上部の植栽デザインに取り込むことにより、平常時にも自然の持つ多機能性を発揮させ、様々な生態系サービスを享受することができる多機能な植栽空間として、以下のように機能する(図4)。

  • 良好な景観づくり: 地域に合った空間デザインを施して憩いの場を創出し、施設の魅力向上に貢献
  • 生物多様性の保全: 地域生態系に調和した植物を植えることで、地域に根差した植生景観を創出し、いきものに生息地を提供
  • 暑熱対策: 植栽空間により蒸発散量が増え、暑熱対策効果も期待
  • 環境教育・地域連携機会の創出: 私たちの生活と自然との関わりを体験し、学ぶ場として、持続可能な社会の形成に貢献

効果/期待される効果等

レインスケープ®が有する機能によって、期待される効果は以下の通りである。

  • 豪雨時に下水道や河川に流出する雨水の量と合流式下水道越流水(CSO–Combined Sewer Overflow)による汚濁負荷を抑制する。
  • 地域に合った空間デザインを施して憩いの場を創出し、施設の魅力向上に貢献する。
  • 地域の気候風土に合う在来種の植物を植えることで、生物多様性保全に貢献する。
  • 緑化によって地表面の熱収支を改善し、暑熱対策効果も期待できる。
集水域全体の断面図
図1 集水域全体の断面図
千葉県豪雨時のレインスケープ®の様子と降水量の経過
図2 千葉県豪雨時のレインスケープ®の様子と降水量の経過
地下部のしくみ
図3 地下部のしくみ
植生空間
図4 植生空間
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