樹木を保全した斜面安定工法「ノンフレーム工法®」

日鉄建材株式会社

業種:製造業

掲載日 2024年11月25日
適応分野 自然災害・沿岸域

会社概要

日鉄建材株式会社は日本製鉄グループの中核企業で、建築・土木分野における鉄鋼製品を中心とした建材総合メーカーである。長年培ってきた技術開発力で、社会インフラを支え、防災・減災や交通安全に役立つ数々の商品を世に送り出している。これからも、それらの商品の安定供給に努めるとともに、新たな商品の開発と普及を目指す。

気候変動による影響

近年、気候変動により、日本では全国的に大雨や短時間強雨の発生頻度は増加している。また、低気圧や台風、前線などによって積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返し、数時間で百ミリから数百ミリの雨を狭い範囲で降らせる集中豪雨の頻発も、土砂災害のリスクを高めている。

適応に関する取り組み

当社は、自然斜面上の木々や緑を残して、3~5mの長さのロックボルト(注1)を多数打設することで斜面を安定させる工法「ノンフレーム工法®」を提供している(図1、図2)。

樹木伐採や法切(注2)を行わず、現況地山のままで施工するという斬新な発想から誕生したこの工法には、従来の技術にはない以下の特長がある。

●景観・環境保全

法切や樹木伐採を行わずに施工するため、施工後も元々の景観・環境が維持できる。また、CO2削減や、生物多様性保全にも貢献できる。

●コスト縮減・工期短縮

斜面を改変せずに施工するため、樹木伐採や切土・法面整形、植生工といった工程が不要となる。さらに、二次製品の支圧板を用いることで、大幅な工期短縮・コスト縮減が実現できる。

●厳しい現場条件でも適用できる

 1. 広い搬入路が不要

  切取土砂(残土)や伐採木の搬出作業がない。また、小型機械で施工できるため、搬入路が設置困難な現場でも施工ができる。

 2. 施工ヤードの制約が少ない

  コンクリートに頼らない工法であるため、圧送設備等が必要なく、小規模な施工ヤードで施工ができる。現場との高低差や距離の制約がない。(ただし、モノレール等の仮設備は必要となる)

●施工時の安全性に優れる

従来技術の場合、法切によって地中応力が解放されたり、雨水が浸透しやすくなり、施工時に斜面の安定バランスが乱れることがある。一方、ノンフレーム工法は、現況斜面のままで施工できるため、施工時にも斜面安定性を乱さない。さらに二次製品の支圧板を用いることから、急斜面作業が省力化でき、作業の安全性向上に繋がる。

効果/期待される効果等

ノンフレーム工法を用いることによって、自然環境・景観を保全して斜面を災害から守ることが可能となる。本工法の環境性能は極めて高く、さまざまな観点において環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献している。例えば、これまで伐採した樹木は廃棄物となっていたが、本工法を用いれば、廃棄物の削減が図れる上に、森林資源として地球温暖化防止にも繋がる。また、鉄筋コンクリート主体の従来工法に対して、本工法は鉄の特性を活かして構造物が小型化されているため、資源使用量の大幅な削減が可能となる。

ノンフレーム工法と従来技術の施工斜面
図1 ノンフレーム工法と従来技術の施工斜面
ノンフレーム工法の構造
図2 ノンフレーム工法の構造

脚注
(注1) ロックボルト:斜面崩壊を防ぐ主要部材の一つで、直径約20~30mmの棒鋼およびその付属品で構成される。これを地中の安定な地盤まで打ち込み、その周囲にグラウトを充填することで、不安定な土塊の崩壊を防ぐことができる。さらに、ロックボルトの頭部に支圧板を取り付けることで、その効果を一層高めることができる。
(注2) 法切:斜面上の不要な土砂を撤去および整形すること。

出典・関連情報