土壌に保水力・保肥力を与える超吸水性ポリマー「EFポリマー」

EF Polymer 株式会社

業種:製造業 / 農業・林業

掲載日2024年8月26日
適応分野水環境・水資源 / 農業・林業・水産業

会社概要

EF Polymer 株式会社はインド生まれで沖縄育ちのディープテックスタートアップ。オレンジの皮など従来捨てられていた残渣をアップサイクルし、100%オーガニックの超吸水性ポリマーの「EFポリマー」を製造・販売している。また、企業との協業により保冷剤や日用品、化粧品などでも自然由来のSAPを使った製品開発を進めている。当社製品の普及を通して、水不足を中心とした環境問題の解決を目指している。

気候変動による影響

世界中で干ばつの影響を受けている人口は全体の45%にもなり、年々その状況は悪化している。また、人類が利用可能な淡水のうち農業が利用している量は70%と言われており、多くの農家が水不足の課題に直面している。
水資源が豊富とされる日本においても、昨今の気候変動により干ばつや不安定な雨の影響を受けている地域が増えており、資源の効率的な利用がより一層重要になっている。

適応に関する取り組み

当社は、世界的な干ばつによる水不足や、肥料価格の高騰といった農家の課題への対策を目的として、100%オーガニックの超吸水性ポリマー「EF ポリマー(注1)」を開発し販売している(図1)。既に流通しているポリマーは、石油由来の製品が多く、幾つかの課題(注2)を抱えていたことから、当社のポリマーはオレンジの皮など作物残渣を原料とする100%オーガニックにこだわり、エコシステムの構築を可能とした。EF ポリマーには、4つの特徴とベネフィットがあり、用途によって粉末と粒状の2種類から選ぶことができる(図2)。

【EF ポリマーの特徴】

  • 超吸水性:農業に最適な自重の約50倍の水を吸収する。
  • 土壌の健全性を保持:土壌の保水力・保肥力を向上し、作物が必要な水分や栄養素をゆっくりと提供できる。
  • 100%オーガニック:有機JAS資材リスト、ECOCERT INPUTの認証を取得している。

【EF ポリマーを使うベネフィット】

  • 100%生分解性
    オレンジの皮などの作物残さを原料に作られているため、100%生分解性となっている。半年間効果は持続し、約1年かけてゆっくりと土に還る。土壌に有害な物質を残さない。
  • 土壌の保水力&保肥力の向上
    農業に最適な自重の約50倍の水分を吸水できる、EF ポリマーが水分や肥料を保持し、長期間土壌に留めるため、土壌の保水力、保肥力が向上する。
  • 有機物ならではの土への働き
    EF ポリマーが土壌中で分解する過程で微生物を活性化し、健康で健全な土づくりをサポートする。ポリマーが吸水や放出を繰り返すことで、土壌に気相ができ、団粒構造の発達を促す。
  • 資源を効率活用して収穫量アップ
    保水・保肥力が向上で作物の成長が促進され収穫量のアップが期待できる。また、土壌の保水力と保肥力が向上することで作物の成長が促進され、収穫量のアップにもつながる。

また当社は、世界各地でEF ポリマーを使った実証実験を行なっている。

実証実験事例目的実験方法結果
トマト(インド)乾燥土壌の保水性向上、収穫量への影響を確認する。ポリマー施用量と潅水量を変えた。潅水を4割減少させても通常より収穫量が増加した。
オクラ(インド)


水の利用効率向上、収穫量への影響を確認する。ポリマー施用量と潅水頻度を変えた。ポリマー無しで灌漑間隔が短い区(3日間)より、ポリマー有りで灌漑間隔が長い区(7日間)の収穫量が増加した。
春とうもろこし(インド)水利用効率・肥料利用効率への影響を確認する。ポリマーと肥料の施用量を変えた。特に降雨が少ない地域での収穫量が増加した。
キャベツの育苗(茨城)灌水頻度の軽減、作物重量への影響を確認する。キャベツの苗にEF ポリマー1%と2%を適用し、「通常灌水区」、「灌水低減区」に分けて苗の生育を調査した。また、苗を圃場に植え付けた後の生育を調査した。「通常灌水区」の苗は、1%区画で22%、2%区画で18%重量がUPした。
「灌水低減区」の苗は、1%区画で32%、 2%区画で28%重量がUPした。

また、当社では農業分野に加え既存の超吸収水性ポリマーが利用されている製品(衛生用品、防災用品等)の環境対応に向けた共同研究を進めている。2023年10月には岩谷産業との共同研究で、EF ポリマーを使った土に還る保冷剤「サイクール」を発表し、既に国内の大手流通で取り扱いがスタートしている。

効果/期待される効果等

果物の皮や搾りかすなど、従来廃棄される過程でCO2を排出していた農業残渣から作られたEF ポリマーを使うことで、水不足環境下でも収穫量を向上しつつ、廃棄物や環境問題の解決につなげることができる。農地での活用は、土壌の保水力と保肥力を向上させる効果があり、約40%の節水、約20%の肥料の節約に加え、収量増加が期待できる。

EFポリマー
図1 EF ポリマー
用途で選ぶことができる2種類のEFポリマー
図2 用途で選ぶことができる2種類のEFポリマー

脚注
(注1)超吸水性(高吸水性)ポリマー(SAP=Super Absorbent Polymer)とは、自重の何倍もの水分を吸水できるように設計された高分子素材のこと。多少の圧力をかけても水分を離さず、吸水・保湿、固化・増粘・放出の機能を有している。
(注2) ・製造・廃棄の過程で多くのエネルギーを必要とし、環境に悪影響なガスも排出する。
     ・農業利用の場合、肥料などと混ぜて使用すると、化学反応を起こし吸水性が失われてしまう。
     ・農業用途やプランターで使う際、吸水力が強すぎて植物から水分を奪い枯らしてしまう。
     ・完全生分解性を有さず、土壌を汚染する成分やマイクロプラスチックを残してしまう。

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