気候変動による物理的リスク分析サービス「Climate Impact」の提供

株式会社ウェザーニューズ

業種:情報通信業

掲載日2024年8月28日
適応分野産業・経済活動

会社概要

株式会社ウェザーニューズは1986年に設立されて以来、気象情報サービスを通して人々の問題解決を支援してきた。海から始まった気象サービスの市場は、空や陸へと広がり、現在は世界約50カ国のお客様へ、24時間365日、気象リスクや対応策を伝えている。現在は企業や自治体の気候変動への適応の支援に注力している。

気候変動による影響

昨今、過去に経験のないような規模の自然災害が多く発生し、気候変動が経済に与える影響が懸念されている。そのため、企業は気候変動の事業リスクや機会を把握し、経営戦略に織り込むことで事業を安定的に成長、継続させることが求められている。一方、気候変動予測データは取り扱いや解釈が難しく、また拠点ごとの気候変動の影響を把握しづらいことが課題となっている。

適応に関する取り組み

当社は、オフィス、工場、店舗などの拠点における気候変動によるビジネスへの影響を分析、評価する気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」の提供を2021年2月より開始している(図1)。

「Climate Impact」は、気候変動対策に積極的に取り組む事業者向けに、RCP(代表濃度経路)(注1)などの気候変動シナリオをもとに、各拠点の気候が2100年までにどのように変化するのかを分析する気候変動シナリオ分析と、気候変動が事業に与えるリスク評価を提供するものである。

気候変動シナリオ分析では、これまでの当社のサービスノウハウと独自の解析技術を活かし、企業の拠点ごとに中長期の気候変動の影響分析が可能となっている。リスク評価では、過去に発生した災害の事例分析で得られた気象の基準をもとに、大雨による自然災害や、気温上昇による生活への影響および農作物の収量など、気候変動によるリスクを評価する。

当社は、環境省と「気候変動適応の促進に関する連携協定」を2022年6月に締結し、環境省と気候リスク情報の整備・提供の促進に向けて連携することで、環境省の専門的なノウハウを「Climate Impact」に反映させ、本サービスを高度化している。その後、大雨・強風・高温などの気候リスクを高精度に分析したいという企業のニーズに応えるべく、当社独自の気候解析技術を導入し、実況データを用いたバイアス補正で、従来よりも高精度に大雨・強風・高温によるリスク分析を可能とした。

さらに、気候変動が事業に与える影響金額を算出する「財務影響額」の項目を追加した。本項目は、「Climate Impact」で高精度に定量分析したさまざまな物理的リスク(大雨・洪水・地震・高潮による浸水など)と対象拠点に関するビジネスデータを参考に、年間の財務影響を算出するものである(図2)。加えて、「Climate Impact」をグローバルに対応させ、海外拠点の分析も可能にした。これによって国内外を問わず、事業者のオフィス、物流拠点、工場、店舗など、拠点ごとに洪水・大雨・強風・気温・水ストレス・干ばつなど10種類以上の異なるリスクを抱える拠点でも、100拠点以上を一度に分析できる(図3)。

効果/期待される効果等

本サービスの提供を通して、気候変動の影響による事業リスクや機会の把握と、気候変動への緩和策や適応策の推進を可能とする。

また、リスク分析・算出結果は、TCFD提言(注2)に基づく情報開示や統合報告書や有価証券報告書等への掲載、ステークホルダーへの説明、投資の費用対効果の把握、設備投資の際のエビデンスとしての利用が期待される。

気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」画面イメージ
図1 気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」画面イメージ
気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」による財務影響額分析
図2 気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」による財務影響額分析
気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」で多拠点を一度に分析
図3 気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」で多拠点を一度に分析

脚注
(注1) RCP(代表濃度経路)シナリオ:温室効果ガスの排出量が、将来どの程度になるかを想定した排出シナリオ。RCP2.6は、排出量の最も低いシナリオ。RCP8.5は最大排出量に相当するシナリオ。
(注2) TCFD:気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」。2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する情報の開示を推奨。

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