世界初の台風でも発電可能なマグナス風車によるレジリエントなインフラ構築

株式会社チャレナジー

業種:製造業
掲載日 2019年5月28日
適応分野 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活

会社概要

株式会社チャレナジーロゴ

2014年に創業したモノづくりベンチャー企業。「風力発電にイノベーションを起こし、全人類に安心安全な電力を供給する」をビジョンに掲げ、通常の風速から発電を開始し、従来の風車では実現出来なかった、台風などの強風環境下においても発電可能な世界初の「垂直軸型マグナス式風力発電機」(以下、マグナス風車)を開発している。2016年より沖縄県本島にて実証機の試験を開始し、2018年8月からは出力10kWの実証機を石垣島にて稼働させた。2020年から本格的な量産販売を開始する予定である。研究開発では、NEDOや沖縄県からの支援を受けており、更に経済産業省が国内トップのベンチャー企業を支援する「J-Startup」プログラムにも選出されている。2018年にポーランドで開催されたCOP24(気候変動枠組条約第24回締約国会議)のジャパンパビリオンにも日本を代表する脱炭素技術として出展した。

気候変動による影響

気候変動の影響による異常気象が既に表面化しており、今後は更に深刻化することが予測されている。なかでも、台風をはじめとした熱帯低気圧の勢力は地球温暖化の影響により更に強くなると言われている。既存の風力発電は強風に対して脆弱であり、風車の故障を引き起こす可能性が高い。今後、再生可能エネルギーが電力インフラの根幹を担うことが期待される中で、気候変動への脆弱さを克服し、高い信頼性を備えたインフラを構築しなければならない。

適応に関する取り組み

チャレナジーの開発するマグナス風車(図1)は、気流中で円筒翼を自転させることで発生する「マグナス力」により回転する。風速に応じて円筒翼の自転数を適切に制御することで風車全体の回転数を制御できるため、突風や強風による暴走を起こしにくい。更に、垂直軸型を採用することで、全方位の風に対して発電が可能であるため、低気圧が引き起こす乱流にも強い。マグナス力と垂直軸型を組合せた風力発電機を実用化した企業は当社が世界初であり、周辺特許も全て保有している。

具体的な取り組みとして、台風の襲来が多いフィリピン共和国において合弁会社を設立し、国営電力公社等と協働を進めている。離島などの遠隔地域に対し、台風襲来時でも安定した電気の供給と、衛星通信技術とを併せて、継続した通信サービスと防災情報の提供を行う(図2)。また、遠隔地において課題となる風車の維持管理を、衛星通信を活用してリアルタイムで把握するアフターサービス網を構築する。

効果/期待される効果等

チャレナジーの風力発電機によって、台風のような風況下でも安全に継続的に電力供給できることが期待される。離島においては、台風により海が荒れて長らく船が欠航した場合に、島内の備蓄ディーゼル燃料を使い切ってしまい電力不足が生じる。一方で、マグナス風車では、台風が頻繁に襲来するような厳しい風況下においても、高い設備利用率と低い故障率を達成し、安定した発電量を確保できる。こうした特徴は、土地の制約から他発電システムを導入することができず、ディーゼル発電に頼らざるを得ない離島などの遠隔地における電力供給の不安定性を解決できる。

更に、衛星通信技術との組み合わせにより、避難情報システム並びに外部との支援要請手段を確保することで災害後の復興を迅速化でき、レジリエンスの構築に貢献する。本技術は、日本国内だけでなく、世界の台風・サイクロン・ハリケーンの通り道となっている国々の中でも、脆弱な島嶼地域に貢献できる適応策である。

図1 垂直軸型マグナス式風力発電機
図1 10kW垂直軸型マグナス式風力発電実証機
図2 緊急時における災害対策システムのイメージ図
図2 緊急時における災害対策システムのイメージ

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