熱中症対策への新たな期待-「深部体温」に着目した「ポカリスエットアイススラリー」の開発

大塚製薬株式会社

業種:製造業(化学工業 / 医薬品製造業)
掲載日 2020年3月11日
適応分野 健康

会社概要

大塚製薬株式会社ロゴ

1964年設立。世界の人々の健康に貢献することを企業理念に、「疾病の治癒」から「日々の健康増進」までを目指したトータルヘルスケアカンパニーとして、事業活動を営んでいる。「世界の患者さんへ新しい治療薬を提供する医薬関連事業」と「健康な人をより健康にする製品を提供するニュートラシューティカルズ関連事業」の両輪で、革新的で創造性に富んだ製品の研究開発、生産、販売を行っている。

気候変動による影響

近年夏季の気温上昇が大きな社会問題となってきている中、体温調節機能が低下している高齢者や、体温調節が未発達な子供、活動強度の高いアスリートや労働者など、暑熱環境の影響を受けやすい方々に対する熱中症対策は大きな課題となっている。

適応に関する取り組み

■製品・技術

大塚製薬株式会社は、元々病院で使用される点滴液の製造を手掛けていたことから、製薬会社の知見を生かして「汗の飲料」をコンセプトに、1980年にポカリスエットを開発。発売以来、発汗によって失われた水分・電解質(イオン)補給に関する研究を継続し、様々なシーンでの有用性について科学的根拠を蓄積してきた。2018年には、これまでの熱中症研究で蓄積したノウハウをもとに、「深部体温(体の内部の温度)」の上昇を抑えることに着目した「ポカリスエットアイススラリー」を商品化(図1)。アイススラリーとは、微細な氷と液体が混合した流動性のある飲料で、電解質補給と身体冷却を同時にでき、水の比熱に加えて固体(氷)から液体への相変化時に熱が吸収されるため、液体の水のみよりも身体冷却効果があると考えられている。常温保存が可能な液体を凍らせてスラリー状にする独自の技術によって「飲める氷」を実現し、水分補給だけでは解決できない熱中症の課題に対して、身体を芯から冷やすという、新たな解決策を提案している(図2・図3)。

図1 アイススラリー開発の歴史
図2 アイススラリーの身体冷却効果
図3 アイススラリーの特徴

■活動内容

大塚製薬では、熱中症対策の知見やノウハウを生かした活動として、社員が現場に出向いて行う熱中症セミナーを25年以上続けており、スポーツ実施者や指導者だけではなく、暑熱環境下で働く方々、高齢者にも熱中症対策の重要性を知る機会を広く提供している。また、全国中学校体育大会、全国高等学校総合体育大会、国民体育大会等のスポーツ大会での支援を通じて、積極的な水分・電解質(イオン)補給を促進している(図4)。さらに、近年では、各都道府県と連携協定を締結し、自治体と協働で熱中症対策セミナーを実施したり、ポスター・冊子等の媒体を用いた情報提供など、官民協働での熱中症対策に取り組んでいる。

図4 熱中症啓発活動の風景

効果/期待される効果等

十分な水分補給に加えて、ポカリスエットアイススラリーを活用する事で、熱中症発症の根本的な要因である深部体温の上昇を抑えるという新しい概念と解決策を提案し、これまで対策が困難だった方々を含め、具体的なリスク喚起と対応策を提供することで、熱中症ゼロを目指した活動を行っていく。大塚製薬は、製薬企業として蓄積した科学的根拠と新しい視点を持って、引き続き熱中症の更なる減少を目指している。

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