作業者安全モニタリングシステムの開発と暑熱環境対策(熱中対策)

戸田建設株式会社

業種:建設業
掲載日 2021年5月13日
適応分野 健康 / 産業・経済活動

会社概要

戸田建設株式会社ロゴ

1881年(明治14年)の創業以来、戸田建設は学校や病院をはじめとする暮らしに寄りそう建物から国の重要文化財やインフラなど、様々な施工に携わる総合建設会社として実績を重ねてきた。さらに、近年、地球規模の課題に国際社会が連携して取り組むことが求められている中で、当社グループはこれまでも、環境保全や社会インフラの整備、防災・減災対策、将来の建設労働者不足懸念への対応など、建設業に関連する課題を中心に、ステークホルダーと連携・協力しながら課題解決に向けて取り組んできた。各業界をリードする環境保全の取り組みを行う企業として、当社は2010年にエコ・ファースト企業として環境大臣より認定を受けるとともに、優れた気候変動対策を行う企業として世界的な評価を受け2016年、2018年、2019年の3回にわたり、英国CDPよりClimate Change A List企業として認定された。当社グループは2021年に創業140周年を迎え、これまでの歴史を糧に、新たなビジネス、領域へと挑みつづける。

気候変動による影響

建設業界では、国内の人口減少に起因する建設就労者の減少や現場の作業者の高齢化が進んでおり、今まで以上に安全で快適な作業環境を整備する必要性が高まっている。さらに近年、夏の暑さが厳しくなっており、作業者が熱中症の発症や過労・体調不良といった状態になるまで作業環境の悪化に気がつかないことが建設現場で問題となっていた。このような中、気候変動の影響から日本各地でも気温の上昇や異常気象による災害が相次ぐようになり、例年以上の猛暑となった2018年には西日本豪雨という大規模な災害が酷暑の時期に発生し、復旧作業従事者が過酷な労働環境下で健康状態を悪化させるという二次災害も起こった。

このため、建設業界においても熱中症対策をとりながら建設現場で作業者の健康・安全管理を行うことが一層重要なテーマとなっている。

適応に関する取り組み

戸田建設は、株式会社村田製作所と共同で、2018年8月より改良を進めてきた建設作業者の生体情報や周囲環境(作業環境)をヘルメット取り付け型センサデバイスでリアルタイムに監視する「作業者安全モニタリングシステム」を開発し、2019年6月に販売を開始した。

本システムは、主にセンサデバイス、ゲートウェイ、クラウドから成る(図1)。センサデバイスは、既存のヘルメットの内バンドに装着する生体情報測定部と、ヘルメット後部に装着する外部環境情報測定部で構成されており、前者では脈拍や活動量(加速度)、後者では温度、湿度を測定する。ゲートウェイはセンサデバイスから特定小電力無線を利用して送られてきたデータを受信・集約し、クラウドに送信する。クラウドでは、ゲートウェイを介して送られてきたデータを独自のアルゴリズムで解析し、作業者の状態判断結果に応じ、アラートを送信する。

本システムは戸田建設の施工現場にて、実証確認を実施している。ヘルメット内部に取り付ける生体情報測定部の位置や大きさの最適化、突起物の多い建設現場でぶつかりにくいように外部環境情報測定部の小型化などの改良を重ね、作業者が違和感なく装着できるようなセンサデバイスを完成させた(図2)。また、建設現場における無線の電波状況や作業者の動線、ゲートウェイの配置なども検証済みであり、2019年5月には作業者 200 名規模の建設現場で本格稼働を開始し、2020年度では1000名以上の作業者が利用している。

図1 作業者安全モニタリングシステムの概略
図2 センサデバイスをヘルメットに装着した状態

効果/期待される効果等

この作業者安全モニタリングシステムを現場の作業者が装着し、何らかの異常が発生した場合には、モニタリング担当者がアラート情報確認画面から異常の発生時刻・作業者氏名・異常内容が確認できるため、リアルタイムで作業者に適宜休憩を取らせるなどの指示を送ることが可能となる。本システムを今後さらに様々な労働環境に広く普及させることで、熱中症対策をはじめ、健康被害が生じることを未然に防ぎ、作業者の安全の確保をより確実なものとすることができると期待されている。

※本システムは医療機器ではありません。疾病の診断や予防、予知を行うものではありません。

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