森林資源を利用して量産化した高濃度フルボ酸による農地改善

国土防災技術株式会社

業種:学術研究、専門・技術サービス業/農業、林業
掲載日 2022年2月15日
適応分野 農業・林業・水産業

会社概要

国土防災技術株式会社

「正しい開発は、正しい防災対策を前提とする」として、防災対策を専門とする国土防災技術株式会社は昭和41年5月2日に設立された。「土と水と緑に関する優れた技術を追求し住みよい国土の建設と国民の福祉に貢献する「永遠の会社」を目指す」ことを経営理念としており、研鑽を積んだ高度な技術を有する技術者による全国ネットワークを組織し、コンサルティング、工事・施工管理、研究開発の3つの技術で事業展開を図っている。

気候変動による影響

現在、気候変動によって世界の灌漑地の20% (6,200万ha)及び、75ヶ国の乾燥地帯や半乾燥地帯の平均2,000ha/年の農地で、塩類集積(注)や土壌劣化が進行することにより、農地面積が年々減少している。また、世界全体では気温上昇により、農産物(コメ、小麦、大豆、トウモロコシ)の収量低下が予測されている。

適応に関する取り組み

当社は、気候変動によって劣化した農地や土壌劣化が進行している農地の環境変化の抑制に貢献する高濃度フルボ酸の植物活性材剤「フジミン」(以下フジミン)を開発した。フルボ酸は、吸収されにくい物質を吸収されやすい形に、また体内の有害物質を排出しやすい形に変える「キレート効果」に優れた物質である。肥料吸収の効率化に加え、土壌pHの緩衝作用、塩類の濃度障害抑制、光合成の活性化、及び土壌の団粒化促進、植物の頑健性向上といった効果がある(図1)。

例えば、土木や造園分野では、斜面や植生マット、酷暑によって乾燥し発芽不良となったグラウンド等を対象にフジミンを散布したところ、植物への肥料成分の吸収効率が向上し、早期に緑化することが可能になった。農業分野で報告されている事例として、有機農法でほうれん草を栽培している農地にフジミンを散布したところ、散布していない箇所に比べて茎や根が太くなり葉も大きく成長した(図2)。また、海外での事例として、パラグアイのトマト農園とゴマ農園にフジミンを散布したところ、トマト農園においては成長が速くなり、色味が濃く成熟したものが多く収穫できた(図3)。ゴマ農園においては、茎や根が太く長くなり、結実数が増加した。その結果、収穫量が散布していない箇所に比べて約3倍増加した(図4)。

フルボ酸は、通常は動植物によって生産された有機物が微生物により分解された腐植土壌に存在するが、自然界では微量にしか生産されない資源である。その多くは、海外の採掘資源から抽出されているため、環境破壊や資源枯渇の可能性が懸念されていたが、当社では、国内で産出された木質チップと有機酸を利用し、フルボ酸を高濃度に量産化する技術を確立した。

「フジミン」は、土木や造園、農業分野に活用される他、2018年度JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択されたことにより、海外への展開も進んでいる。

また、2019年には、国際連合工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所が提供するサステナブル技術普及プラットフォーム〈STePP〉(図5)に登録された。登録には基準があり、開発途上国・新興国で適用できるか、競合技術より優れているか、持続可能性があるか等の技術面のみならず、当該企業の事業姿勢も評価。開発途上国・新興国での持続的な産業開発に役立つ、優れた技術として認められたことの証といえる。

効果/期待される効果等

世界では様々な悪環境により土壌改良を必要とする地域が多く存在し、塩類集積地だけでも世界の農地の4分の1を占めている。「フジミン」には強塩類集積地での土壌改良実績があることから、今後更なる海外への展開も期待されている。

フルボ酸の効果イメージ
図1 フルボ酸の効果
ほうれん草の生育比較
図2 ほうれん草の生育比較
パラグアイにおけるトマトの色味の比較
図3 パラグアイにおけるトマトの色味の比較
パラグアイにおけるゴマ農園の生育比較
図4 パラグアイにおけるゴマ農園の生育比較
STePP
図5 STePP

脚注
(注)塩類集積地とは、灌漑水に含まれている塩分または本来土層に含まれている塩分が地下水位の増加に伴って毛管上昇し、土壌面蒸発によって塩類のみ地表に集積した地帯のこと。集積する塩類は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどである。

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