12℃の蓄冷材で手のひらを冷却する新しい暑熱対策

シャープ株式会社

業種:製造業
掲載日 2022年4月28日
適応分野 健康

会社概要

シャープ株式会社ロゴ

【シャープ株式会社】
シャープ株式会社は、AV機器、家電、携帯電話/通信/情報機器、液晶/電子デバイス、エネルギーシステム、事務機器など、幅広い事業展開を行っている電機メーカーであり、創業者早川徳次の言葉「他社がまねするような商品をつくれ」に従い、1912年の創業以来、次の時代のニーズをいち早く形にしたモノづくりに取り組み、社会に貢献し、信頼される企業を目指している。

【TEKION LAB(テキオンラボ)】
TEKION LABは、シャープ株式会社 Smart Appliances&Solutions事業本部で活動する社内ベンチャーであり、シャープが液晶材料の研究で培った技術をベースに開発した蓄冷材料(注1)を用いて様々な新しい試みにチャレンジしている。

気候変動による影響

近年、気候変動の進行に伴い夏の気温が上昇傾向にあり、暑熱対策が重視されている。暑熱対策の1つである「体を冷やす」対策は、体調を崩す前の予防策としてではなく、熱中症を発症した後の応急処置として普及しているのが現状である。

適応に関する取り組み

TEKION LABでは、体調を崩す前の予防策として体を冷やす「プレクーリング」(注2)に着目し、新しい暑熱対策の開発を試みた結果、12℃に保つように調整した“適温蓄冷材”(注3)をパック状にし、手のひらに当てて(注4)冷却することで体温の上昇を抑える「TEKION暑熱対策グローブ」を開発(注5)した(図1)。検証実験(注6)にて、暑熱環境下で運動を始める前に30分程度蓄冷材でクーリングした場合と、しなかった場合を比較した結果、深部体温(身体の内部の温度)に差が出る結果となった(図2)。
なお、適温蓄冷材の温度設定を12℃としたのは、これまで手のひらの冷却で推奨されてきた「20℃に保持された水に手を浸す」条件と同じ効果を得ることができ、かつ、痛みを感じない冷却ができるためである(図3)。

効果/期待される効果等

激しいスポーツや暑熱環境での作業を実施する前(体調が悪くなる前)に予め深部体温を下げておくことで、熱中症を発症するリスクを低減させることが期待される。また、運動時以外の小児や高齢者の暑熱対策としても手軽に活用することができる。

デサントジャパン株式会社から発売されたTEKION暑熱対策グローブ「コアクーラー」
図1 デサントジャパン株式会社から発売されたTEKION暑熱対策グローブ「コアクーラー」
(右下は「コアクーラー」に使用する12℃「適温蓄冷材」)
プレクーリングによる深部体温上昇抑制効果
図2 プレクーリングによる深部体温上昇抑制効果
温度と冷覚・温覚・痛覚の関係
図3 温度と冷覚・温覚・痛覚の関係

脚注
(注1) 材料の温度を一定時間定温に保つ機能を有する材料のこと。
(注2) 体調が悪くなる前に“深部体温(身体の内部の温度)”を下げておくことで、熱中症が発症するリスクを低減する予防策のこと。
(注3) “適温蓄冷材”は、シャープが液晶材料の研究で培った独自の蓄熱技術を活用している。当該材料を活用すると融解の温度を-24~+28℃まで自在に調整可能であり、目的に応じて融点が異なる材料を組み合わせることで、最適な温度を保つことができる。
(注4) 冷却部位に選定した手のひらには、動静脈吻合という体温を調整する特殊な血管があり、この血管を通る血液を冷却することによって、冷えた血液が体内を巡り、体を内部から冷却する効果が高く、効率よく冷却することができる。
(注5) 株式会社ウィンゲート、デサントジャパン株式会社との共同開発となる。
(注6) (独)労働安全衛生総合研究所とシャープにより実施。

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