産学連携による「耐水圧型」耐水害住宅の開発“避難所生活を回避できる家”

ミツヤジーホーム株式会社

業種:建設業
掲載日 2022年6月30日
適応分野 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活

会社概要

ミツヤジーホーム株式会社ロゴ

ミツヤジーホーム株式会社は、創業当初から耐震・断熱性能を重視し、省エネで快適な住空間を提供する住宅メーカーで、快適な地下室施工と高気密高断熱住宅に実績がある。地球環境にやさしく、世代をつなぐ快適な住空間を創造することを目指し、住宅の設計・施工及び販売等を通じて顧客の夢の実現を支援している。

気候変動による影響

気候変動に伴う自然災害の激甚化が予測されており、2019年10月の台風19号によって発生した千曲川の氾濫では、半壊以上の住宅は3,922世帯に及び、床上床下浸水等の大きな被害が発生した。長野県の被災廃棄物(注1)の総量は211,804tとなり、処分による地球環境への悪影響が懸念される。
また、被災時の避難所生活は避難者に劣悪な避難生活を長期に亘り強いることになり、災害関連死等人命にも大きな影響がある。さらに被災した住宅の再建資金の確保の面からも、如何に少ない金額で住宅再建が出来るかは、今後の災害対策を念頭に置いた総合防災住宅の普及が重要である。

適応に関する取り組み

長野県にある当社は、永年「地下室のある住まい」を手掛け、構造躯体の止水性能と断熱性能を有する快適な地下室住宅を提供してきた。台風19号による大規模洪水災害を契機に3メートルの氾濫水位への耐水害住宅として、当社独自の地下室工法技術を基本に据えた“災害に強く避難所生活を回避できる家”(図1)を2020年3月より信州大学と共同研究・開発を開始した。
2020年10月に信州大学工学部キャンパス構内で実施した一般公開実験において、耐水害住宅を模したRC造の構造物(1.8×2.7×3.5㎥)内部に、3mの高さまで水を張り、水圧による壁や窓・ドアの変形を観察し、水漏れや破壊されていないことを確認した。
このような研究結果にもとづき、構想から約2年を経て、氾濫水位3mにも対応出来る「耐水圧型」耐水害住宅を2021年10月に完成させた(図2)。

この耐水害住宅は以下の3つの機能を有する:

  1. こわれない(水圧で破壊されない「壁式鉄筋コンクリート造」)
  2. 水が入らない(水圧に耐え、水の侵入を防ぐ「窓・玄関扉」、排水管の逆流防止装置、を使う)
  3. 浮かない(浮力に対応した重量を保ち、家が流されるのを防ぐ)
また、この耐水害住宅は、インフラが使用不能となったときにも、「避難所生活を回避」できるように、生活水として使用できる中間貯水タンクや、太陽光と蓄電池を設置し非常電源を確保している。加えて、万一の1階の浸水時の際にも生活機能を確保する設備機器はすべて2階以上に設置する間取り設計をプランニングしている(図3)。

効果/期待される効果等

実証実験された後、被災地に耐水害住宅第1号が建設されたことは大変意義深いことであった。さらに建築物における省エネ、耐震、耐風、防火、盗難対策等、最高の住宅性能を備えた総合防災住宅として誕生したことも大きな成果である。このような耐水害住宅が全国的に普及することにより、人的、物的な被害を少なくするだけでなく、避難所生活の回避は、人の命を守り、自治体の避難所運営経費、被災地復旧の迅速化や災害ごみによる環境への悪影響の軽減が期待される。

3メートルの氾濫水位に耐え避難生活を回避しているイメージ
図1 3メートルの氾濫水位に耐え避難生活を回避しているイメージ
(左)耐水害住宅第1号完成写真 (右)信大 共同研究メンバー
図2 産学連携による「耐水圧型」耐水害住宅と共同研究メンバー
(左)耐水害住宅第1号完成写真 (右)信大 共同研究メンバー
(左)1階の間取り (右)2階の間取り
図3 耐水害住宅の間取りの例
(左)1階の間取り (右)2階の間取り

脚注
(注1) 被災した建物、家具、生活用品等の廃棄物のこと。

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