脚注
(注1) 機会損失の例:残暑が想定以上に長引くことにより、暑い日によく売れるはずの商品の在庫が尽きること。
(注2) 「eco×ロジ プロジェクト」は経産省補助事業「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」(2014年度~2016年度)を経て、2017年4月から本格的にスタートした。
商品需要予測サービスの提供
一般財団法人日本気象協会
掲載日 | 2022年8月10日 |
---|---|
適応分野 | 産業・経済活動 |
会社概要

一般財団法人日本気象協会は1950年の設立以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行っている。当協会の最大の強みは調査解析技術とリアルタイムに情報を提供できる技術を併せ持つことである。世の中の変化に対して、強みを生かし法人や個人のお客様とともに、「自然界と調和した社会」の創生を目指している。
気候変動による影響
気候変動は、気温上昇や降水パターンの変化などの長期的な変化に加え、猛暑、短時間強雨などの短期的で極端な気象現象も引き起こし、事業活動に様々な影響を及ぼしている。今後は、気候変動に適応し、また環境に配慮した新たなビジネスを展開することが、企業の長期的な成長を支える原動力になる。
適応に関する取り組み
残暑が想定以上に長引くことにより、暑い日によく売れる商品の在庫が尽きてしまう(機会損失(注1))ことをなくすために、商品が売れる気温変化のタイミングを事前につかみたいといニーズがある。このようなニーズに対し、気象やPOS(販売データ)などのビッグデータをAI等の最新技術を使い解析することで、未来に必要なモノの量を予測するのが当社の「商品需要予測サービス」である。
- 気象条件と商品売り上げの相関を見える化
- どのような商品が気象の影響を受けるのか、関係性を調査
- 商品別の需要予測モデルを作成
- 解析に必要なデータの収集・整理を行い、解析・需要予測モデルの構築
本サービスを利用することで、お客様の製造・販売の計画や出荷量の判断を、より合理的かつ効率的に行うことが可能となる。例えば、メーカー向けには、商品データ(出荷量やPOS)と気象データを解析して、適正なタイミングで適正な量を製造・出荷・販売するために需要予測情報を提供している(図1)。また、アパレル・メーカー向けには、複数商品の売上データと気象データを解析し、時期別、エリア別に気象と商品の売上の関係を可視化した情報を提供している(図2)。
効果/期待される効果等
気象の知見、気象予測技術、気象解析技術とAI技術を活用し、高度な需要予測を行っており、その結果、無駄な在庫の削減、欠品の回避、生産計画の効率化、価格調整による売上の最大化等の成果が得られる。
また、サプライチェーン上の企業や部署において予測情報を共有することで、天候不順による売り上げ減少に応じた配送トラックの手配など、サプライチェーンの効率化が可能となる。この活動を「eco×ロジ プロジェクト(注2)」と位置づけ、持続可能な社会の実現を目指す活動も行っている(図3)。具体的な事例を以下に記載する。
品目等 | 事例内容 |
---|---|
冷やし中華つゆ | 体感温度を取り入れることで需要予測の精度が向上。夏の終わりに廃棄ロスが多くなる冷やし中華つゆの在庫削減に成功。 |
豆腐 | ニーズに合わせ、豆腐の需要を指数化。生産計画の効率に繋がり、食品ロスの削減に成功。 |
飲料 | 需要予測に基き2週間前に増産の意思決定をすることで、欠品の回避に成功。 |
船舶(飲料メーカーにおける物流) | 飲料の需要予測によって輸送計画を早めることで、船舶での大量輸送に切り替えることに成功。 |
このように、商品の需要予測は、作りすぎによる食品ロスや商品の廃棄量を減らすことが可能となる。また、計画性をもって商品を運搬・供給することが可能となり、不要なCO₂ の排出量を削減することも可能となる。


