脚注
(注1) ステンレスワイヤと耐候性ポリエステル樹脂で作った網の中に現地の石を詰めて使用する。
(注2) 法面の土砂流出を防ぐもので、法面に高強度鉄筋杭を打ち込み、ステンレスネットにより土留めを行う。
(注3) 2枚の高耐性フェルトで棒状の発泡スチロールを挟み込むように縫製することで波型の凸凹構造を有するマット。
(注4) アセビは育成方法により食害防止効果が異なるため、植栽による既存の生態系への環境負荷軽減も目的として三重県内の造園業者と連携し、地域種によるポット苗木の量産化技術を確立した。
KODOBOKU(小土木)技術を活かした敷地保全・災害復旧
株式会社シーテック
掲載日 | 2022年9月1日 |
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適応分野 | 自然災害・沿岸域 / 自然生態系 |
会社概要

株式会社シーテックは、1962年会社創立以来、中部電力グループの中核企業として、電力・情報通信・土木部門の建設保守業務を通じて、電力の安定供給の一翼を担っている。また、再生可能エネルギー事業にも積極的に取り組み、低炭素社会の実現に向けて努力を続けている。さらに、デジタル技術を用いた新技術の積極的な採用にも取り組んでいる。
気候変動による影響
近年、気候変動による影響で局地豪雨が増加傾向にあり、山間地などの傾斜地では、降雨による表土の浸食又は土砂崩れなどが発生している。
また、西日本を中心として、ニホンジカによる樹木の食害が顕著であり、樹木が育たないことで更なる表土の浸食を引き起こすなど山林の荒廃が加速度的に進展している。
適応に関する取り組み
当社は、車両や重機の搬入が困難な送電線鉄塔が設置された斜面において、豪雨による斜面崩壊等を防止する様々な技術を開発し「KODOBOKU(小土木)技術」として集成してきた。本技術で使用する資材は何れも軽量で人力による運搬が可能で耐久性が高い。また、斜面上の表面流の動向をシミュレーションする技術も考案し、現場環境に応じて、個々の技術(下記①~➃)を組み合わせた施工が可能となっている。
- ① ストーンバッグ(図1)(注1)
斜面に敷き詰めたストーンバックが、流れる雨水を分散し水勢を抑制することで、雨水による地表面の浸食を防止する。その他、浮石を固定するなどの敷地保全としての活用、軟弱地盤上でも足場を確保し避難路や巡視路を設けることや、斜面上での階段設置に活用することができる。 - ② 鋼製しがら(図2)(注2)
雨水による土壌浸食の防止に使用できるほか、地中浸透流の流れは維持することで緑化回復による地表面の安定化が可能である。 - ③ 雨水誘導マット(RLマット)(図3)(注3)
波型の凸凹構造を有する雨水誘導マットが、流れる雨水を分散して排水させて水流抑制することで、雨水による地面への浸食を防止する。 - ④ 獣害対策樹アセビ(注4)
常緑性低木の在来種のアセビは関東から西の本州太平洋岸に広く分布し、鹿の不指向性植物であり、植栽後の管理が容易である。このアセビを敷地に植えることで、緑化植物の食害による斜面崩壊を防ぐことができる。
また、「KODOBOKU(小土木)技術」による斜面対策工の表層崩壊と土砂流出抑制効果を定量的に検証するため、宮崎大学工学部土木環境工学プログラムの福林研究室と宮崎県内で共同研究を実施している。
効果/期待される効果等
「KODOBOKU(小土木)技術」は、現場や状況に応じた組み合わせを可能とし、作業道路など仮工事が不要のため、法面保護や崩落対策、非常災害時の応急復旧工事、森林保全並びに森林再生など様々な場面で役立つことが期待される。
また、本技術は、「第4回インフラメンテナンス大賞(令和3年1月)」のメンテナンス実施現場における工夫部門において、経済産業省優秀賞を受賞している。


