河川の出水を予測し、河川工事の安全性を確保するためのシステム

大成建設株式会社

業種:建設業
掲載日 2022年12月15日
適応分野 自然災害・沿岸域

会社概要

大成建設株式会社ロゴ

大成建設は、1873年創業の建設会社である。日本の近代化の時代から、街づくりや社会資本の整備、大規模な自然災害からの復旧・復興、国土強靭化に携わってきた。グループ理念「人がいきいきとする環境を創造する」を追求し、自然と調和した、次世代の夢と希望に溢れた社会づくりに取り組んでいる。

気候変動による影響

近年、気候変動の影響により、河川流域では大雨に伴う出水被害が多発している。河川の工事においては、河川の増水により人員だけでなく建設機械や資材も被害を受ける場合がある。河川の増水が懸念される場合には、安全に退避させることができるよう、工事関係者は河川水位の変化を早期に把握する必要がある。

適応に関する取り組み

当社は、急激な水位上昇を予測することで、洪水が懸念される際に、工事関係者へ警報を配信する河川工事用出水警報システム「T-iAlert River」を2008年に開発した(図1)(注1)。「T-iAlert River」の特徴は下記の通りである。

【「T-iAlert River」の機能】

  • 降雨、河川水位、河川流量の観測・予測データ(国土交通省および気象庁)を自動取得し、工事地点の河川水位を解析・予測
  • 観測データと河川水位の解析結果を自動配信
  • 予測水位が危険水位を超えた場合には、警報を携帯メールなどへ配信

2022年には「T-iAlert River」に新機能を追加した。新機能は、過去の天気実況や予報に基づき、AIを活用して24時間先までの河川水位を予測するものである(図2)。

この新機能追加によって、下記の効果が期待できる。

  • 近隣河川観測所での水位データがなくても水位予測が可能
  • 従来のシステムよりもさらに早期に人員や建設機械・資材などを退避させることが可能
  • 出水後の復旧タイミングを見越して工事再開に向けた準備や作業に早い段階から着手可能

効果/期待される効果等

2004年~2011年の期間、石狩川頭首工(注2)新築工事において「T-iAlert River」が適用された。2009年7月に石狩川で大規模出水が発生し、施工現場では仮締切工天端(注3)の0.13m下まで水位が上昇した(図3)。「T-iAlert River」はこれを予測して29時間前に警報を配信しており、仮締切工内の人員、重機及び資材を予め退避させ、対策を講じることで被害を逃れることが出来た。

 T-iAlert Riverの概要
図1  T-iAlert Riverの概要
新機能の予測手順
図2 新機能の予測手順
2009年7月の石狩川出水の状況
図3 2009年7月の石狩川出水の状況

脚注
(注1)本システムは高精度な出水予測システムの開発が確実な退避体制確立に繋がり、技術発展に大きく寄与すると評価され、2014年には全国土地改良工事等学術技術最優秀賞((公社)農業農村工学会)を受賞している。
(注2)頭首工とは農業用水を河川から取水するため、河川を堰き止めて水位を上昇させ、水路へ流し込む施設(水門、堰堤、土砂吐等)のこと。
(注3)天端(てんば)とは、堤防の一番高い面。天端は道路として利用されている所もある。

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