事業継続管理(Business Continuity Management: BCM)の整備

株式会社ディスコ

製造業
掲載日 2021年10月28日
適応分野 自然災害・沿岸域 / 健康 / 産業・経済活動

会社概要

株式会社ディスコ

ディスコは半導体製造プロセスに必須となる精密加工装置と精密加工ツール(加工用砥石)を製造販売するメーカーである。「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術によって遠い科学を身近な快適につなぐ」をミッションに掲げ、ICチップ等の半導体や電子部品等の素材の精密な切断と研削という加工プロセスにおいて世界中に製品を提供している。

気候変動による影響

2001年の米国同時多発テロ事件をきっかけに、リスクマネジメントに対する意識が多くの企業で高まり、2003年にStandardized Supplier Quality Assessment (SSQA)と呼ばれるサプライヤアセスメント基準が米国半導体製造業界により定められた。この基準内の災害復旧に関する要求事項が、当社が事業継続管理(Business Continuity Management: BCM)の取組を始めるきっかけとなった。当初想定していた脅威は「大地震」と「感染症のパンデミック」のみであったが、現在は自然災害を含む様々な事象を対象としており、当社グループの本社・R&Dセンターである東京都大田区内や、生産拠点がある広島県と長野県に大規模な災害や感染症の流行などが発生した場合、本社機能や製品生産に影響を与える可能性があると認識している。

気候変動リスクに関する取組

当社グループは組織的に継続した対策を実行するために代表取締役社長をチェアマンとする役員で構成され、平時より事業継続マネジメントシステム(Business Continuity Management System:BCMS)に関する重要事項の審議を行うBCMコミッティーを設置・運営するとともに、BCM専門の部署を設置している。2012年にはBCMの国際認証規格[ISO22301:2012]を日本で初めて取得した。
災害に強い拠点づくりとして、瀬戸内海沿岸部に立地している精密加工ツールを生産する呉工場では、津波・高潮の被害を想定して対策を講じている。万が一の浸水に備え、製造・製品出荷・検査工程を上層階に置き、工場外周には防潮堤・防潮板を設置している(図1)。
また、生産能力とBCM対応力のさらなる向上を目的に、2018年4月、長野事業所・茅野工場を開設した。現在は、広島事業所の呉工場と桑畑工場で主要製品の大半を生産しているが、両工場の距離は10kmほどのため、広域に及ぶ災害に備え、茅野工場における生産体制を強化することでリスク分散をこれまで以上に図ることが可能となる。2021年1月には茅野工場に新棟を竣工し、同工場は7.5倍の規模となった。
さらに、ディスコは、地域経済を強固にし、更なる発展を目的として、BCM活動の仕組みや、独自に開発した活動ツール、ディスコが蓄積したBCMのノウハウ等、実体験を交えて紹介するセミナーを国内拠点で開催している(図2)。
そして、BCMにおける最も重要な対策は「従業員一人ひとりが自分の身を守れること」であると考え、自然災害や感染症などのリスクを想定し、従業員への啓発や身を守るための行動促進に努めている。

効果/期待される効果等

平常時から大規模な自然災害リスクに備えた対策を計画・実施することで、災害発生時には人命及び安全の確保を最優先とした上で、被害の拡大防止、地域への貢献、重要な事業の継続を図ることができる。

2018年7月の西日本豪雨は広島県呉市にも甚大な被害をもたらしており、精密加工ツールを製造する呉工場においては、生活用水、工業用水ともに7月7日から断水となったほか、周辺道路の寸断による物流の混乱等の影響を受けた。このような状況下でも、BCMが機能したため、生活用水の確保、陸海空を問わない最適な物流ルートの選択、自社便での配送手配、非常食による昼食の提供、及び被災した従業員への生活支援などを行った。その結果、配送遅延は最大1日のみと、顧客への影響を最小限に抑えることができた。
また、茅野工場の開設により、有事の際の安定した製品供給も可能となる。

防潮板
図1 防潮板
BCMセミナーのポスター
図2 BCMセミナー

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