生産と調達で取り組む事業継続力(Business Continuity Power)の向上
ナブテスコ株式会社
掲載日 | 2022年2月14日 |
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適応分野 | 自然災害・沿岸域 / 産業・経済活動 |
会社概要
さらに、ナブテスコグループは2003年の創立当初から環境対応を経営戦略の重要課題の一つと位置づけ、環境マネジメントを推進しており、2050年度までのCO₂排出削減の長期目標を設定し気候変動問題への対応を加速させるとともに、ゼロ・エミッション化の実現や水資源の保全など、多面的な取り組みを推進し、ものづくりを通じた社会的責任の遂行に努めている。
気候変動による影響
製造業のバリューチェーンの中心は生産活動であり、特に工場での事業継続力は安定した収益の確保に直結する。ナブテスコグループでは、社内のリスク調査の結果、大規模災害による工場の操業停止リスク、およびサプライヤーの被災による調達品の供給不能リスクを重大なリスクと認識し、事業継続力の強化を喫緊の課題としていた。
また、ナブテスコグループは気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言への賛同を表明し、気候変動に係るリスク、機会の評価・分析を行っており、その中でも風水災によるインフラの損傷や電力の不安定化が事業中断に繋がる物理的リスクとして認識されている。
気候変動リスクに関する取組
通例、BCPは“Business Continuity Plan”であるところ、ナブテスコグループではPlanをPowerに読み替えて「事業継続力」とし、危機に直面した時の組織の実効的な対応能力を上げることを目指している。
①「レジリエンス認証」取得を通じた実効性の高いBCP体制の構築
上記のリスク調査を経て、主要9工場のBCP刷新に着手した。現場が主体性を持ってBCPに取り組むには当事者意識の醸成が不可欠であると捉え、主要9工場にBCPの事務局を設置し、(ア)防災(イ)生産(ウ)調達に関わる人材を配置するとともに、工場長を筆頭に実行メンバーでBCP訓練を行った。
また、BCPを社内で普及浸透させるため、実効的なBCPに取り組んでいる企業を評価し、内閣官房国土強靭化推進室が認定する「レジリエンス認証」に着目し、2017年より、2020年末までに主要9工場で同認証をそれぞれ取得すること目標に掲げた3ヵ年計画を開始した。
各工場のBCPの改善にあたり、本社ものづくり革新推進室の協働による支援のもと、グループ内で情報、取り組みを共有し、各拠点同士で切磋琢磨できる環境づくりを行った。例えば、グループ会社であるPACRAFT株式会社はBCPの取り組みを従来から進めており、重大災害時でも代替生産が可能であるなどBCPの戦略性や実効性が群を抜いていたため、このような先行事例を他工場にも共有させた。
上記の取り組みにより、2019年、9工場すべてレジリエンス認証を取得し、主要拠点で実効性の高いBCP体制の整備を実現した(図1)。
② サプライチェーン一体でのBCP向上の取り組み
さらに、ナブテスコグループはグループのサプライチェーン全体でリスクを軽減するため、サプライヤーBCPの支援活動も進めている(図2)。ナブテスコグループの事業継続を左右するサプライヤー400社を対象に大阪・神戸・岐阜・岩国でBCP啓発セミナーを開催した。その後、各社のBCP整備のステージに合わせたより実践的なセミナー「BCP策定講座」と「BCP訓練講座」を開催した。コアサプライヤーや意欲的なサプライヤーには独自の訓練やレジリエンス認証を取得するための個別支援を行っている。また、従来は本社部門にてサプライヤーへのBCP推進活動を実施していたが、BCPの普及促進のためには各事業部の調達担当者がサプライヤーを相手にビジネスの現場でBCPを支援することが不可欠であることから、担当者向けに「BCPバイヤー養成講座」を実施している。
効果/期待される効果等
気候変動問題の深刻化により風水災リスクが高まる中、①の活動により、主要拠点に実効性の高いBCP対策を講じたことで、仮に現場が大災害に見舞われたとしても、事業回復のスピードを速め、最低限の収益を確保し、事業を継続することが可能となっている。レジリエンス認証制度の活用により、スピーディーにその体制を整えることができた。
加えて、BCP活動のプロセスの中で組織上の課題を洗い出し、現場での課題解決にリソースを集中させることで、生産や調達の業務改善が進み、ものづくり全体の底上げへとつながっている。今後は、②の活動を通じて、BCPの取り組みをサプライチェーン全体に普及させ、災害に強い強靭なサプライチェーンの実現を目指す。