「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

気候変動影響に対する新たな酒造りの取組

髙砂酒造株式会社

業種:製造業
掲載日 2022年5月9日
適応分野 産業・経済活動

会社概要

髙砂酒造株式会社のロゴ
髙砂酒造株式会社は、1899年の創業以来、先人たちの技とたゆまぬ努力で旭川の地酒蔵として「ここにしかないモノ」を造り続け、歴史と伝統に決して胡坐をかくことなく常にチャレンジ精神を発揮し地域で一番愛される酒蔵、そして社会に貢献できる企業を目指している。

気候変動による影響

当社では、北海道の気候を利用した酒造りに取り組んでいる。雪や氷を使用した貯蔵などを行っているが、気候変動の進行に伴い数年前から雪中貯蔵をする際にタンクを覆う雪の量が少なくなっており、追加で雪を被せる必要が生じたり、堀り出し時に雪が解けて貯蔵タンクの一部が見えることが増えている。

また、土の中に埋めたタンク内に水を流して氷とし、その上に酒を貯蔵し、さらにその上から雪をかけて約4~5か月熟成させる「氷雪囲い熟成」では、氷雪の解け方が毎年早くなり、品質管理の維持が困難であることが一因で「純米大吟醸原酒「国士無双」氷雪囲い熟成」は製造終了となった。加えて、氷のドームを製作し、その中で搾りの作業を行って販売する「雪氷室造り」では、近年の気候変動の影響で温度が-15℃以下にならず、製造時期である2月でも雨が降ることも増え、雪氷室に穴が開くこともあり、雪氷室製造と安全性の維持が困難となり、「雪氷室一夜雫」も製造終了となった。

気候変動リスクに関する取組

北海道の天然記念物指定である「当麻鐘乳洞」の洞窟内部は、気温9度前後・湿度80~90%と一定に保たれている。鍾乳洞のこの特性を活用し、冬期間新酒を貯蔵・熟成(図1)させた、新たな純米大吟醸酒「龍乃泉」を開発した。「龍乃泉」は、当麻町・とうま振興公社と髙砂酒造が、2015年より取り組んでいる官民共同のプロジェクト(注)として始動し、限定酒として販売の他、ふるさと納税の返礼品にもなっている。

また、雪氷室造りの代替として、搾りたての生酒を蔵内の氷温庫(-4~-5℃)で貯蔵し(図2)、出荷時に一度火入れをする氷温貯蔵酒を新たなブランド「旭神威」を開発した。気候変動の影響で雪氷室の製造が困難で2016年に製造休止した大吟醸酒である「雪氷室一夜雫」に代わるラインナップとして「旭神威」の販売を開始している。

効果/期待される効果等

気候変動により酒造りへの影響を受けるなか、新たに開発した「龍乃泉」や「旭神威」の販売を通じて、「ここにしかないモノ」を造り続けることが可能となった。

鍾乳洞内での貯蔵の様子
図1 鍾乳洞内での貯蔵の様子
氷温貯蔵の様子
図2 氷温貯蔵の様子

脚注
(注)北海道上川郡当麻町広報紙「我が郷土」2017年6月号(No.1067)参照:http://town.tohma.hokkaido.jp/file/contents/6/7300/rgbf06.pdf