水リスクの評価と対応

第一三共株式会社

業種:製造業

更新日2025年1月9日
掲載日2018年7月25日
適応分野水資源・水環境/産業・経済

会社概要

第一三共株式会社

第一三共グループは、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」に向け、新薬メーカーとしてアンメットメディカルニーズの充足に努めていくとともに、医療サービス全体を視野に入れ、ワクチン・ジェネリック・OTC医薬品など、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供している。

気候変動による影響

気候変動による影響には、温室効果ガス削減の国際的枠組みに基づいたCO2排出規制の強化、平均気温の上昇や渇水・洪水などの物理的な影響、疾病構造の変化や健康への影響などが考えられる。第一三共グループが事業を推進・継続するにあたり、十分な量の良質な淡水がすべての事業所およびバリューチェーンにおいて利用可能であることは、非常に重要であると考えている。

気候変動リスクに関する取組

第一三共グループでは、工場・研究所を対象とし、事業に影響をおよぼすと考えられるリスクについて状況を把握している。

具体的には、WWF-DEG Water Risk Filter(注)を用いて、立地する地域固有の水リスクを分析した結果と、各工場・研究所からの水リスクに関する調査結果を基に、総合的にリスク評価を実施している。その結果、上海工場、アルファビレ工場が当社グループの中で最も水リスクが高い地域に立地する事業所であると評価し、取水制限等の規制強化を主なリスク要因として特定している (図1)。現状ではこれらの工場を有するグループ会社の売上に占める比率は5%未満となっているが、これらの工場では、規制動向に注意すると共に、水使用量の更なる適正化に努めている。具体的には、上海工場でリサイクル水の散水利用、アルファビレ工場では雨水の生活用水への利用などの施策を実施している。

国内ではアンケート調査により、水質悪化、水不足、排水の水質/排水量の規制、水の効率的使用など、物理的・規制および評判リスクが要因となる事業への影響について把握に努め、その結果に基づき分析、評価を進めている (図2)。国内工場では工業用水の使用量低減などの施策に加え、昨今の気候災害の激甚化への対策として、2022年度は、品川研究開発センターおよび葛西研究開発センターにおいて水害リスク評価と水災対策マニュアルの整備、設備浸水の軽減策を計画した。さらに、第一三共ケミカルファーマ小名浜工場、第一三共バイオテック北本工場では浸水リスクは極めて低いことを確認したことで、国内の研究所および工場における水害リスク対策を完了している。

また当社は、水害による自社拠点の一時操業停止という物理的リスクに対して、「2025年度までに水災マニュアルの整備率:日本国内の研究所・生産事業場100%」という目標を設定した。その対応として、2023年度に事業場ごとのリスクアセスメントと水災マニュアルの作成を完了している。

なお、水使用量、排水量については第三者保証を受けている。

効果/期待される効果等

水資源の適正利用によって、2023年度におけるグループ全体の水使用量原単位は511m³/億円 (2020年度比 40.7%減少) となった。また、グループ全体の水使用量は、8,191千m³と2020年度比で2.4%減少した(図3)。

水リスクの高い地域にある事業所の水使用状況
図1 水リスクの高い地域にある事業所の水使用状況
水リスク要因と主な影響
図2 水リスク要因と主な影響
水使用量(取水量)・排水量(グループ全体)
図3 水使用量(取水量)・排水量(グループ全体)

脚注
(注)WWFとドイツの金融機関DEGによって開発された水環境にかかわるリスクを調査、評価、および対応できるようにするオンラインツール(出典:WWFジャパン

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