自然生態系を活かした農業「無潅水栽培」

チャルジョウ農場

業種:農業・林業

掲載日2024年10月9日
適応分野農業・林業・水産業 / 水環境・水資源

会社概要

チャルジョウ農場は、自然豊かな福島県会津地方の、喜多方市と西会津町にまたがって位置する。チャルジョウ農場の特徴は、無潅水栽培で水源がない山奥の畑で30年以上有機農業を続けていることである。就農希望の研修生や体験者を国内外から受け入れも行っており、生態系を活かす有機農業を実践・指導を通して、地域の活性化を目指している。

気候変動による影響

気候変動による無降雨日数の増加や積雪量の減少は、渇水を引き起こす原因とされている。加えて渇水の頻発によって、過剰な地下水の採取が行われ、地盤沈下が進行する可能性も懸念されている。

また将来予測として、水資源の不足や気温上昇よる融雪流出量の減少は、用水路等の農業水利施設における取水に影響を与える可能性があると言われている。

気候変動リスクに関する取組

当農場は、水源がない山奥の畑で自然生態系を活かした農業「無潅水栽培」を行っている(図1)。通常のハウス栽培では、川や地下から大量に水を汲み上げて潅水を行うが、無潅水栽培では、水を一切汲み上げず、雨水のみでハウス栽培をすることができる。

当農場の無灌水栽培には、以下のような特徴がある。

  • 畝に溝または穴を深く掘り、ここへ水分を多く含んだ堆肥を入れ、土でふたをすることで蒸発を防ぎ、壁面には水圧がかからず水分が保持されることを利用して人工潅水はしない。
  • 株間を広く取り、側枝を多く伸ばしのびのびと育てる。
  • 部分的に耕して野草帯を残し、自然界の益虫を利用する。
  • メロンやトマトの受粉は野生のマルハナバチに任せ、人工受粉は育種や品種保存などの時のみ行う。
  • この栽培方法に適した品種を育成して、畑の乾燥程度に応じて使用する。

また当農場は、無灌水栽培を通して、山奥の豪雪地域という条件不利地でも、環境に負荷をかけない農業で生計を立てることに挑戦している。

果菜類は、露地栽培の葉物野菜などとは違い、次々と実を成らすため収穫時期が長く、面積が小さくても栽培効率がよい作物である。そのため、小規模農家が生計を立てていく上で、果菜栽培は重要な手段となる。しかし、トマトやメロンなどの果菜類は、(1)雨が直接当たると疫病、べと病、つる枯れ病、斑点細菌病等の様々な問題が起きやすい、(2)おいしいものが採れにくい、(3)山奥の畑では特に獣害に合いやすいという点から、露地での栽培は難しい作物である。この課題に対して、ハウス施設での無灌水栽培は、山奥という立地を活かし、環境問題にも配慮しながら、小規模農家が生活を成り立たせる可能性を秘めている。

効果/期待される効果等

当農場で実施している無灌水栽培は、地下水の過剰な汲み上げをする必要がないため、環境負荷への低減を可能とし、水源がない山奥のような条件不利地でも果菜類の栽培を可能とする。また、味が濃くておいしい野菜ができるメリットもある(図2)。実際に当農場のミニトマトは、2018年の「栄養価コンテスト(注)」において全国2位に選ばれ、2020年では最優秀賞を受賞している。またメロンは、同コンテストで2024年に最優秀賞を受賞した。このように、当農場の果菜は、栄養価と食味の両面において高い評価を得ている。

また当農場は、持続可能な観光資源としての役割を果たすとともに、若年層のキャリア形成に寄与する教育・実践の場として機能している。

チャルジョウ農場の畑の様子
図1 チャルジョウ農場の畑の様子
チャルジョウ農場で栽培しているメロンや野菜
図2 チャルジョウ農場で栽培しているメロンや野菜

脚注
(注)一般社団法人日本有機農業普及協会が主催する、全国の生産者が生産物の栄養価の高さを競う年に一度の審査会。審査対象は、米・野菜・果樹(有機栽培・慣行栽培・土耕・水耕・高設栽培の区分は問わない)・農産物加工品。2023年より「身体に美味しい農産物コンテスト」へ名称を変更している。

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