財務影響から重要なリスクと機会を評価

大和ハウス工業株式会社

業種: 建設業
掲載日 2022年2月28日
適応分野 産業・経済活動

会社概要

大和ハウス工業株式会社ロゴ

大和ハウス工業は1955年創業以来、「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、戸建住宅をはじめ賃貸住宅や分譲マンション、商業施設、物流施設、医療・介護施設、法人施設等の多様な用途の建物を建築すると共に、ホテルやホームセンター、スポーツクラブなどの運営にも取り組んでいる。また、創業100周年となる2055年を見据え、環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055” (注1)を策定し、環境負荷ゼロに挑戦している。さらに、建設・住宅業界では世界初となる「RE100」「EP100」「SBT」に加盟するなど、環境への取組みも加速している。

気候変動による影響

気候変動が原因のひとつとされる異常気象・自然災害などが頻発するなど、当社の提供価値の根幹である住まいや暮らしの安全・安心が脅かされつつある。その一方でパリ協定の採択以降、世界の国・政府が「脱炭素」へと大きく舵を切り、民間セクターが果たすべき役割への期待も大きく変化している。

取り組み

気候変動に伴う外部環境の変化は不確実性が高く、複数のシナリオを想定したうえでリスクへの適切な対応を進めながら、事業機会の獲得を図ることが重要だと考え、2018年9月にTCFD提言への賛同を表明。最終提言で推奨されている「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目を『サステナビリティレポート』等で開示した。

「戦略」のフレームワークでは気候変動に伴うさまざまな外部環境の変化について、その要因を「移行」と「物理的変化」に分類し、それぞれの要因において想定される影響に対し、影響を受ける期間(現在・短期・中期・長期)を想定したうえで財務影響を大・中・小の3段階で評価し、重要なリスクと機会を特定した(図1)。

こうしたリスクと機会をふまえ、将来の外部環境の変化に柔軟に対応した事業戦略を立案するため、「移行」が進むシナリオとして「NDC(国の約束草案)」を、極端な「物理的変化」が進むシナリオとして「RCP8.5(高位参照シナリオ)」を参照し、事業戦略の妥当性を検証している(図2)。

効果/期待される効果等

いずれのシナリオにおいても、ネット・ゼロ・エネルギー住宅や建築物の需要、環境エネルギー事業などの拡大が見込まれ、その収益増は負の財務影響を上回る見込みであることを確認し、リスク対応の妥当性とより積極的な事業機会獲得の重要性が再認識された。

ただし、コア事業である住宅、商業・事業施設事業や環境エネルギー事業において重要なリスク・機会に限った簡易分析となっており、今後は対象となる事業のさらなる拡大を図るとともに、リスク・機会の網羅性の向上や、シナリオ分析の精緻化などにも取り組む。TCFD提言に沿った情報開示を積極的に行い、投資家などとの建設的な対話につなげていきたい。

図1:気候変動に関する主なリスクと機会

図1 気候変動に関する主なリスクと機会

図2:シナリオ分析の結果概要

図2 シナリオ分析の結果概要

脚注
(注1)「気候変動の緩和と適応」に関する目標は2050年をゴールとして設定。

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