TCFD提言に基づくシナリオ分析

戸田建設株式会社

業種:建設業
掲載日 2022年11月21日
適応分野 産業・経済活動

会社概要

戸田建設株式会社ロゴ

戸田建設株式会社は、未来を創造し社会課題を解決する総合建設企業を目指して安全、品質、環境に最善を尽くし、建設を通じて社会の発展、ステークホルダーの価値向上に貢献していくと同時に、持続的成長を目指して積極的にESG経営に取り組んでいる。

気候変動による影響

近年、持続可能な社会の実現に向けて、国際社会が連携して課題解決に取り組むことが求められているなか、気候変動に起因する豪雨や台風も激甚化しており、建設産業は防災・減災対策、さらには、老朽化するインフラの再生など、果たすべき責任が一段と大きくなっている。

取り組み

戸田建設グループでは、ESG経営を実践し、SDGs達成への貢献を含めた取り組みを推進している。環境関連では、脱炭素、資源循環、環境保全、地域活性化に向けた課題解決型企業活動を実践している。その一環として2019年にTCFD提言に賛同した。気候変動に関するリスクと機会について、「短期(3年以下)、中期(3~10年)、長期(10年以上)」という視点でシナリオ分析を行うとともに、気候変動関連のリスクと機会を特定し、財務的影響の評価を行い2020年より公開を開始した。以下に2021年の概要を記載する。

4℃シナリオ(公表政策シナリオ(注1)等に基づく)と2℃未満シナリオ(SDSシナリオ(注2)等に基づく)を設定し、様々なパラメータ(図1)を用いて分析した結果、以下のような将来社会像が描かれた。

2℃未満シナリオ(SDSシナリオ等) 4℃シナリオ(公表政策シナリオ等)
  • 再エネ電力のニーズが高まり、再エネ発電所建設工事の発注が増加
  • ZEB(注3)建築が普及し、売上高の増加が見込まれる一方、ZEB技術力、設計・施工実績による受注競争が激化
  • 炭素税の増税により資材・燃料調達費が増加
  • 建設事業において、夏季の工事効率低下により工期が長期化し利益率が低下、また作業員の健康リスクが増加
  • 異常気象の激甚化が進行することで不動産事業において物理的リスクが増加
  • 物理的リスクの顕在化や対策への機運の高まりにより防災・減災工事の発注が増加

さらに、営業利益への影響評価を行うと、2℃未満シナリオでは特に再エネ関連の利益増加額が大きく、2030年度の営業利益は増加し(図2)、2050年にはさらに増加額が増大するが、4℃シナリオでは営業利益が現状より減少する結果となった(図3)。

効果/期待される効果等

気温上昇にともなう建設工事の作業効率低下への追加的な措置、そして特定した機会の事業領域におけるシェア拡大など、シナリオ分析の結果を企業戦略に反映し、現状以上の営業利益確保を目指す。また、特定した気候関連のマテリアリティリスクの対応・管理体制を強化していく(図4)。

図1 シナリオ分析に使用した主要なパラメータ

図2 営業利益への影響評価(2030年2℃未満シナリオの場合)

図3 営業利益への影響評価(2030年4℃シナリオの場合)

図4 気候関連のマテリアリティリスクと対応策

脚注
(注1) 国際エネルギー機関(IEA)が示す移行シナリオ。2100年までの平均気温の上昇を2.6~4℃に抑えるシナリオで、望まれない世界。
(注2) 国際エネルギー機関(IEA)が示す移行シナリオ。平均気温の上昇を1.8℃未満に抑えられるシナリオで、望まれる世界。
(注3) Zero Energy Building(ゼロ・エネルギー・ビル)。建物で使うエネルギーを実質ゼロにする考え方やそのような建物のこと。

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