シナリオ分析による財務影響の定量化と気候変動への対応

九州電力株式会社

業種:電気・ガス熱供給・水道業
掲載日 2022年12月12日
適応分野 産業・経済活動

会社概要

九州電力株式会社ロゴ

九電グループは、「ずっと先まで、明るくしたい。」をメッセージとするグループ理念「九電グループの思い」のもと、中長期に目指す姿として「経営ビジョン2030」と「カーボンニュートラルビジョン2050」を定め、「社会価値」と「経済価値」を同時創出するサステナビリティ経営を推進している。2022年4月には、その実現に向けた経営上の重要課題(マテリアリティ)を特定し、その解決に向けた取組みを具体的行動計画に落とし込むことで、着実な実践を図っている。

気候変動による影響

カーボンニュートラルの潮流は、エネルギー事業者である当グループにとって大きなターニングポイントであり、温室効果ガス(GHG)排出削減や気候変動影響など、気候変動への対応を経営の重要課題(マテリアリティ)と位置付けている。

取り組み

当グループは、地球環境問題に真摯に取り組むエネルギー事業者として、2019年7月にTCFD提言への賛同を表明した。その後、リスク・機会分析とその財務影響評価を含めたシナリオ分析を進め、2020年から同提言の枠組みに基づく情報開示を行うとともに、「カーボンニュートラルビジョン2050」および「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」など、戦略や具体的行動計画の策定に活用している。

  • ① 戦略への反映
    2021年11月に策定したアクションプランにおいては、2050年の目指す姿として、「サプライチェーンGHG排出ゼロ」はもとより、それを超えて社会全体の排出削減に貢献する「カーボンマイナス」を2050年より早期に実現するという目標を設定した(図1)。また、2030年の経営目標として、日本政府が示したGHG排出削減目標を大きく上回る、チャレンジングな目標を設定の上、これらの達成に向けた具体的行動計画を策定している。
  • ② 分析および開示の継続的な充実
    TCFD提言に基づく分析および情報開示については、具体的取組みの進捗や当グループの開示内容に関してステークホルダーの皆さまから頂いたご意見等を踏まえ、継続的に充実を図っている。
    当グループでは、気候変動に係るリスク・機会の評価について、1.5℃上昇と4.0℃上昇の想定ケース(図2)に基づき分析を行っているが、2022年の分析では、それぞれのケースについて、IPCC報告書やエネルギー基本計画を前提にしつつ、将来の事業環境をより具体的に描いた。また、リスク・機会がもたらす財務インパクトについて、定量的な分析・開示の充実を図っている。
    さらに、従来から行っていた電気事業(国内・海外・再エネ事業)に加え、成長事業であるICTサービス事業と都市開発事業についても新たに分析を実施し、開示している(図3、図4)。特に4.0℃上昇の想定ケースにおいては、気象災害による物理リスクが財務インパクトへ影響を及ぼすと分析した。電気事業では、設備被害に対する災害復旧費用として60億(2020年度実績)の財務インパクトを予測しているが、無電柱化の推進や災害対応力の向上を対応戦略としている。また、ICTサービス事業・都市開発事業では1.5℃上昇の想定ケースよりも設備被害による財務インパクトが大きいと予測しているが、災害に強い施設の建設や保険付保によるリスクヘッジによる影響を最小化にする等の対応戦略を図っている。

効果/期待される効果等

シナリオ分析を通じて把握したリスク・機会への対応については、カーボンニュートラルアクションプランに適切に反映し、重要な指標をKPIとして設定するとともに、その着実な推進に向けて「中期ESG推進計画」を策定している。
今後も、シナリオ分析の更なる充実を通じて、カーボンマイナス実現に向けた戦略やアクションプランの深掘りを進めるとともに、各種KPIの進捗管理を適切に行うことで、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献し、当グループの持続的成長や企業価値の向上に繋げていくことを目指している。

図1 2050年のゴールと2030年の経営目標

図2 シナリオ分析の前提条件

図3 リスク・機会と対策(シナリオ分析 [1.5℃ケース])

図4 リスク・機会と対策(シナリオ分析 [4.0℃ケース])

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