気候関連リスクと機会に関するシナリオ分析

※本事例は、2023 年 3 月時点の情報に基づいて公開しています。

コニカミノルタ株式会社

業種:製造業
掲載日 2023年4月19日
適応分野 産業・経済活動

会社概要

コニカミノルタ株式会社ロゴ

コニカミノルタ株式会社は、複合機、商業・産業印刷機、ITソリューション、産業用インクジェット、医療向け製品(ヘルスケア)、計測機器などの製品・サービス事業を展開する、日本の電気機器メーカーである。

気候変動による影響

パリ協定の合意のもと、世界全体が加速的かつ野心的に低炭素社会へ移行する可能性がある。その一方で、移行が思うように進まず、世界各地で気候変動の著しい影響が顕在化してしまうおそれもある。気候変動の物理的影響が顕在化し地球環境が破壊されれば、経済や金融に混乱を引き起こす可能性がある。

取り組み

当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言に2018年に賛同した。

当社は、以下の2つの気候シナリオを想定し、将来にわたりグループの業績に悪影響を及ぼす事業リスクと、気候変動における課題の解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれで特定した。

  • 気温上昇が2℃以下に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合
  • 気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合
    シナリオ分析は下記のプロセスを経て実施した。
  • 気候シナリオ分析の対象事業分野の特定
  • 重要な気候関連リスクおよび機会の特定
  • 気候変動に関する既存の科学的シナリオの検討
  • シナリオに対するリスクおよび機会とその財務影響の検討と明確化
  • 今後の対応の方向性・方針・戦略の検討

特定した物理的リスクとして、紙原材料の調達が不安定になり事業機会の損失につながる可能性がある。また、自然資源の調達が不安定化し、原材料等の供給量が制限または一時停止して、工場の稼働に影響を及ぼす可能性がある。さらに、当グループの設備や労務環境が被災し、従業員の就業が困難になることで、サプライチェーンが寸断し、生産および出荷が遅延する可能性がある。

想定された物理的リスクへの対応として、オフィス事業では、紙出力に依存しない新しいデジタルソリューションを提供するデジタルワークプレイス事業を拡大している。また、安定供給リスクが高い原材料については、調達先の複数確保や代替材料検討に取り組んでいる。

気候災害への対応としては、消耗品用部品生産、印刷用トナーの生産および充填を行う拠点として、日本、欧州、北米に自社生産拠点を複数展開し、消費地で生産して供給する、レジリエンスの高いサプライチェーン体制の確保に努めている。さらに、水リスクが高い生産拠点やサプライヤー拠点を特定して対応策を計画するほか、大規模な自然災害の発生に備えて、BCP(注)を策定した。

一方、事業機会としては、急性的な自然災害への安全・安心の期待から、異常気象・自然災害による影響を未然防止し予防保全型インフラメンテナンスを実現する画像IoT・センシングソリューションや災害医療現場で活用できるX線撮影診断、超音波診断など画像を活用したヘルスケアソリューションなど当社のソリューション事業が社会の新たな需要を取り込むことができると考えられる。

効果/期待される効果等

シナリオ分析結果を踏まえ、当社は売上比率の高い複合機を中心とした従来のモノ売りから “as a Service” モデルへ転換しDXを中心とした事業成長を見込める経営計画を策定した。そして、長期の経営ビジョンにおいてコニカミノルタが取り組むべき5つのマテリアリティの一つとして「気候変動への対応」を設定すること、気候変動への対応の目標として「カーボンマイナス」の達成時期を2030年へ前倒しすることを決定した。

脚注
(注)災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する(Business Continuity Plan: BCP)。

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