農業構造の変化(担い手への農地利用集積の進展)や農業生産の変化(①水稲作期の変化、②直播栽培の導入、③新規需要米の導入、④高温障害対策等)により、取水時期や期間、用水需要量が変化してきている(例:①早生品種作付増加による代かき期の前倒し、②直播栽培(水田に種子を直接播く方法)の導入拡大によるかんがい期間の延長や単位用水量の増大、③飼料用米等の導入による代かき期や落水期の後ろ倒し、④晩生品種の作付によるかんがい期間の後ろ倒し、浸水管理や潅水期間延長による用水量増加)。このような農業用水の必要量や必要な時期の変化は地域毎に様々である事から、今後の気候変動(降水や融雪の変動)による影響も考慮しながら、河川流域全体の水需要側と供給側の双方を考慮した運用や連携、水利用の計画を立てる事が重要となる。
将来融雪時期の早期化が予測され、農業などの水の需要期に十分な量の水を供給できない可能性が指摘されているため、融雪水が重要な水資源となる地域では、農業用ダムの役割の重要性が増すことが想定される。北海道で行われた研究では、水利施設間の連携による水管理検討の重要性(水利施設が近傍にあっても流域の標高が異なる貯水施設・取水施設では温暖化で生じる渇水の程度は異なる)や、ダムの統合管理の有効性が示されており、「積雪寒冷地の農業用水管理における温暖化対応マニュアル(案)」が作成されている(中村他2015)。