- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
食料需給
影響の要因
気温の上昇は、主要穀物など国際的に取引される作物の収量の減少や不安定化(年々変動の増大や複数の生産地域での同時不作)を引き起こす可能性がある。
現在の状況と将来予測
現在、主要穀物(小麦、大豆、トウモロコシ、コメ)を中心に、世界各地で気候変動による収量等への影響が報告されている。
将来、作物収量への気候変動影響は地域によって異なり、特にアフリカや中南米を含む現在温暖な地域ではプラスよりマイナスの影響が予測されている。主要作物収量に関する将来予測研究の多くで、概して収量の減少が予測されている(右図参照)。 (以上IPCC 2022)
また主要穀物も含む主な輸入作物を対象とした生産国での収量予測や、その日本の食料輸入に及ぼす影響に関する研究も行われている(櫻井他2021)。
基準期間(2001 ~ 2010 年)と比較した穀物収量変化予測(適応無、CO2施肥効果有の場合)
Near future:基準期間-2039年
Mid century:2040–2069年
End of century:2070–2100年
出典:IPCC(2022)Figure 5.6 (a) At different time periodsを国立環境研究所 気候変動適応センターにて和訳追記
適応策
気候変動影響による収量減少や不安定化について、引き続きリスクの一要因として平素からのリスク分析・評価等に含め、総合的な食料安全保障の取組を行っていく事が考えられる。
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■食料供給に係るリスク分析・評価
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■海外食料需給情報の活用出典:農林水産省(2022)
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基本■国内の農業生産の増大*
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■安定的な輸入
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■備蓄の活用
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■緊急事態食料安全保障指針
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■事業継続計画・TCFD提言に基づくシナリオ分析
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■全球での監視・予測
- 出典:GEOGLAM Crop Monitor
*国内の主要穀物生産における気候変動影響と適応策については、「水稲(農業・林業・水産業分野 | 農業)」「小麦(農業・林業・水産業分野 | 農業 | 麦、大豆、 飼料作物等) 」 「大豆(農業・林業・水産業分野 | 農業 | 麦、大豆、飼料作物等)」の各インフォグラフィックをご参照下さい
不測の事態に備え、農林水産省では食料供給に係るリスクを定期的に分析・評価し対応策を点検している。2021年1月に公表された結果では、気候変動も含む国内・海外でのリスク整理と、5~10年後の評価等が示されている。(以上、農林水産省2021b)
主要穀物(コメ、小麦、とうもろこし)及び大豆を中心に、その安定供給に向けて、世界の需給や価格動向を把握し、情報提供する目的で「食料安全保障月報」が作成されている。特に、原料の大半を海外に依存する食品加工業者及び飼料製造業者等の方々を対象とし、安定的に原料調達を行う上での判断材料を提供する観点で作成されている。(以上、農林水産省2022)
令和2年3月に閣議決定された新たな「食料・農業・農村基本計画」では、「「産業政策 」と「 地域政策 」を 車の両輪 として推進し、将来にわたって国民生活に不可欠な食料を安定的に供給し、 食料自給率の向上と食料安全保障を確立」するという方針が示され、食料自給率(カロリーベース)も37 %(2018) → 45 %(2030)とする目標が掲げられており、多層的に施策が実施されている。各地域でも、主要穀物の生産増大の取組が進められている。
例1)子実用トウモロコシ:飼料用として北海道において生産が拡大(2022年:883ha)(柳原2022)、生産・利活用の手引き(農研機構2019)も発行されている。
例2)パン・中華麺用小麦:強力系品種の開発・普及が北海道・九州北部等で進み作付け比率が増加(農林水産省2022)、パンやラーメン等製品の開発・販売も進められている(吉田2021)。
海外からの輸入に依存している穀物等の安定供給を確保するため、輸入相手国との良好な関係の維持・強化や関係情報の収集、船舶の大型化に対応した流通基盤の強化等を通じて輸入の安定化や多角化を図る(農林水産省参照2022年11月20日)。
平時より国として米、食糧用小麦、飼料穀物の備蓄が行われており、不測の事態には、備蓄の放出等により供給の維持を図ることとされている(農林水産省 参照2022年11月16日)。
主要穀物輸入量の大幅な減少等、緊急の要因により食料供給に影響が及ぶ可能性のある事態に的確に対処するための「緊急事態食料安全保障指針」が策定されており(農林水産省2021a)、その指針に基づいた具体的な手順(対策本部の設置、備蓄の活用、輸入の確保等)の整理も行われている(農林水産省 参照2022年11月17日)。
緊急事態が発生した場合でも重要業務を中断させず、万が一中断した場合に早期再開を図る事業継続計(Business Continuity Plan:BCP)の策定が推進されている(内閣府参照2022年11月24日)。また食品事業者のTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づくシナリオ分析において、気候変動による原料農産物への影響評価や対応方針等を検討する事例が複数出てきている(農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課2022)。
世界の作物生育状況については、GEOGLAM Crop Monitor(参画機関の専門家が、衛星観測データや現地調査データ等をもとに総合的な分析を行い判断した結果を5段階評価で地図化(坂本2021))等により作物種別に情報が公開・活用されている。また、農林水産省による海外の主要穀物生産地帯の気象情報等を提供する「農業気象情報衛星モニタリングシステム(JASMAI)」の運用が行われている。
適応策の進め方
【現時点の考え方】
国民に対する食料の安定的な供給については、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、輸入及び備蓄を適切に組み合わせることにより確保する必要がある。また、凶作、輸入の途絶等の不測の事態が生じた場合であっても、国民が最低限度必要とする食料の供給の確保を図る必要がある。(以上閣議決定2020より引用)
【気候変動を考慮した考え方・準備・計画】
不測の事態に備え、平素から気候変動による影響等の分析・評価や、我が国における将来の食料需給に関する調査分析を行い、対応策の検討、見直しを実施することにより、総合的な食料安全保障の確立を図る(農林水産省2021より引用)。