インフォグラフィック
イラストで分かりやすい適応策
気候変動の影響と適応策

産地の拡大

農業・林業・水産業分野|農業|果樹
協力:鹿児島県農業開発総合センター

影響の要因

果樹は気候への適応性が非常に低い作物であり、気温の上昇は栽培適地の変化をもたらす。

現在の状況と将来予測

現在、果樹の栽培が難しかった寒地で、果樹の栽培適地が拡大しつつある。北海道では、気温上昇によりワイン用ブドウの栽培適域が拡大し、全国でも有数の栽培面積となっている。

将来、寒地における果樹の栽培適地が更に拡大することが予測されている。熱帯・亜熱帯果樹ではタンカンの現在の適地は少ないが、気温上昇に伴い栽培適地が増加すると予測されている。

今世紀中頃のタンカンの適地
(赤い部分)*
*気候モデル:MIROC5
出典:農業・食品産業技術総合研究機構(2020)

また、アボカドの適地は、今後北方に広がり、今世紀半ばには総面積が現在の2.5倍以上にもなると予測されている(Sugiura et al., 2024) 。

今世紀半ばのアボカドの適地
(緑部分)
出典:農業・食品産業技術総合研究機構(2025)を一部改変

適応策

果樹の栽培適地の北上に伴い、長期的視野に立って各地域に適した果樹の導入(寒地:温帯果樹、暖地:熱帯・亜熱帯果樹等)を進める。産地形成に向け、研究機関・行政・生産者・企業が一体となり地域ブランド化等を推進していくことも重要となる。

分類
温帯果樹の導入
  • 寒地における温帯果樹の産地形成

    導入品目のスクリーニング
    ー
  • 栽培適地の選定
  • 栽培・利用技術開発
    スダチ
熱帯・亜熱帯果樹の導入
  • 温暖な地域における熱帯・亜熱帯果樹の導入検討

    温度管理

    加温施設による低温対策

    マンゴー
  • 地域に適した品種の導入・育成
    ライチ
  • 栽培技術の開発
    防風対策(青色ネット)
地域ブランド化の取組み
  • 地域ブランド化のため様々な工夫

    技術指導等の支援

    生産量拡大、高品質化を目指した技術指導

  • 新たな加工品の開発
  • ブランド化のための発信
分類
温帯果樹の導入
熱帯・亜熱帯果樹の導入
地域ブランド化の取組み
方法
[ 導入品目のスクリーニング ]

現在の気象条件(メッシュ農業気象データ等の活用)や、将来の栽培適地マップ等の研究成果、市場性等を考慮し、新規導入する温帯果樹の候補を選定する。研究機関等の農場において、選定した複数種の試験栽培を行い、耐寒性(越冬可否)、生育状況、果実の品質等から総合的に判断し、導入品目を選定する。先駆的な農家が独自に試験栽培を開始する場合もみられる。

[ 栽培適地の選定 ]

上記で選定した品目について、都道府県内で現地適応性試験を行い、栽培適地を選定する。また産地の意向も反映する。

[ 栽培・利用技術開発 ]

現地適応性試験により適応性の高さが確認できた地域において、栽培・利用技術の開発を進める。導入初期は栽培の不安定化が予測されるため、安定的に栽培可能な栽培法を確立する必要がある。また、その収穫物については、生果実用だけでなく、加工素材としての利用可能性を検討する等、幅広い観点からの利用技術の開発を行う。

多くの熱帯・亜熱帯果樹は、病害虫侵入防止のため主産地からの輸入が禁止されており、また温帯果樹の種類の少ない 6~9 月の収穫が多い事から、市場にとっても有意義という見方もされている(緒方2020)。

[ 温度管理 ]

現時点で沖縄県等亜熱帯地域以外の日本で露地栽培が可能なのは一部の種(ドラゴンフルーツ、アボカド、レイシ、パッションフルーツ(毎年植え替え)、青パパイヤ)となっており、多くの場合は施設栽培が必要となっている。冬季等の低温時には、栽培種に適した生育環境となるよう加温が行われている。

[ 地域に適した品種の導入・育成 ]

日本における栽培条件は、熱帯地域の熱帯果樹栽培環境と異なる。最低気温が低い一方最高気温が高く、梅雨時期は雨が多く日照時間が短い、台風襲来が多い等、地域の気候条件と果樹の特性を踏まえた品種の導入が必要となる。

[ 栽培技術の開発 ]

熱帯・亜熱帯果樹の栽培技術については、アボカド及びパッションフルーツの露地栽培・施設栽培方法や、マンゴーの施設栽培技術の高度化、チェリモヤ及びレイシ(ライチ)の開花結実生理の解明等、様々な研究開発が進められており、知見が増えつつある。

[ 技術指導等の支援 ]

地域ブランド化を目指す品種の普及・啓発や、栽培技術の支援等(技術指導の徹底、新技術の導入等)を進め、栽培面積や生産量の拡大、品質化に繋げている地域(鹿児島県のパッションフルーツ、宮崎県のマンゴー・ライチ等)がみられる。

[ 新たな加工品の開発 ]

生果実用と共に、新たな加工品の作出も行い、幅広い利用拡大を目指す。研究機関と連携して加工原料を作成し、それを利用した製品づくりや販売等の事例(青森県のもも等)も各地でみられる。

[ ブランド化のための発信 ]

生産・加工品開発に加え、それらを消費者や市場へPRし、販売活動にも力を入れる事で地域ブランド化を進める。地域ブランドを核とした地域の魅力向上に繋げている地域(北海道空知のワインを核とした取組等)も複数みられる。

経営評価 (試算)

既存園地を樹種転換する場合、栽培方法の知見取得も必要な為、同樹種への改植よりコストを要する。

  • アボカド(暖地、露地栽培):10a当たり収量600kg、単価1000円/kg、労働 時間182時間、所得214,565円
  • パッションフルーツ(西南暖地、露地栽培):10a当たり収量1,200kg(×商品 化率80%)、単価1,500円/kg、労働時間627時間、所得1,167,408円

(地域戦略(亜熱帯果樹)コンソーシアム(2019))

-
所要時間
短期~(各地で導入が進められている)
短・中期~(一部先駆的に取り組まれている)
短・中期~(一部先駆的に取り組まれている)
社会的視点

生産減少の大きな要因となる温暖化の影響等に対して、資機材による対策や品種構成の見直し等の検討を進める。加えて、高温適応性を有する品種の開発・導入等を推進する。気候変動に適応する生産対策と併せて、化学農薬の使用量低減に資する病害抵抗性を有する品種等の開発・導入や化学肥料の使用量低減等の環境負荷低減策・気候変動緩和策を進める。さらに、社会全体の行動変容につながるよう食料システムの関係者の環境負荷低減対策への理解を促進する(農林水産省2025)。

適応策の
進め方

【気候変動を考慮した考え方・準備・計画】育種の側面からは、高温条件に適応する育種素材を開発するとともに当該品種を育成し、産地に実証導入を図る。このほか、気候変動により温暖化が進んだ場合、亜熱帯・熱帯果樹の施設栽培が可能な地域が拡大するものと予想されることから、高付加価値な亜熱帯・熱帯果樹(アテモヤ、アボカド、マンゴー、ライチ等)の導入実証に取り組み、産地の選択により、既存果樹からの転換等を推進する(農林水産省2023より引用)。

2026年1月改訂
農業・林業・水産業分野