- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
大豆
影響の要因
気温の上昇や降水量の変化は、大豆の収量や品質への影響、および病害虫の増加をもたらす可能性がある。
現在の状況と将来予測
現在、一部の地域で夏季の高温による百粒重の減少や高温乾燥条件が継続することによるさや数の減少、青立ち株の発生等が報告されている。また病害虫(ダイズ黒根腐病、ミナミアオカメムシ等)の分布域拡大や外来雑草の定着等も確認されている。
将来、北海道の大豆栽培では気温上昇による収量の増加が予測される一方、東日本では子実肥大期間と高温時期が重なるため、減収が示唆されている。また、CO2濃度上昇は光合成を促進させ子実重を増加させることが示唆されている。(右図参照)
適応策
栽培技術による対応を行いながら、他品種の導入・転換を平行して行う。基本的な栽培技術の励行、特に多雨・干ばつ等の条件下での管理方法の改善(排水・潅水対策等)や病害虫・雑草への対策を行いながら、環境変化に対応した適品種の検討・段階的導入も進める。
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■排水対策
根圏の拡大を図り、水ストレス
(干ばつ)に強い大豆を作る -
■開花期前後の畦間灌水
さや数の減少、青立ち株の発生への対策
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■診断ナビゲーションの活用出典:農業・食品産業技術総合研究機構
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■産地に適した品種の導入
晩生品種の導入等
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■品種開発
病害虫抵抗性品種等の開発
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■病害虫の防除
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■難防除雑草の防除
早期発見・早期対策が重要
収量・品質を高める為には基本的な栽培技術の励行が重要である。ここでは気温の上昇や降水量の変化への対策として、排水、潅水及び診断技術の概要を記載する。
大豆は湿害を受けやすい作物で、特に発芽時は湿害に弱く、出芽不良や初期生育不良がその後の生育に影響し、結果的に低収になる(栃木県米麦改良協会2019)。従って、排水良好な圃場を選定するとともに、隣接田や用水路からの横浸透による湿害を極力少なくし、排水溝の整備(明渠・暗渠)を行う。地下水位制御システム(FOEAS)も開発されている。
開花期の土壌の過乾燥は花数を抑制し、開花期から粒肥大期にかけては着莢数を減少させるなど、開花期以降の高温・干ばつは、大豆に多くの水ストレスを与えることから「青立ち」の発生に関与する重要な要因である。このため、開花期以降に降水量が少なく、土面の乾燥が進展している場合は、潅水を行い水ストレスを軽減させる。また、播種前の排水対策(明渠・暗渠)を徹底し、良好な根系を発達させておくことも重要である。(以上滋賀県2012より引用)
減収になっている原因や収量が不安定な要因(多収阻害要因)をスマートフォンやパソコンで簡単に診断できるサイトが農研機構により制作されており、自分のほ場についての簡単な質問に答えると、リスクの高い多収阻害要因とその対策がわかりやすく確認できる(農研機構2020)。
寒冷地においては、温度上昇環境下で早生品種「ユキホマレ」よりも、中生品種「リュウホウ」や「エンレイ」の方が莢数や子実数を増やすことができる点で適応性があり、温暖化に対応した品種選択の可能性が示されている。一方暖地においては、「エンレイ」の収量が温度上昇によって低下することが示されており、産地の生育環境に適した品種の導入が重要である。
病害虫に抵抗性を備えたピンポイント改良品種*・系統の育成や、冠水抵抗性、開花期耐湿性、青立ち耐性、高温干ばつ耐性などを備えたピンポイント品種・系統の育成等が進められている(農林水産技術会議事務局2016a)。
*品種の収量や品質などの優良な点はそのままにして、欠点のみを改良する新しい手法。栽培特性などはこれまで使っていた品種と同じで、品種を置き換えるだけで収量増などの効果が期待できる。
病害虫は収量や品質低下の原因となっており、病害防除は発生が懸念される時、害虫防除はその発生初期に実施することが基本となる。気温の上昇により、害虫の多発化、特にカメムシ類による吸汁やハスモンヨトウによる食害が高温で多発生することにより、結莢不良、被害粒の増加が危惧される。これらの対策としては発生予察と適期防除、耐性品種の育成がなされている。農研機構のホームページからダイズの病害虫診断情報が提供されている。
(http://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/daizu2020/index.html)
近年、外来雑草(外国の畑で生き残ったものが輸入飼料などに混入)を中心とした難防除雑草の大豆畑への侵入が問題化している。早期発見・早期対策により少ないうちに防除すると共に、その発生情報を共有し、地域全体で防除する事が重要となる。帰化アサガオ類では気温上昇で成長が早まり、防除できる期間が短くなるとの研究成果もあり、注意が必要である。
排水対策:前年秋~当年春、畦間潅水:開花期~子実肥大期
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病害虫防除:夏、雑草防除:春~夏
*地域によって異なる。
適応策の進め方
【現時点の考え方】
国産大豆は、主に豆腐、納豆、煮豆、味噌等の食品用に使用されているが、需要拡大を図るためには、用途に応じた品質の向上、均質化、大ロット化が強く求められている(滋賀県 2012より引用)。需要に即した大豆を生産する為に、気象条件の変化にも適応しながら栽培技術の開発や他品種導入・品種開発が進められている。
【気候変動を考慮した考え方・準備・計画】
多雨・高温・干ばつ等の対策として、排水対策の徹底を図るとともに、地下水位制御システムの普及を推進する。また、病害虫・雑草対策として、病害虫抵抗性品種・育種素材や雑草防除技術等の開発・普及に取り組む。さらに、有機物の施用や病害虫発生リスクを軽減する輪作体系など気候変動の影響を受けにくい栽培体系の開発に取り組む。(以上農林水産省 2021より引用)