-
■就農・技術指導等の支援
-
■加工品の開発・高付加価値化
- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
ブドウ
影響の要因
平均気温の上昇による発育への影響、極端な高温による障害等の影響がみられる。
現在の状況と将来予測
現在、既存のブドウの産地では、着色不良・着色遅延や日焼け果等の影響が確認されている。
将来、地球温暖化が進んだ場合の生食用黒色品種におけ予測では、着色不良発生地域が拡大する事が示され(下図)、また「適応策」導入により着色不良発生地域が減少することも示されている。
醸造用のブドウ生産量が全国3位(農林水産省2018)の北海道では、醸造用ブドウ栽培に適した気象条件の地域が拡大すると予測されている。
適応策
既存の産地では既に行われている栽培技術による対応を進めながら計画的に新品種への改植等を進め産地の維持・向上を図り、今後生産拡大が期待される地域では、生産から販売まで一貫した支援等を行い産地化を図る事が考えられる。これらが全体としてブドウ産業の更なる発展に繋がる事が期待される。
-
着色不良・着色遅延対策■同化産物の分配管理
環状剥皮
-
■促成栽培
無加温ハウス
-
日焼け果対策■果房の温度低下
-
■黒色系・赤色系の優良着色品種(生食用)
-
■黄緑系品種の導入(生食用)
-
■醸造用ぶどうでの工夫
*今後生産拡大が期待される地域における「地域ブランド化の取組み」については産地の拡大(農業・林業・水産業分野 | 農業 | 果樹)」を参照下さい
各生育期に応じた様々な栽培技術(肥培管理、同化産物の分配管理、促成栽培等)が開発されているが、ここでは技術事例を記載する。
成熟期の高温等による着色不良(赤色系・黒色系品種)の発生を軽減する技術として、光反射シートの敷設(シートで光を反射させて全体の日射量を増加させる)や、環状剥皮(満開後 30 ~ 35 日の環状剥皮は、地上部に同化産物を多く蓄積させて、着色を促す(薬師寺 2010))や促成栽培(着色期の前進)が行われている。
直射日光が当たる果房には傘かけ(クラフトかさ等)を行い、果房の日焼け等を防ぐ。
夏季の気温が高い西南暖地においても良好な着色(濃い紫黒色)が得られる「グロースクローネ(農研機構2018)」や「涼香(福岡県)」、「ナガノパープル(長野県)」等、赤色系では食味が良好で着色に優れた「サニードルチェ(山梨県)」等が開発され、地域で導入が進められている。
着色不良対策として、着色の問題がない黄緑系品種の導入を推進する事が考えられる。「シャインマスカット(農研機構)」や「ジュエルマスカット(山梨県)」等が開発・普及されている。
醸造用では秋の長雨や台風の影響を受けるリスクが少ない早生の白ワイン用ブドウ品種「コリーヌヴェルト(山梨県果樹試験場他)」やブドウの主要病害の一つである“べと病”に対し耐病性等をもつ「モンドブリエ(上野他2017)」等開発され、導入が期待されている。
醸造用ぶどうの栽培適地が拡大すると予測されている北海道では、「醸造用ぶどう導入の手引」を作成し、就農までのスケジュールや具体的な栽培技術を紹介するなど醸造用ぶどう栽培の支援を行っている。また生食用では、熟練農業者の経験や勘に基づく高度な技術を、新規就農者が短期間で習得できる学習システムなどが提供されている(農林水産省 参照2021年7月30日)。
岩手県(岩手県農業研究センター他 2018)では、①地域に適した醸造用、加工用品種の導入、②低コストで省力的な垣根仕立て栽培、③新たな加工品開発と一連の流れで取組が行われており、ワインの高付加価値化の研究も進められている。
毎年、ランニングコスト(経費)や労力(手間)が発生する
改植(初期投資)にコストを要する
新園開発や新植(初期投資)には
大きなコストを要する
長期(品種開発はおよそ10年以上を要する)
産地形成には更に時間を要する)
適応策の進め方
【現時点の考え方】
ぶどうでは、着色不良対策として、「グロースクローネ」等の優良着色系品種や「シャインマスカット」等の黄緑系品種の導入を推進するとともに、成熟期の高温による着色障害の発生を軽減するため、環状剥皮等の生産安定技術の普及を推進する(農林水産省 2021より引用)。
【気候変動を考慮した考え方・準備・計画】
栽培に有利な温度帯が北上した場合、新たな地域において、産地形成することが可能になると考えられる。このような新たな産地形成に際しては、低コスト省力化園地整備等を推進する。果樹は永年性作物であり、結果するまでに一定期間を要すること、また、需給バランスの崩れから価格の変動を招きやすいことから、他の作物にも増して、長期的視野に立って対策を講じていくことが不可欠である。したがって、産地において、温暖化の影響やその適応策等の情報の共有化や行動計画の検討等が的確に行われるよう、主要産地や主要県との間のネットワーク体制の整備を行う必要がある(以上農林水産省 2021より引用)。