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【STEP 7】 適応策の取りまとめと地域気候変動適応計画の策定

STEP1~STEP6で整理した情報を取りまとめ、地域適応計画を策定します。

ここまでのSTEPで地域の特徴や気候変動影響、その適応策に関する情報が収集されているため、これらの情報を取りまとめることで地域適応計画を策定することができます。

気候変動の影響予測は研究の進展とともに更新され、地域の社会・経済等の状況も常に変化するため、地域適応計画は、最新の情報を用いて定期的に影響評価を実施し、適応策を見直すことが重要です。

今回の計画策定/変更では十分に検討できなかった内容について、次期計画以降に段階的に充実・強化していくことも考えられます。今回の計画策定/変更で検討した内容や課題を振り返り、次期計画の担当者に引き継ぎ、計画の充実に活用していくことが重要です。

 

表 38  計画策定/変更で検討した内容・課題のチェックリスト

チェック項目

実施内容、課題など

1.推進体制の構築

計画策定/変更に当たって、庁内で適応策を検討する会議体を設置するなど、連携体制を構築できたか。

 

庁内外の研究機関・団体、ステークホルダー等と連携して情報収集や適応策の検討を行うことができたか。

 

2.策定/変更に向けた準備(STEP1)

計画策定/変更の作業工程について、当初計画したスケジュールに沿って進めることができたか。

 

地域の気象・気候の特徴を十分整理できたか。

 

3.これまでの/将来の気候変動影響の整理(STEP2~STEP3)

最新の科学的知見を用いて地域の気候変動影響を整理できたか。

 

地域の気候変動影響に関連する情報を収集できたか。
→どのような情報を収集できたか記録しておきましょう。
・庁内の行政資料や計画
・地域の住民、事業者等の意見
・研究論文 等

 

4.影響評価の実施 (STEP4)

これまでの/将来の気候変動影響の整理結果に基づいて影響評価を行うことができたか。

 

庁内関連部局や関係者と共に影響評価を実施できたか。
→影響評価を共に実施した関係者を記録しておきましょう。
・庁内関連部局
・有識者(エキスパート・ジャッジ) 等

 

収集した気候変動影響の情報だけでなく、現在や将来の地域の状況(地理・社会・経済等)も踏まえて影響評価を実施できたか。

 

5.既存施策の気候変動影響への対応力の整理、適応策の検討 (STEP5~STEP6)

影響評価の結果、重要な気候変動影響であると特定された影響について、既存施策を収集し、気候変動影響への対応力を整理できたか。

 

新規または追加的な施策が必要と判断された気候変動影響に対して、複数の適応オプション(適応策の候補)を検討し、優先度を評価できたか。

 

6.地域気候変動適応計画の進捗状況の確認 STEP8

適応策の進捗状況を確認し、必要に応じて指標・目標を見直すための体制を構築できたか。

 

 

追加事例

適応策の取りまとめの方法

※追加事例は、国立環境研究所が本マニュアル策定後(令和5年9月)に追加した事例です。

熊本県荒尾市「荒尾市地球温暖化対策実行計画」

熊本県荒尾市では、令和4年3月に策定した「荒尾市地球温暖化対策実行計画」において、気候変動の影響に対する各主体の適応策を記載しています。

その中では、市民、事業者、行政と主体別に分けて取組の内容を記載しています。

出典:荒尾市地球温暖化対策実行計画(令和4年、荒尾市)

静岡県浜松市「浜松市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」

静岡県浜松市は、令和3年4月に新規策定した「浜松市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」で、適応策を分野別に整理しています。整理に際して、各分野で懸念される影響と浜松市が取り組む適応策について、アルファベットを用いて対応関係を示しています。

※表中のアルファベットは、「懸念される影響」と「適応策」の対応関係を示す。

出典:浜松市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(令和3年、浜松市)

東京都日野市「第4次日野市地球温暖化対策実行計画」

東京都日野市では、令和4年4月に策定した「第4次日野市地球温暖化対策実行計画」で、市が推進する適応策と地域で取り組む適応策を記載しています。中でも、地域で取り組む適応策については、地域の意識を醸成することを考え、気候や影響に関する解説を行いながら取組を記載しています。

出典:第4次日野市地球温暖化対策実行計画(令和4年、日野市)

 

参考情報

気候変動によるものか明確でない影響の扱い方

地域適応計画においては、区域における優先度の高い影響を掲載することが考えられますが、その影響が複合的な要因によるものであるため、気候変動によるものか明確ではなく、地域適応計画に記載するか判断が難しい場合もあると考えられます。そのような影響は、気候変動との関係が明確でない旨を示した上で、地域適応計画に記載し、計画の変更に合わせて情報を更新する方法が考えられます。

 

事例

気候変動の影響が明らかでない場合の記載

栃木県「栃木県気候変動対策推進計画」

栃木県は、令和3年に策定した「栃木県気候変動対策推進計画」で栃木県内において現時点で見られる気候変動による影響を整理しています。

この際、気候変動に関する影響であるか明らかになっていない旨を示し、影響の可能性について記載しています。

50 「栃木県気候変動対策推進計画」における記載例

図 50 「栃木県気候変動対策推進計画」における記載例

出典:栃木県気候変動対策推進計画(令和3年、栃木県)

 

コラム

英国気候影響プログラム、ISO規格の実施準備や実施計画の考え方

英国気候影響プログラム(UKCIP)や国際規格(地方自治体とコミュニティのための適応計画策定ガイダンス規格、 ISO14092)において、実施準備や実施計画のステップで記載されている重要な考え方を紹介します。

 

<地域適応計画の普及等>

地域適応計画の実施準備において、周辺の地方公共団体、事業者、地域住民に対して適応計画を普及することや、適応計画への理解を得ることが記載されています。

策定した地域適応計画を周辺の地方公共団体や事業者に共有する、パブリックコメントを実施するなどが考えられます。

 

<実施計画策定時に検討する内容>

・ 関係者の役割と責任

・ 適応策の実施方法(人材、予算、設備等のインプット、想定される結果を含む)

・ 機会に関する適応策を実現するための環境の整備

・ 実施段階での経験を踏まえて実施計画を更新するためのプロセス

・ 利害関係者との対話

・ 目標

・ 適応策の実施に伴うリスク・機会の評価、対処方法

 

地域適応計画においても、これらの内容について可能な範囲で記載することが考えられます。

 

出典:英国気候影響プログラム(UKCIP)、地方自治体とコミュニティのための適応計画策定ガイダンス規格(ISO14092)より作成

地域気候変動適応計画策定マニュアル

はじめに
1. 地方公共団体による気候変動適応の推進と地域気候変動適応計画
2. 本マニュアル及びツールの使い方
3. 地域気候変動適応計画の策定/変更
4. 国立環境研究所気候変動適応センターによる支援

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