b3_6

【STEP 6】 適応策の検討

STEP5で「新規または追加的な施策が必要」とされた気候変動影響に対し、具体的な適応策の情報を収集し、今後の対応を検討します。

 

地域適応計画には、今後どのような適応策を実施していくかについての情報を記載します。そのため、STEP5で整理した既存施策の対応力の方向性を基に、どのような適応策を実施していくか検討します。

44 STEP6の実施フロー

図 44 STEP6の実施フロー

 

STEP4の気候変動影響の評価において、地方公共団体で優先度が高いと思われる分野や項目などについて、情報やデータの不足により、適応策の検討等が困難となるケースも考えられます。そのような場合には、気候変動影響の把握を目的としたモニタリングを計画的に実施することも考えられます。

 

なお、STEP8では適応策の進捗状況を確認します。そのため、各適応策の進捗状況を把握するための指標(実施率等)を設定することが望まれます。この段階で各適応策の指標についても合わせて情報収集しておくとともに、各分野の施策情報を記載する際は、どの部局が担当しているか明記することで、STEP8の適応策の進捗状況の確認がスムーズに実施できます。

適応の取組は行政だけでなく、区域内のあらゆる主体にも求められます。そのため、計画を策定する際には、住民や事業者など、区域内における適応策の主な取組主体の役割を記載することも考えられます。

 

「新規または追加的な施策が必要」となった場合は、可能な限り多くの適応策の候補(オプション)を抽出し、検討することで、より適切で効率的な適応策を選ぶことが可能となります。収集した適応策オプションの効果や実現の可能性を以下のような観点から検討し、施策の優先度付けを行った上で、実施する適応策を決定します。適応オプションの抽出に当たっては、「STEP 6で活用できる参考資料一覧」(表 36)にある参考資料が参考になります。

①気候変動の影響分野と影響の深刻度に応じた適応策のレベル

気候変動影響が深刻であればあるほど、その影響に対する適応策の重要性及び優先度が高まる一方で、適応策で回避できる影響には限りがあるため、影響の大きさに応じて適応策を慎重に検討する必要があります。表 33は、気候変動の影響の深刻度に応じた適応策のレベルを気候変動の影響分野ごとに整理したものです。

例えば、豪雨などの気象災害に対して、人間の命を守るための適応策を実施する場合、中小の水・土砂災害に対しては、堤防などによる「防御」策を講じることで影響を回避できる可能性がありますが、ハードでは守れないレベルの災害となる場合は、ある程度の影響は避けられないものの、影響を軽減するための適応策を講じる必要があります。さらに想定外の大災害に対しては、例えば、あらかじめ危険なエリアからの移転を行うことなど、根本的な改善が必要となります。

表 33 守る対象と影響の深刻度に応じた適応策のレベル

影響の深刻度に応じた適応策のレベル

防御

順応・影響最小化

転換・再構築

守る対象(気候変動の影響分野)

人間の命を守る
(豪雨、極端な感染症対策等)

中小の水・土砂災害

温暖化による災害外力の上昇によりハードでは守れなくなった災害

複合災害(天然ダムの崩壊やダム事故等)等の想定外の大災害

生活の質や産業を守る(食料、熱中症、水質対策等)

対策により影響が避けられる程度の気候変動

影響が避けられない猛暑等

農業や生活の維持の困難な状態の定常化

倫理や文化を大事にする(生物多様性、伝統文化、地域固有性の保護・継承等)

保護・継承ができる程度の気候変動

保護・継承が一部でできなくなる影響

自然生態系や伝統文化等の維持の困難な状態の定常化

出典:「気候変動適応策のデザイン」(S-8, RECCA) p.15より作成

 

②時間スケール

気候変動は長期にわたって影響を及ぼすことから、適応策を検討する上では、それぞれの影響に対して、いつどのような対応を講じるか検討することが大切です。

表 34では、影響が生じる時期と適応策の考え方がまとめられています。例えば、既に生じている影響や短期的な影響は、影響が生じる可能性が高く不確実性が低いため、被害からの回復や影響への準備を進めることが求められますが、中長期的な影響は、将来予測等の不確実性が高いため、状況変化に応じた対応ができるよう計画的に進める必要があります。中長期的な影響に適応するためには、適応策を実施するまでに要する期間を考慮して適切なタイミングで適応策を実施できるようにすることや、適応策の効果が継続する期間(適応策の限界)を踏まえて、影響の程度に応じて適応策を選択・変更することも重要です。

 

表 34 影響が生じる時期とその特徴及び対応

影響が生じる時期

特徴

対応

既に生じている影響
短期的な影響

影響が生じる確率が高い
(不確実性が低い)

・既に生じてしまった影響からの回復
・現在発生している影響への対策
・今後発生する影響への準備

中長期的な影響

不確実性が高い

・影響の将来予測結果を踏まえて、現時点から適応策を講じる
・状況変化に応じて、適応策の導入を計画する

出典:「気候変動適応策のデザイン」(S-8, RECCA) p.16より作成

 

③適応策の優先付け

適応策を実施する予算や人員は限られており、全ての適応策を同時に実施することが困難となる場合があるため、実施可能で優先度の高いものから実施していく必要があります。適応策の候補の中から優先度を検討する際の着眼点の例を表 35に示します。

表 35 適応策の候補の優先度を検討する際の着眼点の例

項目

着眼点の例

緊急性

・緊急性の高い影響(既に生じている影響、短期的に生じる可能性の高い影響)であるか
・実施までに掛かる時間を考慮した場合、すぐに準備が必要となるか
参考資料:
・インフォグラフィック
・適応オプション一覧(資料集)

有効性

・適応策の効果が見込めるか 
・将来起こり得る影響に十分対応できるか
参考資料:
・インフォグラフィック
・適応オプション一覧(資料集)
・適応策データベース(p.103)

経済的・技術的実施可能性

・導入及び維持のための予算や人材は確保できるか
・利用可能な技術や知見があるか
参考資料:
・適応オプション一覧(資料集)
・適応策データベース(p.103) 等

社会の受入可能性、公平性

・地域の価値観に合っているか
・適応策の効果や便益は多くの人々に行き渡るか(あるいは立場の弱い人々に行き渡るか)
※ステークホルダーとの対話等を通じて受入れ可能性を探ることなども有効です。

実施による
二次的な効果・影響

・環境に負の影響を及ぼさないか
・他の取組とのトレードオフはないか
・副次的な効果はあるか
参考資料:
・適応オプション一覧(資料集)

 

資料集では、適応策の特徴、効果の継続期間、費用等を検討・評価した上で、モニタリング結果に基づいて適応策を選択する「アダプテーションパスウェイ」の手法を紹介しています。

 

ひな型編 4.1.3 分野・項目別の主な基本施策
ひな型編 5.3 各主体の役割

事例

適応策の方向性の提示

①埼玉県「地球温暖化対策(適応策)の方向性」

埼玉県は、令和2年3月に公表した「地球温暖化対策(適応策)の方向性」の中で、関連既存施策等の現状の点検結果(図 41参照)に基づき、今後の取組の方向性を短期・中長期に分けて記載しています。また、追加的に検討が必要な事項を「残された検討課題」として記載をしています。

45 埼玉県における適応策

図 45 埼玉県における適応策

出典:地球温暖化対策(適応策)の方向性(令和2年3月、埼玉県)

 

②徳島県「徳島県気候変動対策推進計画(適応編)」

徳島県は令和3年3月に公表した「徳島県気候変動対策推進計画(適応編)」の中で、気候変動影響に対する適応策の方向性と共に、適応策に関する数値目標(指標)を設定しています。

46 徳島県における適応策の今後の方向性と主な指標

図 46 徳島県における適応策の今後の方向性と主な指標

出典:徳島県気候変動対策推進計画(適応編)(令和3年3月、徳島県)

 

追加事例

適応策の方向性の提示

※追加事例は、国立環境研究所が本マニュアル策定後(令和5年9月)に追加した事例です。

鳥取県「令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン」

鳥取県では、令和4年3月に改定した「令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン」で、気候変動への適応策を整理しています。同プランは県条例に基づく「環境基本計画」、地球温暖化対策推進法に基づく「地方公共団体実行計画(区域施策編)」、気候変動適応法に基づく「地域気候変動適応計画」として位置づけて、各計画を盛り込んで策定されています。

その中で、これまで及び将来の影響の整理、現在行っている適応策、今後の方針を分野ごとに並べて記載する形をとっています。

出典:令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン(令和4年、鳥取県)

北海道旭川市「旭川市気候変動適応計画」

北海道旭川市では、令和4年3月に新規策定した「旭川市気候変動適応計画」で、分野・項目ごとに気候変動影響と適応策の整理を行っています。

その中で、適応策については、「既に実施している施策」と、「今後、状況に応じて実施する施策」を分けて表示することにしています。

 

(中略)

出典:旭川市気候変動適応計画(令和4年、旭川市)を一部編集

長野県松本市「まつもとゼロカーボン実現計画」

長野県松本市では、令和4年8月に策定した「まつもとゼロカーボン実現計画」において、気候変動影響と適応策の実施状況を加味した「適応レベル」を設定しています。

「適応レベル」は、「気候変動適応の理論的枠組みの設定と具体化の試行(白井信雄(2014))」を参考にしながら設定されました。このレベルは、策定後にも管理ができることを念頭に計画策定部局で設定を行い、策定時の適応策の実施状況と、これまで確認されている気候変動影響を加味しています。それぞれのレベルの凡例は以下のとおりです。

レベル1:対策により影響を発生させない(もしくは影響を抑え、保護する)防御(可能)レベル

レベル2:影響が深刻であり、防御のみでは、ある程度の影響の発生が避けられないため、ソフトウェア・ヒューマンウェアを組み合わせて影響を軽減する(もしくは影響を軽減し、ある程度の変化は許容し、重点対象を保護する)順応(可能)レベル

レベル3:影響が避けられず、かつ甚大であるため、脆弱性の要素である感受性の根本治療が必要となる転換・再構築レベル

 

出典:まつもとゼロカーボン実現計画(令和4年、松本市)を一部編集

 

事例

地域に根ざした適応策の検討

京都府「気候変動に適応した魅力的な京都をつくる!~京都府の気候変動適応施策~」

京都府は令和3年3月に公表した「京都府地球温暖化対策推進計画」の中で「京都府らしさを活かした適応の取組の推進」をすることとしています。例えば、漁獲量が増えている魚種のブランド化や、だしパックとして開発・商品化する等の取組を進めています。

47 京都府らしさを活かした適応の取組の推進例

図 47 京都府らしさを活かした適応の取組の推進例

出典:気候変動に適応した魅力的な京都をつくる!~京都府の気候変動適応施策~(平成29年、京都府)を一部修正

 

事例

施策と関連するSDGsのゴールの表示

福島県郡山市「郡山市気候変動対策総合戦略アクションプラン」

福島県郡山市は令和3年12月に公表した「郡山市気候変動対策総合戦略」の毎年のアクションプランの中で、各事業に対して関連するSDGsのゴールを対応させて整理しています。

48 各事業とSDGsのゴールの例

図 48 各事業とSDGsのゴールの例

出典:郡山市気候変動対策総合戦略アクションプラン2021(令和3年、福島県郡山市)

 

参考情報

適応策に関する情報の収集に活用できる参考資料

適応策に関する情報や事例を収集する際は、「気候変動適応計画」やA-PLAT上の様々なコンテンツが活用できます。

各分野の適応策の概要や種類についての情報を入手する際は、表 36に示す以下のページが参考になります。庁内コミュニケーションシート(p.36)では、分野別の主要な小項目について、影響の概要や適応策の例などを掲載しています。インフォグラフィック(資料3-1)では、上記のうち一部の項目に関して、適応策の例を分類して紹介するとともに、それぞれの適応策の分類について、方法やコスト、対策に掛かる所要時間を紹介しています。適応オプション一覧では、各分野の適応策について、適応策の選択肢(適応オプション)の中から適応策を検討する際に参考となる、有効性、トレードオフ、コベネフィット、効果の限界条件、実際の導入地域、効果発現までの時間を整理しています。(使い方は資料集を参照。)

適応策に関する事例として、国の気候変動適応計画に示された適応策や、近隣の都道府県・市町村を含む他の地方公共団体の適応策の事例を参考にすることも考えられます。適応策データベース(p.103)や取組事例のインタビュー(p.105)では、適応策の検討背景や苦労した点、工夫点などを含めた内容が確認できます。

 

A-PLAT上の各コンテンツに関する詳細な説明は、本マニュアルp.98~106を参照してください。また、その他にも適応策の事例を示す各省庁の適応計画や報告書等があります。本マニュアル資料集を参照してください。

 

表 36 STEP 6で活用できる参考資料一覧

参考資料の種類

作成者

資料名等

紹介ページ
資料番号(資料集)

各分野の適応策の概要や種類

A-PLAT

庁内コミュニケーションシート

p.36

A-PLAT

インフォグラフィック

3-1

環境省

適応オプション一覧

資料集

自治体の適応策の事例

A-PLAT

適応策データベース

p.103

A-PLAT

取り組み事例インタビュー(適応策)

p.105

国の気候変動適応計画における適応策

閣議決定

気候変動適応計画

2-1

A-PLAT

国の適応計画一覧から抽出した適応策一覧

2-1

各省庁の適応計画など

農林水産省

農林水産省気候変動適応計画

2-3

国土交通省

国土交通省気候変動適応計画

2-4

各分野の適応策検討のための手引き・マニュアル

農林水産省

農業生産における気候変動適応ガイド(水稲編、うんしゅうみかん編、ぶどう編、りんご編)

3-2

水産庁

気候変動に対応した漁場整備方策に関するガイドライン

3-4

環境省

気候変動による湖沼の水環境への影響評価・適応策検討に係る手引き

3-5

環境省

国立公園等の保護区における気候変動への適応策検討の手引き

3-6

環境省

生態系を活用した気候変動適応策(EbA)計画と実施の手引き

3-7

環境省

生物多様性分野における気候変動への適応

3-8

環境省

熱中症環境保健マニュアル

3-18

環境省

民間企業の気候変動適応ガイドー気候リスクに備え、勝ち残るために―

3-25

環境省

地方公共団体における廃棄物・リサイクル分野の気候変動適応策ガイドライン

3-26

環境省

まちなかの暑さ対策ガイドライン 改訂版

3-28

 

 

追加資料

ローカルなグリーンインフラの始め方

※追加資料は、国立環境研究所が本マニュアル策定後(令和5年9月)に追加した事例です。

総合地球環境学研究所:https://www.chikyu.ac.jp/rihn/publicity/detail/339/
2023年発行

対象STEP:STEP 6

【概要】

総合地球環境学研究所の実践プロジェクト「人口減少時代における気候変動適応としての生態系を活用した防災減災(Eco-DRR)の評価と社会実装」における研究と実践の成果を、地域社会におけるEco-DRRやグリーンインフラの実装の視点でまとめた資料。

「グリーンインフラの地域実装とは」、「アクションリサーチからの学び」、「Eco-DRRプロジェクトの実践からの学び」の3章からなり、グリーンインフラの地域実装に際する課題や技術、プロセスなどについて学ぶことができる。

 

追加資料

水災害リスクを踏まえた防災まちづくりのガイドライン

※追加資料は、国立環境研究所が本マニュアル策定後(令和5年9月)に追加した事例です。

国土交通省:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001406357.pdf
2021年発行

対象STEP:STEP6

【概要】

水災害リスクを踏まえた防災まちづくりを実施するに当たっての基本的な考え方を取りまとめたもの。防災まちづくりに活用できる水災害に関するハザード情報や、地域における水災害リスクの評価手法、水災害リスクを踏まえた防災まちづくりの方向性、水災害リスクを軽減又は回避する対策、関係者間の連携について掲載されている。

 

追加資料

気候変動適応における広域アクションプラン

※追加資料は、国立環境研究所が本マニュアル策定後(令和5年9月)に追加した事例です。

対象STEP:STEP 1~8

【概要】

全国7ブロックの気候変動適応広域協議会で、地域の関係者の連携が必要な気候変動影響をテーマとした分科会を立ち上げ、構成員の連携による適応策を検討した事業。令和5年3月に広域アクションプランとして各分科会の成果を公表した。(令和2年度~令和4年度)

 

■資料集に掲載されている参考資料

関連する資料集に掲載されている参考資料をすぐ確認できるよう、抜粋してHTML版で掲載しています。

 

参考資料2-1

気候変動適応計画

対象STEP : STEP 6,8

【概要】

気候変動適応法に基づき、気候変動適応に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画。気候変動適応に関する施策の基本的方向性に加え、気候変動適応に関して国が実施する分野別施策と基盤的施策について記載している。

 

参考資料2-3

農林水産省気候変動適応計画

対象STEP : STEP 6

【概要】

農林水産分野を対象に、全国的な既存影響、将来影響、取組(適応策)について取りまとめた計画。

 

参考資料2-4

国土交通省気候変動適応計画

対象STEP : STEP 6

【概要】

国土交通分野に関連する気候変動影響(自然災害分野、水環境・水資源分野、国民生活・都市生活分野等)を対象に、気候変動による影響、適応策の基本的な考え方や適応に関する施策について取りまとめた計画。

なお、令和3年12月に改定された「国土交通省環境行動計画」(国土交通省)でも気候変動への適応策について記載されています。

 

参考資料3-1

インフォグラフィック

対象STEP : STEP 2,3,5,6

【概要】

7分野の代表的な項目について、影響の要因、現在の状況と将来予測、適応策の関係性を示した上で、適応策を体系的に整理した資料。適応策を理解し、各地域で検討する上で活用できる。

 

参考資料3-2

農業生産における気候変動適応ガイド(水稲編、うんしゅうみかん編、ぶどう編、りんご編)

対象STEP : STEP 2~4, 6, 8

【概要】

主に都道府県の農業部局担当者や普及指導員を対象とした、産地自らが気候変動に対するリスクマネジメントや適応策を実行する際の指導の手引き。

 

参考資料3-4

気候変動に対応した漁場整備方策に関するガイドライン

対象STEP : STEP 2~7

【概要】

気候変動が藻場、干潟、さんご礁、魚類に及ぼす影響について、現況及び将来予測が記載されている(日本全国図単位での分布・出現状況の記載あり)。また、 気候変動に対応した漁場整備の実施手順や適応計画作成の留意事項、整備内容に応じた対応策等を参照できる。

 

参考資料3-5

気候変動による湖沼の水環境への影響評価・適応策検討に係る手引き

対象STEP : STEP 2~8

【概要】

気候変動による湖沼の水環境等の将来変化予測や、それによる影響及び適応策を検討していくに当たっての考え方や留意点、基礎的な知識、検討事例等を把握することができる。

 

参考資料3-6

国立公園等の保護区における気候変動への適応策検討の手引き

対象STEP : STEP 2,3,6,8

【概要】

自然生態系分野における適応の基本的な考え方や、 国立公園等の保護区における適応策検討の具体的な手法、必要となるデータ、留意事項等を把握できる。また、モデル保護区(大雪山国立公園及び慶良間諸島国立公園)における事例も参照できる。

 

参考資料3-7

生態系を活用した気候変動適応策(EbA)計画と実施の手引き

対象STEP : STEP 6

【概要】

生態系を活用した気候変動適応策(EbA)の導入の入り口として、基本的な考え方、国内外の動向や事例、地域で実践する適応策としてのメリットや導入のコツなどを紹介した手引き。

 

参考資料3-8

生物多様性分野における気候変動への適応

対象STEP : STEP 2,3,6

【概要】

「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について(意見具申)」(平成27年3月 中央環境審議会)の内容を中心に気候変動の影響をまとめ、生物多様性分野における気候変動への適応の考え方や適応策を事例と共に示したもの。

 

参考資料3-18

熱中症環境保健マニュアル

対象STEP : STEP 6

【概要】

「熱中症とは何か」「熱中症を防ぐためには」「保健指導のあり方」等について紹介している保健活動に関わる方々向けの保健指導マニュアル。

 

参考資料3-25

民間企業の気候変動適応ガイド―気候リスクに備え、勝ち残るために―

環境省:http://www.env.go.jp/press/106606.html
2022年発行

対象STEP : STEP 2,3,6

【概要】

気候変動適応の取組を始めようとしている民間企業の経営及び実務に関わる方々を対象に、気候変動と事業活動との関わりについての理解を深め、主体的な取組を促進することを目的としたガイド。気候変動の事業活動への影響と適応の取組の基本的な進め方、民間企業が適応に取り組むメリットなどのほか、参考資料編では、気候変動影響に関する参考資料や国内外の事例も掲載。

 

参考資料3-26

地方公共団体における廃棄物・リサイクル分野の気候変動適応策ガイドライン

環境省:https://www.env.go.jp/press/107535.html
2019年発行

対象STEP : STEP 2~4,6~8

【概要】

ガイドラインで示す適応策を検討する8つのステップを踏むことで、廃棄物・リサイクルの一連の処理工程の中で、地域の特性に応じた、優先度が高い適応策を検討することが可能となり、実施する際の留意事項や先行事例等も参照できる。また、廃棄物・リサイクル分野の適応策の検討に取り組む際の参考となる基礎的な知識や情報、考え方も示されている。

 

参考資料3-28

まちなかの暑さ対策ガイドライン 改訂版

対象STEP : STEP 5,6

【概要】

まちなかの暑さ対策を推進することを目的に、人が感じる暑さについて科学的な解説を行い、効果的な暑さ対策の実施方法についての考え方や関連技術情報等を紹介しているガイドライン。

 


情報整理シートの記入例

表 37 STEP6(例:農業・林業・水産業分野)

 

【STEP2】
これまでの気候変動影響の整理

省略

【STEP5】
既存施策の気候変動影響への対応力の整理

【STEP6】
適応策の検討

分野

大項目

項目

2-1

2-2

5-1

5-2

既存施策の対応力の確認における情報から、適応策の方向性を整理

これまでに生じていると考えられる気候変動影響を整理

2-1の原因となる気象現象を整理

・2-1への既存施策や過去の対処方法を整理
・施策の立案の基準となった数値があれば整理

既存施策がSTEP3へ十分に対応力を有するのか整理

農業・林業・水産業

農業

水稲

水稲における一等米比率の低下
(出典:農業振興計画)

高温
(出典:農業振興計画)

・高温対策栽培技術(移植時期の変更や適切な水管理)の普及
【農林水産部、○○計画】

・高温耐性品種の試験的導入
【農林水産部、○○計画】

現状の施策では、十分な効果が認められないため、新規または追加的な施策が必要

今後、下記の適応策に取り組んでいく。
・高温耐性品種の開発
(指標:高温耐性品種の開発数)
・将来予測研究の促進
(指標:●年までに区域内の品質と気候・気象要因の分析終了)
・・・

農業・林業・水産業

・・

・・・

・・・

・・・

既存対策があり、現時点で影響も生じていないため、既存の施策で十分対応可能

今後も既存施策を継続していく。
(指標:○○)

農業・林業・水産業

・・

・・

・・・

・・・

・・・

既存対策があるが、中長期的な可能性を考慮する必要があるため、新規または追加的な施策を今後検討する

影響を見つつ、新規または追加的な施策を今後検討

農業・林業・水産業

・・

・・

既存施策がないため、新規または追加的な施策を今後検討

影響を見つつ、新規または追加的な施策を今後検討

 

参考

不確実性を含む将来影響に対して適応策を検討する際の考え方

中長期的な将来影響の予測には不確実性があります。社会経済も変化していくため、現段階で対策を特定することが難しい場合があります。このような中で適応策を検討する際の考え方を示します。

①順応的管理

気候変動影響の将来予測やモニタリング結果など、最新の科学的知見を収集し、気候変動影響評価を定期的に実施し、その結果を踏まえて、柔軟に、できるだけ手戻りがないように適応策を検討・実施します。その際、人口減少、高齢化等の社会環境の変化についても、最新の予測等を考慮して検討することで、より現実的な適応策を検討することが可能となります。

②手戻りの少ない適応策の考え方(例)

長期間にわたり使用される施設等に関しては、気候変動の影響を受けた場合の対応についても検討しておくことが重要です。例えば、水害対策においては、気候変動の影響による降雨量の増加や台風の強大化等に備え、安易かつ安価に改造することが可能な設計の工夫をあらかじめ行っておく、あるいは気候変動の影響が明確になった段階で改築する等についてあらかじめ方針を定めておくことが望ましいとしています。

49 新木津川水門の設計の考え方(大阪府)

図 49 新木津川水門の設計の考え方(大阪府)

出典:大阪の三大防潮水門更新事業~気候変動への対応~(第25回海岸シンポジウム資料)

③多様な効用を有する取組を検討する

発生する頻度は低いものの、一たび発生すると大きな被害をもたらす災害への対策の考え方として、「後悔しない政策」があります。災害時には減災効果があり、非災害時にも社会的効用があるというように、多様な効用を有する対策を指します。例えば、高潮・津波対策として、防潮堤・防波堤等ににぎわい空間を創出することで平常時における多様な効用を付与します。

出典:「気候変動適応策のデザイン」(S-8, RECCA)、「気候変動への『適応』を考える」(肱岡)、「気候変動を踏まえた水害対策のあり方について 答申」(2020年、社会資本整備審議会)、「低頻度メガリスク型の沿岸域災害に対する多様な効用を持つ対策の評価に関する研究」(国土交通省 国土技術政策総合研究所)より作成

地域気候変動適応計画策定マニュアル

はじめに
1. 地方公共団体による気候変動適応の推進と地域気候変動適応計画
2. 本マニュアル及びツールの使い方
3. 地域気候変動適応計画の策定/変更
4. 国立環境研究所気候変動適応センターによる支援

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