「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

リアルタイム洪水シミュレータ 「DioVISTA/Flood」

株式会社日立パワーソリューションズ

業種:製造業
掲載日 2020年9月10日
適応分野 自然災害・沿岸域

会社概要

株式会社日立パワーソリューションズロゴ

日立パワーソリューションズは、1960年の創業以来、日立グループの一員としてエネルギー・インフラ関連分野において製品、サービス、ソリューションを提供。近年は、OT(オペレーショナルテクノロジー)とIT(インフォメーションテクノロジー)をデジタルで融合させた高付加価値サービス「デジタル×OTサービスプラットフォーム」の提供を推進。高度な技術を持つ多様な分野の専門家の存在と、サービス拠点の全国展開という強みを生かし、お客さま事業の発展に貢献している。

気候変動による影響

激甚な水害が各地で頻繁に発生している。気候変動により将来的に水害リスクは2倍から4倍に増加するといわれている。被害を最小限に抑えるために事前の水害リスク情報や水害予測が求められている。

適応に関する取り組み

「DioVISTA/Flood」は、3次元地図上で水害をシミュレーションするためのソフトウェアである。2006年の発売開始以来、水害と戦う、国内外の様々な業務で活用されている。たとえば、国内の一級河川・二級河川に関する洪水ハザードマップの一部は、DioVISTA/Floodの活用により作成されている。

DioVISTAの最大の特徴は、計算速度の速さである。特許技術Dynamic DDM(注)によってシミュレーションの高速化を実現したため、タイムリーな予測が可能になった。DioVISTA/Floodは、降雨予測データを取り込み、河川やダムの水位、市街地の浸水域を予測する(図1・図2)。予測結果は、地図上にビジュアルに表現されるほか、ユーザにアラートが通知される。

また、1000年に一度の大雨で河川の水が溢れ、さらに破堤したらどうなるのか等、想定される状況を入力し、シミュレーションを行うことも可能である。国土交通省「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4版)」に準拠してシミュレーションを行っており、精度の高い結果を得ることができる。

なお、DioVISTA/Floodの無償版も提供している。ダウンロードしてインストールすれば、ユーザ登録などの手続きは不要で、すぐにシミュレーションを実施することができる。

効果/期待される効果等

DioVISTA/Floodの活用は、SDGsの目標13の「気候変動に具体的な対策を」に呼応し、気候変動に起因する水害に対するレジリエンスおよび適応力の強化に繋がる。また、水害リスクを定量化することで、適切な土地利用を促進し、自然と調和する都市開発に貢献したいと考えている。さらに、水害被災による損失を減らし、巨大リスクを克服できる持続可能な社会を支援していく。

シミュレーションの結果を以下の対策の検討に活用することが可能である。本ソフトウェアを活用することで、水害リスク情報に基づく対策に取り組むことが可能となる。

(活用例)

  • 損害保険会社で保険の設計をする際に参考にすることができる。
  • 企業で水害に備えた新しい工場を設計する際に役立てることができる。
  • 水害に対する事業継続計画(BCP)を立てることができる。
  • 自治体で避難勧告・避難指示を発令する目安に用いることができる。

脚注
(注) 特許第4761865号, 公益社団法人発明協会 令和元年度関東地方発明表彰「発明奨励賞」受賞。

DioVISTA/Floodによる市街地の浸水解析の例の図

図1 DioVISTA/Floodによる市街地の浸水解析の例

DioVISTA/Floodによるダム下流の浸水解析の例の図

図2 DioVISTA/Floodによるダム下流の浸水解析の例