農業生産者と消費者をつなぐ地域限定クラフトチューハイ
宝酒造株式会社
更新日 | 2021年3月5日 |
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掲載日 | 2021年1月14日 |
適応分野 | 農林水産業 |
会社概要
宝酒造株式会社は、酒類・調味料事業やバイオ事業などを展開する宝グループの中核事業会社として、国内における酒類・調味料事業および酒精事業を展開している。当社の酒造りの歴史は江戸時代後期の1842年、京都・伏見での清酒造りに始まり、現在、清酒・焼酎や和の調味料の本みりんなど、日本の伝統的な酒類・調味料である「和酒」を中心に、技術に裏付けられた安全・安心な商品をお届けしている。
気候変動による影響
生産者の高齢化や気候変動の影響によって、国内の果実栽培の衰退が危惧される。愛媛県宇和島地域では、地球温暖化の影響で主力の温州みかんの高品質栽培が困難な状況となった。一方で、温暖地域の果実を国内栽培に取り入れる取り組みが注目されている。愛媛県宇和島地域の平均気温は約1℃上昇し、今まで生産が困難であったイタリア原産のブラッドオレンジの生産が可能となった。
適応に関する取り組み
<気候変動を活かした商品開発>
愛媛県宇和島におけるブラッドオレンジ産地化を推進していた愛媛県みかん研究所からの相談を受け、宝酒造株式会社はブラッドオレンジを使用したチューハイ「『直搾り』日本の農園からブラッドオレンジ」を限定品として開発し、2012年に発売した(図1)。また、貴重な果実を有効活用するため、果汁を使用するだけでなく、搾汁後の果皮からオイルを取り出し香料化するなど、新しい取り組みにも挑戦した。ブラッドオレンジを使用したチューハイの売れ行きは全国で好評を博し、同産地のブラッドオレンジの認知度向上やブランド化に貢献した。
現在、宝酒造は、京都をレモン産地にするプロジェクトに挑戦している。レモンは温暖な気候が必要とされるため、京都の寒暖差のある気候はレモン栽培に向かないとされてきた。しかし、気候変動の影響を受けて、生産者・加工者・販売者が一丸となって「京檸檬」の栽培やブランド化に取り組んでいる。
<産地を守る取組み>
宝酒造が開発した、地域限定販売クラフトチューハイ「寶CRAFT」(図2)は、全国各地で丁寧に育てられた素材の特長や個性を活かしたものである。この商品には、産地を守る取り組みが生かされている。1つ目の取り組みは、果実利用率の向上によって小規模産地の果実の商品化を可能としたことである。2つ目の取り組みでは、チューハイ開発によって、小笠原村母島におけるパッションフルーツ収穫時期と観光シーズンのギャップという問題を解決した。
効果/期待される効果等
気候変動に合わせた地域の特産品づくり、及び産地の果実へ着目する「寶CRAFT」の展開により、産地のブランド化や地域果実へのニーズ拡大に貢献している。また、地域振興や後継者育成にもつながると期待されている。
図1 ブラッドオレンジを活用したチューハイ開発
図2 「寶CRAFT」の写真