災害状況をAIで把握する映像解析技術

株式会社日立製作所

業種:製造業 / 情報通信業
掲載日 2022年8月22日
適応分野 自然災害・沿岸域

会社概要

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日立は創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として、社会やお客さまの期待にイノベーションで応えてきた。制御・運用技術(OT)(注1)、情報技術(IT)(注2)、そしてプロダクトを結びつけることで新たな価値を生み、社会課題の解決に取り組んでいる。

気候変動による影響

近年、都市化や気候変動の進行に伴い、世界各地で自然災害による大きな被害が発生している。日本国内においても、2018年の西日本豪雨など、大規模な水害や土砂崩れ、住宅被害等、甚大な被害が生じている。
災害発生時には迅速な状況把握や避難経路の誘導など、被害を減らす対策を必要とし、発生後は復旧のために道路や橋梁などの被災地の状況を正確に把握することが求められる。

適応に関する取り組み

当社は、防犯や製造現場向けの映像解析技術で培った知見を活かし、無人航空機等で撮影した自然災害映像を、人工知能(AI)によって高精度に解析する技術を開発した(図1)。本技術の特徴は以下4点である。

  1. 映像内に映る対象が、水、家屋など複数の場合であっても高精度に認識が可能(図2)
  2. 広範囲に撮影した映像の中から、目視では判別しにくい小さな事象の認識が可能(図3)
  3. 学習サンプルが少ない災害データにおいても、AIに重点的に学習させることにより、高精度で認識が可能(図4)
  4. 人でも判断が難しい災害状況についても、見逃し・誤分類などの誤った情報を多く含む学習サンプルに対応したAI学習手法によって、誤認識・見逃しの軽減が可能(図5)

本技術は、2020年4月から7月にかけて行われたアメリカの国立標準技術研究所(NIST)が主催した「災害映像解析」のコンペティションで、世界トップレベルの認識精度を達成した。

効果/期待される効果等

災害の発生直後、河川の氾濫等で被災地が広範囲にわたる場合、本技術を用いることにより、ドローンによる空撮映像の解析から迅速に救助に向かうべき場所を把握することが可能となる。
また災害復興においては、災害査定などのために調査員を現地に派遣して被害状況を確認することが一般的であるが、本技術によって調査員が重点的に作業するエリアを事前に確認することが可能となる。
本技術を自治体やさまざまなパートナー企業とともに広めていくことで、災害時に一人でも多くの人命を救い、人々の安全・安心な暮らしの実現に貢献する。

AIによる迅速な災害現場の画像解析
図1 AIによる迅速な災害現場の画像解析
複数の事象を認識
図2 複数の事象を認識
小規模な事象の発見
図3 小規模な事象の発見
サンプル数が少ない事象の認識
図4 サンプル数が少ない事象の認識
人でも判断が難しい災害状況の認識
図5 人でも判断が難しい災害状況の認識

脚注
(注1) OT(Operational Technology)。ここでは、物理的な装置や工程を監視・制御するハードウェアやソフトウェア技術と定義する。電力・鉄道・鉄鋼・水等の社会インフラや産業プラントの運用に必要な設備システムを最適に動かすための「制御・運用技術」を意味する。
(注2) IT(Information Technology)とは、情報技術のこと。インターネットなどの通信と、コンピューターなどの情報機器を組み合わせて活用する技術の総称をいう。

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