沿岸情報マッピングサービス

一般財団法人リモート・センシング技術センター

業種:学術研究、専門・技術サービス業
掲載日 2022年8月10日
適応分野 自然生態系 / 自然災害・沿岸域

会社概要

リモート・センシング技術センターロゴ

一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)は、「人工衛星等を利用して、地球の資源、現象等について探査するリモートセンシングに関する基礎的かつ総合的研究開発を行うとともに、リモートセンシングその他の宇宙開発利用に関する普及啓発を行い、もって社会経済の発展及び国民福祉の向上に寄与する」ことを目的に設立され、防災、社会インフラ、地理空間情報等へ貢献している。

気候変動による影響

海に囲まれた日本は、沿岸域の生物を生活の糧としてその恩恵を十分に受けてきた。しかしながら、近年の気候変動等の影響による海水温の上昇等によりその生態系に変化が生じている。例えば、「藻場」は沿岸域の生態系に重要な役割を果たしているが、海岸線に近く水深も浅いことから環境変化の影響を受けやすく、その現況を把握することは将来の海洋環境の維持につながる。

また、海外では、島嶼国における自然災害の主要要因として、サイクロンによる高潮・高波がある。気候変動による海面水温の上昇による影響は、沿岸域の水没のほか、サイクロンの高潮・高波による浸水被害の増加も懸念されている。

気候変動によって、沿岸の低地並びに小島嶼開発途上国及びその他の小島嶼における死亡、負傷、健康障害、生計崩壊のリスクが指摘されている。

適応に関する取り組み

RESTECは、リモートセンシング技術(注1、図1)を活用した沿岸環境情報サービスとして、海洋沿岸域に関する様々なソリューションを提供している。ここでは、そのうち2つのソリューションを紹介する。

①藻場・干潟の分布を解析しユーザーによる気候変動への対応をサポートするソリューション: 藻場の保全のためには、広域の藻場分布をマッピングすることが必要であるが、従来行われていた潜水による調査では、点や線の調査が限界だったが、衛星画像を利用することで、広域を面で効率的に把握することが可能となる。

②衛星データの解析によって陸域及び浅海域の地形データ(標高等)を作成するサービス: 衛星を利用した沿岸地形情報を整備・応用し、海抜の低い島嶼国での高潮・高波のシミュレーションのための基礎データの作成が可能となる。

①のソリューションによる藻場分布図は、環境保全を目的とした藻場分布調査に利用されている。例えば、環境省の瀬戸内海における調査業務に採用されたほか、自治体業務でも活用されている。(図2)。

また、②のサービスにより、気候変動による将来の海面上昇予測、浸水域予測などを算出し、リスクを評価し、空港などの重要インフラのBCP、土地利用計画などを想定したハザードマップやリスクマップ提供など気候変動適応策へ資することが可能となる(図3)。

効果/期待される効果等

このような海洋分野におけるリモートセンシング技術の活用を日本全国、海外へ展開することで、気候変動に対する計画的な対応を検討する他、適応策を強化することが期待される。

衛星に搭載したセンサによる観測対象
図1 衛星に搭載したセンサによる観測対象
第3回宇宙開発利用大賞 環境大臣賞を受賞
図2 第3回宇宙開発利用大賞 環境大臣賞を受賞
図3 SDB(注2)を活用したハザードマップをAW3D(注3)標高データによるプロジェクションマッピングへ投影
図3 SDB(注2)を活用したハザードマップをAW3D(注3)標高データによるプロジェクションマッピングへ投影

脚注
(注1) リモートセンシング技術とは、「物を触らずに調べる」技術で様々な種類がある。例えば、人工衛星に専用の測定器(センサ)を載せ地球を観測する衛星リモートセンシングには、地球上の海、森、都市、雲などから反射、あるいは自ら放射された電磁波を衛星に搭載したセンサによって観測し、その観測結果から地球上の植生、地表・海面の温度、地表の高さ、気象データ等の様々の情報を得ることができる。
(注2) SDB(Satellite Derived Bathymetryの略)とは、衛星データを用いた深浅測量のこと。
(注3) AW3DとはRESTECと株式会社NTTデータの共同開発・販売製品である。3次元データは人工衛星が撮影した地表の画像を解析することにより得られるが、AW3Dでは独自の画像処理技術であるマルチビューステレオ処理を始め、AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティングといった最新のIT技術を組み合わせることにより、地球のあらゆる場所の3次元データを短期間で製造し、提供することを可能とする。

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