脈拍モニタリングによる労働者の安全・健康管理システム

飛島建設株式会社

建設業
掲載日 2021年3月30日
適応分野 健康 / 産業・経済活動

会社概要

飛島建設株式会社のロゴ
飛島建設は、1883年(明治16年)に福井県で飛嶋文次郎が土木請負業の「飛島組」を創設して以来、2021年で138年目を迎えた。国内外の社会インフラ整備事業に携わってきた社歴に裏付けられた技術力で、創業以来、建設に関わる様々な独自技術を開発し、防災や環境保全などの社会ニーズに応えてきた。企業価値の評価が「財務上のパフォーマンス」 に「持続可能な世界実現への貢献度」を加えた2軸評価へと急激に移行している今、飛島建設はSDGsへの取組みを強化し、「信用される会社」として常にステークホルダーに「選ばれる会社」を目指し、自社の技術・ノウハウを建設業に留まらず他の産業にも広く展開している。

気候変動による影響

近年、建設工事の安全性向上の観点から、労働者の脈拍や体温といったバイタルデータのモニタリングに関する研究開発が進められている。建設業は他産業に比べ労働災害の発生数が多く、また技能者の高齢化が進み、熱中症等健康に起因する労働災害の発生も多くなっている。

気候変動リスクに関する取組

飛島建設は、建設工事の安全性向上の観点から、労働者の体調を管理し、熱中症等の疾病を未然に防ぐため、作業現場の労働者の健康状態を常時モニタリングできる安全・健康管理システムを開発した。

これまで開発された建設工事向けのバイタルデータのモニタリングシステムは、労働者に所持させた携帯通信端末(スマートフォン)を利用するものが多いが、この方法では労働者それぞれに端末を所持させる必要があることや、管理者が各労働者の端末を管理することも必要となっていた。そこで当社は、労働者と管理者の負担を軽減するために、周辺労働者の共通のゲートウェイ機器を作業集中箇所に設置するスポット型ゲートウェイ方式によるシステムを開発した。

本システムは、脈拍データを取得する腕時計型のセンサ(図1)、データを集約するサーバ、ならびに、これらをつなぐゲートウェイ機器で構成される(図2)。なお、ゲートウェイ機器には、携帯電話網による通信が困難なトンネル建設工事等で坑内に無線LANによる通信設備を構築することが多いことから、BLE(Bluetooth Low Energy)及び無線LAN通信機能を有する機器を採用した。

労働者それぞれに装着した脈拍センサは、常時脈拍を計測する、ゲートウェイ機器が周辺労働者の脈拍センサの計測値を定期的に受信し、サーバに送信する。サーバは、あらかじめ登録した脈拍センサとその装着ユーザ情報、ならびに、ゲートウェイとその設置場所情報から、ユーザ名、ユーザの現在位置、ならびに、脈拍数を一元管理する。

本システムは、ユーザの現在位置と脈拍数をリアルタイムに把握できる。また、脈拍数が設定した警告値を超えた場合、SNSアプリケーションのグループチャットへ警告情報を送信する機能を有している(図3)。

本システムの有効性を検証するため、トンネル建設工事において試験的適用を行い、作業の負荷に応じて変化する労働者の脈拍を常時モニタリング可能であることを現場検証により示した。一方、スポット型ゲートウェイと脈拍センサ間に障害物が存在する場合にデータ取得率が低下し、実運用においてはスポット型ゲートウェイの配置に工夫が必要であることがわかった。

効果/期待される効果等

これまで労働者の健康管理は、管理者による目視観察等定性評価に留まっていたが、本システムを利用することで定量的かつ詳細に管理することが可能となる。建設現場において、労働者の体調を管理し、熱中症等の疾病を未然に防ぐ効果が期待される。

脈拍センサ(腕時計型)の写真
図1 脈拍センサ(腕時計型)
脈拍モニタリングシステムの構成の写真
図2 脈拍モニタリングシステムの構成
脈拍モニタリングシステムのイメージ写真
図3 脈拍モニタリングシステムのイメージ

ページトップへ